第183話 本題
「はいはい、質問が他にあったんでしょ? ソフィ様がいるのだから早く本題を言いなさい」
ユファがそう急かすと泣いていたレドリアは、深呼吸した後に口を開いた。
「はい! その冒険者ギルドっていうのは何なのでしょうか?」
レドリアがその質問をするとユファがソフィの顔を見る。
再びソフィが前に出て『リラリオ』に来た時に露店の店主に教えてもらった内容をそのままソフィは話すのだった。
加えた点は勲章ランクの設定基準や、この大陸で取れるアイテムの中には『ミールガルド』大陸では貴重だとされるアイテムがあり、それをギルドで提示して鑑定してもらう事でポイントの加算がされる場合がある
そしてソフィは冒険者ギルドの中で高得点となるクエストを一つ発表する。
それは『ヴェルマー大陸の再生における功労』というクエストであった。
現在ヴェルマー大陸はミールガルド大陸のように、直ぐに冒険者として活動出来る状態ではない。
各地ではまだまだラルグ魔国軍が『ミールガルド』との戦争中だと思っており、ラルグ魔国がその存在感を示している事だろう。まずはこの大陸をまた以前の三国が睨み合っていたという状況にまで戻して、権力の分散から始めなければならない。
その為の第一歩として冒険者ギルドの設立を果たして、どの魔国の魔族でも在籍できるように垣根を取り除き、そして本格的に冒険者ギルドというものを大陸に認知させなくてはならない。
そういった活動の功労を果たした者に、ポイントと報酬を約束する事で冒険者ギルドとしての立ち位置を明確に示していきたいとソフィは考えるのだった。
レルバノンは
単純に自分が『王』となり、ヴェルマー大陸を統治するのではなく、冒険者ギルドという枠組みを作り『ヴェルマー』大陸に住む者達自身の力で、ヴェルマー大陸を以前の状態に戻させてその上で三国の王を決める。
そうする事で現在のヴェルマー大陸における『ラルグ』魔国の一強状態を外させる。これがシーマやラルグの幹部が健在であれば通らない案であっただろうが、そのラルグ魔国の『シーマ』魔国王達はこの世にはいない。
冒険者ギルドという国同士が平等になる機関を作ってしまうことが重要で、既成事実を作り上げて浸透さえしてしまえば徐々に逆らえなくなる。
まさに『ヴェルマー』大陸の再生と『ラルグ』魔国の一強を崩させる事を同時に行える素晴らしい案だった。
レルバノンは『ケビン』王国の領土問題から、よくここまで思いつくものだと素直に感心するのだった。
「まず冒険者ギルドに所属してもらった後に、各々が好きに依頼を受けてもらってもよいが、いずれは大元のクエストである『大陸復興のクエスト』に着手してもらいたいと考えている」
ソフィが話す冒険者ギルドにその場にいる者達が興味を示していく。
元々この国に生きる者たちにとって、ラルグ魔国への反抗の為のレジスタンスのような活動や、レイズ魔国の復活の為に活動していた者達が多かった。
その中で第三者であるソフィ達『ミールガルド』の大陸からの提案で、冒険者ギルドというものが作られるというのであれば、彼らにとっても今後の事を踏まえた上では、冒険者ギルドというシステムは渡りに船だと考えるのであった。
それ何より『レイズ』魔国の者達にとってシス女王が戻ってきてくれた事や、今は名前も姿も違うが本質が変わらないユファという存在が帰ってきてくれたのだ。
――今までとは意欲も希望も桁違いである。
ソフィという子供の存在がどういうものであれ、レルバノンやシチョウといった他国の重鎮が、口を挟まずに素直に従っている事からも信用しても大丈夫だろうと考えている。
というよりもその事を度外視して考えたとしてもここまで話を聞いていた彼らは、ソフィという少年を信用できると思えたようであった。
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