プロポーズ編

第484話 最強の大魔王のプロポーズ

 リーネは顔を赤くしながら本気なのかとばかりにソフィの顔を覗く。


 ソフィは優しい眼差しをしながらそんなリーネの目を見つめ返す。そしてゆっくりと口を開いた。


「リーネよ。我の妃となってくれぬか?」


 どうやらソフィは本気で言っているのだと理解したリーネは、目に涙を浮かべながら嬉しそうに笑い、そして――。


「はい。どこまでもお供します」


 リーネはソフィのプロポーズに応えるのだった。


「カカカ!! お前達。我が主の幸せな未来のためにも組織の者どもから『アレルバレル』を取り返すぞ」


「おめでとうございます! ソフィ様、リーネ様!」


「いやはや。俺はこうなるとは思ってたけど、いざ目の当たりにするとこっちが照れるな」


「キーリってば。を取られて悔しいんじゃないのぉ?」


「そ、そんなわけないだろ! この! !」


 キーリとレアは言い合いながらソファーの周りをくるくると周り始めた。

 九大魔王達や『ラルグ』魔国の者達は、ソフィの伴侶の誕生を大いに喜び、手を叩いて祝福の声をあげたり、仲間同士グラスを叩き合って酒を呷っていく。


 宴の灯は新たな幸福の薪が焼べられた事により、更に盛り上がりを見せていく。


 そんな中リーネはソフィに招かれて、大きなソファーに座るソフィの横に近寄っていく。そしてリーネがソファーに座ると、ソフィに強引に引き寄せられてキスを交わすのだった。それを見た者達から歓声があがり、場は更に騒がしくなるのだった。


 ……

 ……

 ……


 ――そしてそれから時が過ぎていき、宴は一応のお開きとなった。


 ソフィがこの後に『アレルバレル』の者達と真面目な話をしたいと言ったので、レルバノンを始めとしたラルグ魔国の幹部達は帰路につき、リーネやキーリそしてレア達もまた自室へと戻っていった。


 やがてその場に残されたのは、ソフィと九大魔王達のみとなった。


「さて、ディアトロス。詳しい事を話せ」


 先程までの宴の時とは違い、リビングの空気は重苦しいモノへと変わっていた。


「うむ。最初から順を追って話そうと思う。少々長くなるがよいな?」


「構わぬ。全てを話してもらった方が助かる」


「分かった」


 ソフィがソファーからテーブルへ移動した事で、ディアトロス達も同じ場につく。


「まずお前がこの世界へ跳ばされた後、ダイス王国は裏で牛耳っていた若造。あの『ルビリス』の手によって完全に支配された」


 勇者『マリス』が魔王城へ攻め込んだ時にはすでに、ルビリス達組織の者達の不意の襲撃により、ディアトロスは、地下に幽閉されていたらしい。


 そしてルビリスが魔瞳『金色の目ゴールド・アイ』を使って『ディアトロス』の代わりに、ダイス王国の大臣になり替わり『人間界』の王家の者達を誑かして大魔王『ソフィ』が世界征服をするためにダイス王国へ攻め込もうとしていると吹聴してまわり、その悪の大魔王を倒すために精霊に愛されたマリスが魔王城へと乗り込んだ末に、遂に勇者が大魔王ソフィを倒したと人間界の国中に伝えられた。


 実際はマリスではなく組織の者達が『魔界』へ乗り込んで、九大魔王の居場所を突き止めた後に『組織』の幹部達が多くの部隊を引き連れて、各個に撃破しようと攻め込んできたらしい。


 しかし『ホーク』や『エイネ』と言った九大魔王は、それでもやられることはなかった。特に九大魔王『ホーク』に至っては、攻め込んできた組織の多くの者達を無傷で見事に返り討ちにしたようで『組織』の者達も撤退を余儀なくされたそうだ。


 ――だが、最終的に『ホーク』だけは、個別に大賢者『ミラ』と『ルビリス』が出向いて、直接別世界へ跳ばしたようであった。


「エイネさんは油断してやられそうになったあたしを庇って、あのリベイルって魔族の奴に跳ばされちゃったんです。そ、そこにあのバルド長老もいたんですよ! あ、あの裏切り者……!! あたしがもっとしっかりしていれば、エイネさんが別世界に跳ばされることもなかったのに、あ、あたしのせいで……!」


 悔しそうな表情を浮かべながら、リーシャは辛そうにそう言った。


「俺はその時『イバルディ』の奴と精霊の大陸に居たんですが、そこに親分が倒したあの大魔王『ハワード』が攻め込んできやがったんです」


 どうやらソフィの魔法によって消し炭にされたあの大魔王ハワードとイリーガルは、過去に『精霊の大陸』で戦っていたようであった。


「情けねぇ話ですが、俺とアイツは互角で周りを守るには手が足りず、その間に『イバルディ』の奴は、眼鏡をかけた魔族と、どうやら人間らしき女の大賢者によって、目の前で別世界へ跳ばされちまいました」


 九大魔王『イバルディ』は、ユファと同じく『支援型』の魔法使いの大魔王であった。支援型とはいってもあのソフィが選んだ『九大魔王』である。当然弱い筈もなく大魔王として別世界であれば支配者と呼ばれる程の力量は持ってはいたが、それでもあの『エルシス』が生み出した『ことわり』の中でも、特別難度の高い『神聖魔法』を疑似的にとはいっても扱える『組織』の最高幹部達を同時に相手にするには『イバルディ』であっても荷が重かったようだ。


 しかしそれでも『イバルディ』はやられる事なく戦い、跳ばされるまで生き残れたのは流石『九大魔王』といえるだろう。


「よくお主は無事だったな」


 あの『九大魔王』である『イバルディ』や『ホーク』を跳ばす程の実力を持った『組織』の幹部達や『ハワード』を相手に、いくら『九大魔王』の上位に位置する『イリーガル』といっても跳ばされずに生き残れたのは、余程上手く立ち回ったのだろうとソフィは頷きをみせた。


「癪な話ですがそこに居る『ブラスト』の野郎に助けられちまったんですよ」


 そう言って苦笑いを浮かべながらイリーガルは視線をブラストの方へと移す。


「魔王城の北端の大陸に攻めてきた連中を倒した後にまさかと思って『精霊の大陸』に向かったら、コイツがやられそうになっていたので」


「……いやあの時点では、俺があの大男を圧倒していただろう? 他の奴らが『イバルディ』の奴を跳ばした後にちょうどお前が来ただけであって、俺は別にやられそうにはなっていないぞ」


「じゃあお前、俺があの時助けなかったら、今ここにいれたと思うのか?」


「……」


 そこでイリーガルは苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべたかと思うと、視線をブラストから逸らすのだった。


「まぁ話は分かった。とりあえずブラストが来た事で、その場は奴らを追い返せたんだな?」


 ソフィがそう言うとブラスト達は頷いた。


「ええ。もう少し私が着くのが早ければ『イバルディ』の奴も救えたかもしれませんし、何より支援特化の『イバルディ』がいれば、攻撃魔法特化の俺と力馬鹿のコイツと組んで、奴らを追い返すだけではなく仕留めきれたかもしれませんね。


 元『三大魔王』である『イリーガル』と『ブラスト』は、他の九大魔王とはまた一線を画す実力者である。

 確かにブラストの言う通り、もう少し早く『精霊の大陸』へ向かえていたならば、であれば、イバルディの支援があれば間違いなくこの両名であれば勝てるだろうと、直接手を合わせたソフィは考えるのであった。


「成程。しかしミラ以外の奴らもが、そこまで力をつけていたとは思わなかったな」


 ソフィの中では奴らが強いとはいっても『イリーガル』と互角に渡り合う程にミラの配下達が、力をつけてきているとは思えなかったのだった。


「それじゃがな。あやつらが突然強くなったのには理由があるぞ」


 それまで黙ってイリーガル達の話を聞いていた、ディアトロスが再び口を開いた。


「どういう事だ? 話してみよ」


「それはだなソフィ。


 それはソフィの旧知の大魔王であり、レアの大事な親代わりの魔族の名前だった。


 ……

 ……

 ……

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