第363話 大魔王ヴァルテンVS真なる大魔王レア
大魔王ヴァルテンの『
ヴァルテンはレアがその場に平伏すだろうという確信を持って、成り行きを見守っていたが、何とレアの目もまた金色へと変貌して『ヴァルテン』の放った
「ば、馬鹿な!」
驚いた表情を浮かべながらヴァルテンはレアを見る。そして相殺するだけに留まらずに今度は、レアがヴァルテンに『
「両者ともこの場で争うのはやめろ!」
一触即発のこの状況を察した男が、慌てて部屋に入ってきて声をあげた。
「レインドリヒか……?」
「レインドリヒちゃん!?」
ヴァルテンとレアが同時に『魔術師』レインドリヒに視線を送り声を重ねるのだった。
「久しぶりだなレア。そうか、ここに戻ってきたのか……」
「ええ。この私がフルーフ様の命令を破るわけがないでしょう?」
「ああ。そうだったな」
およそ十年ぶりの再会を果たす二人は互いに笑みを交わす。しかしそこでレアはヴァルテンに再度視線を戻して口を開く。
「それでフルーフ様の場所も気になるところだけど、一体コイツは誰なのかしらぁ?」
明らかに年下の魔族のレアに
だが、ヴァルテンが何かを言う前にレインドリヒが説明を始める。
「レア、落ち着いて聞いて欲しいのだが」
真剣な声を出すレインドリヒにレアは、視線をレインドリヒに移す。
「彼は現在この城の……いや、この『レパート』の世界の
この『レパート』の世界の支配者は今も昔も『フルーフ』以外に有り得ない。そんなことは十年前にこの世界を離れた『レア』だけではなく、古くからフルーフに付き従ってこの『魔王軍』に属している『魔術師』レインドリヒも理解している筈である。
「貴方、正気で言っているのかしらぁ?」
レインドリヒの言葉に落ち着きを取り戻していたレアが、再び怒気を孕んだ声を投げかけるのだった。
仮にもレインドリヒはレパートの世界の最大の軍事力を持つ、フルーフの魔王軍の部隊長であった男である。大魔王フルーフの魔王軍。その側近である男の言葉はとても思えなかったのである。
「ふ、ふはは……! 納得したか? 時代は常に動いているのだ。お前の居た時代では『フルーフ』殿がこの世界の王だったかもしれぬが、現在は私がこの国の王なのだ。さっさと理解しろクソガキ」
だがそんな事を説明されてもレアは納得が出来ない。
「フルーフ様はどこに行ったの?」
「それをお前が知る必要はない。今後は文句を言わずに黙って私に従っていればよいのだ」
レアにぴしゃりとそう言い放つヴァルテンだった。
――レインドリヒはその様子を見て溜息を吐く。
そしてこの時はまだ『レインドリヒ』は少しだけ思い違いをしていた。
ヴァルテンは『大魔王』の領域に居る魔族である。
当然のことながら『大魔王』と『真なる魔王』の領域には大きな差があるのだが、レアは十年前の時点ではまだ『真なる魔王』の中の下程の強さだった。
たった十年でそこまで大きく、戦力値というのは変わるものではないのは『魔族』であれば常識であったために、フルーフが認める領域まで強くなり続けることを厭わず、志半ばにその身が朽ちてしまおうともその領域に辿り着けない自分が悪いと考えており、主人であり親である『フルーフ』という『魔族』の
それはつまりレアを軽視していたと言うことに他ならない。
――そしてレアがどれだけ『フルーフ』という魔族を慕っていたかというのを、この十年でレインドリヒが失念していた事も大きかった。
だからこそ『ヴァルテン』の言葉を聞いたレアがどういう行動に出て、どういう結果になるかも理解が追い付かなかったのである。
「……は、ははは……。わ、私がフルーフ様の事を知る必要がない?」
レアは俯きながら口を開いているためにどういう表情をしていたか、この場に居る者たちは咄嗟に気づけなかった。
そうでなくても今のレアは『リラリオ』の世界の大事な家族『
そんな彼女が縋る気持ちを抱きながら、唯一彼女を褒めてくれる家族の元へ、ようやく帰ってきたところだったのである。
――それが『リラリオ』の世界から『レパート』の世界へ帰ってみれば、親代わりであった『フルーフ』の姿はなく、代わり
――果たしてこの場に居る誰が、この
――そしてこの後にレアが起こす行動を誰が止められようか?
レアの周りをゆっくりと『淡いオーラ』が包み始める。
「フルーフ様の命令を忠実に完遂を果たして、一つの世界を支配してきたこの『
レインドリヒはまだレアを『真なる魔王』領域だと勘違いしていたようだが、
彼女はもう『
――そしてその『
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