第278話 最後の言葉、死の使い
大魔王ソフィと大魔王ヌーの戦いが始まり、ラルグの塔へと場所を移動して避難を行った魔王レア。
その場所で魔力を回復させようとしていたところに、レインドリヒとユファが姿を見せたのだった。
レアはフルーフを壊したのはソフィではないと聞かされて動揺しているところに、配下である筈のレインドリヒがユファと一緒に居るところを見て激昂する。
しかしそんなレアを見て何故か、レインドリヒが喜んでいるように見える。
「な、何を笑っているのよぉ! 私は何故敵と仲良くいるのかと聞いているのよぉ?」
苛立ち混じりにそう言い放つが、何故かレインドリヒは私の元へ近づいてくる。
「無事に生きていたかっ……! 良かった!」
そう言ってレインドリヒは、何故か自分に抱き着いてくる。
意味が分からないレアが視点をユファに映すが、こちらも嬉しそうに笑っている。
「な、ななっ、何なのよぉ……?」
意味が分からない事だらけで考える事に疲れ始めたレアが、絞り出すようにそう口に出す。
そしてレアがレインドリヒに抱き着かれながらも視線をユファから空へと移すと、大空が真っ暗になっている事に気づく。
「空が……?」
そして次の瞬間――。
レアとレインドリヒ、そしてユファがいるラルグの塔に禍々しいオーラを纏う大魔王が転移してきた。
「ふははは!! 見つけたぞガラクタめぇ!」
「え……?」
突然暗くなった空にヌーの姿が見えたかと思うと、一瞬でレアの背後に周る。
そして紫色の禍々しいオーラがヌーの右手を包んだかと思うと、レアの内臓目掛けて突き入れようとしてくる。
「あ、危ない!!」
間一髪レアに抱き着いていたレインドリヒがレアの身を守る為に、強引に身体を入れ替えてレアの盾になる。
次の瞬間、ザシュッという嫌な音が辺りに響いたかと思うと、ヌーの右手がレインドリヒの内臓を貫いていた。
「ぐ……、ごふっ……!」
レインドリヒの口から、血が噴き出される。
「チィッ……! まぁ今はお前でも構わねぇか。お前の魔力を全て奪わせてもらう」
そう言うとヌーは突き入れている手から、レインドリヒの内に秘めている魔力を吸い取り始めた。
「レインドリヒ!!」
ユファが慌てて攻撃魔法をヌーにぶつけようとするが、ヌーはレインドリヒを前に出させて盾にする。
「くそ、これじゃ攻撃できない!」
目の前で先程までレアが死なずに生きていた事を喜んでいた『レインドリヒ』の目から、生気が失われていく。
どういう原理かユファは分からないが、ヌーはレインドリヒから魔力を異常な速度で吸い取り、そして生命力までもを奪おうとしているという事に気づく。
自身の死を悟ったレインドリヒは、意識を失いかける自分をなんとか堪えながら、呆然とこの様子を見ているレアを見ながら口を開く。
「よ、よく聞け……、レア……! はぁはぁっ……!」
レアはレインドリヒに名を呼ばれて我に返る。
「れ、レインドリヒちゃん……?」
「こ、今回の戦争……、お、お前にソフィを襲わせるよう仕組んだのは
息も絶え絶えに喋るレインドリヒから真相を聞かされて、レアが驚愕に目を丸くする。
そしてまだ喋ろうとするレインドリヒだが、もうその口が開かない。
ヌーの攻撃で喋られないわけではなく、これはヴァルテンによって植え付けられた
――『
キィイインという音が周囲に響いたかと思うと『
何もない空間から実体のない死神が現れたかと思うと、不気味な笑みを浮かべながら『レインドリヒ』の前に現れる。
「ああ!? 何だコイツは? この死神の視線の先はこのガラクタ……? そうか『
舌打ち混じりにヌーは、レインドリヒから手を引き抜く。
次の瞬間、死神は持っている鎌をレインドリヒに向けて振り切る。
――
死神がそう呟くと、ゆっくりと消えていった。
そして『魔術師』の異名を持つ大魔王『レインドリヒ』は、静かに息を引き取るのだった。
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