第440話 金色の甲冑に身を包む騎士3
(ひとまずは私もこの場を動かないと! あの子達がいたら『魔法』も使えないしねぇ)
レアはちらりと『ベイル』を見ると、他の同胞達を守るように立ち騎士の男に敵意を剥き出しにしていた。
その間にも『
「……行くわよぉ!」
レアは『炎帝』を無詠唱で生み出し『転移』を使って下りてきた山の方に向かっていく。
騎士の男は先程の焼き回しのように『炎帝』の火球を自身の剣を振る事で完全に無効化して、その場に『炎帝』を置き去りにして『転移』でこの場を離れたレアの方を追いかけて行く。
(よし! 来たわねぇ。今の私では奴を仕留める事は出来ない。でも時間を稼ぐだけならいくらでもやりようはあるのよぉ!)
レアは先程の戦闘で騎士の男が常に攻撃をするタイミングで、剣の刃を返す瞬間に炎が巻き付くのを見ていた。あの瞬間が炎を生み出した騎士が攻撃に移る転機なのだろうとレアはその
(あとはあの炎を今の私の魔法の
『高速転移』を使い距離を取り続けるレアは、縦横無尽に移動を繰り返しながら『トータル』山脈の山崖を斜めによじ登っていく。
「ちぃっ! 本当に逃げ足だけは早い……!」
(……さん、に、いち!)
――超越魔法、『
『リラリオ』の世界の刻印が刻まれた魔法が、魔力回路に供給した魔力から放出されて、それによって魔法陣が生み出される。
この魔法は『リラリオ』の『精霊族』が使っていた『魔法』で、レアと戦っていた『地属性』を司る『精霊長老』がレアに向けて放った魔法で『リラリオ』の『理』が用いられた『魔法』であった。
威力自体はそこまで大きいものではないが、発動後に『魔法』によって地面を変動させることが出来るために『レア』は相手から身を隠したり、次の攻撃の連携に繋げるのに適した、いわば使い得な『魔法』といえる代物であった。
そしてレアが魔法を仕掛けた場所を騎士が通った瞬間。山膚が弾けて鋭利な部分が突出して『レア』の魔力に呼応するかの如く騎士に襲いかかる。
「小娘が甘いわぁっ! 高速で魔法を放てば私にダメージを与えられると思ったか!」
剣の刃を返すのをレアは『見た』。
――次の瞬間。
炎が剣に巻き付きそして、土の爆撃刃を切り裂きその部分が炎上を始める。
(巻き付いていた炎が全部消えた……! 今よ!)
――超越魔法、『
今度は『レパート』の世界の刻印が刻まれた魔法陣が生み出されて行く。
そしてその魔法陣は高速回転を始めたかと思うと『
「なっ! こ、小賢しいっ!」
騎士は今度剣の切先を返さず、そのまま死霊達を攻撃せずに空を飛んで避けた。
レアは瞬き一つせずに騎士の男をその両の目で追従する。そのレアの目は『
(連続で使用は出来ないようねぇ? なら、このタイミングで炎を使わせる)
レアは先程より多くの魔力を魔力回路に込めたまま転機を測る。死霊達が騎士に向かって上空へと上がっていき騎士の男に襲い掛かろうとする。
――そしてそこで狙い通りに騎士の男は、剣の刃を返すのだった。
「……ここよ!」
――神域魔法、『
死霊達は騎士の放つ炎によって全て燃やし尽くされたが、その『ディレイ硬直』を狙ったレアのどす黒い炎が、騎士の体を焼き尽くさんと襲い掛かる。
「これを狙っていたのか小娘がぁっ!」
どうやらレアの読み通り、炎を放った直後は剣を使っての連続攻撃は不可能のようだった。
――そうであるならば次の行動は決まっている。
「この『魔王』レアを甘く見ない事ねぇ!!」
――神域魔法、『
連続で超越魔法を放って間髪入れずに『炎』と『雷』の『神域魔法』を使った事で、レアは多くの魔力を使った事による弊害を浴びて苦しそうな表情を浮かべる。
しかしその甲斐があって光速の雷は『ディレイ硬直』で動けなくなっていた騎士の男に直撃をするのであった。
『魔力枯渇』に陥りかけて苦しそうな表情を浮かべながらもレアは、そこで攻撃の手を緩めない。
「……ま、まだまだぁっ!」
レアの魔力回路から全ての魔力が消えた後に、一筋の雷光によって大きく凹んだ場所目掛けて、再び『レパート』の世界の刻印が刻まれた魔法陣が放たれた。
「骨ごと焼き尽くしてやるわぁっ!」
キィイインという音と共に『レア』の大いなる魔力が込められた魔法陣は高速回転を始めた。
――神域魔法、『
再びどす黒い炎が出現して騎士が居るであろう場所を覆いつくすように炎が囲み、そして燃やし尽くす。
「
相手の『ディレイ硬直』を狙ったレアの本気の連続魔法。
その全てがまともに入ったのを確認したレアは、半ば勝利を確信しながらもそう呟いた。
――しかし……。
――神域魔法、『
「え」
炎を纏った剣圧が三日月の形をしながら、轟轟と燃えている炎の中央から『レア』を目掛けて放たれてくるのであった。
恐ろしい程の速度の炎の剣撃が地面を焦がしながらレアの体を貫いて尚、そのままの速度を保ったまま、背後の山膚を突き破っていった。
「ぐっ……! かはっ……!」
勝利を確信していたレアは、口から大量に血を吐いてそのまま立ったまま意識を失った。
「もう少しお前の『魔法』に『魔力』が伴っていれば危なかったが、残念ながら『
騎士の男は肩で息をしながら目を細めて、倒れずにその場に立ったまま意識を失っているレアに呟くのだった。
……
……
……
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