第68話 魔族たちの治める国、三大魔国
ステンシアの町から遠く離れた街道をビレッジたちを乗せた馬車が走っている。
仮死状態となったミナトをちらりと横目で見ながら、ビレッジは舌打ちをする。
「この時代に野良の魔族がいるだと? そんな事があるはずが……」
今この世界の魔物たちを束ねている魔族達は、それぞれの
ミールガルド大陸ではケビン王国と、ルードリヒ王国の二大国家があるが、海を挟んで遠く離れた別の大陸では魔族達が治める国があり、その国を魔国と魔族たちは呼ぶ。
だが魔国の魔族達はまだ、表立ってこちらのミールガルド大陸に戦争等を仕掛けられない。
魔族達の大陸では魔国間の魔族同士が、現在も睨み合いを続けているからである。
――古参の魔族が多く所属する西の『ラルグ魔国』。
この魔国は力有る魔族達が多く生息している最大国力を有する魔国であり、この魔国を束ねている魔族の王『シーマ』が、
そして数ではラルグ魔国には劣るが、知能が高い魔女が治める北の『レイズ魔国』。
レイズ魔国の女王『シス』は魔法を使わせれば、全魔族の頂点とも呼ばれており彼女の魔力も底知れない。
配下の魔族や魔物も頭脳や魔力が優れている者たちが多く、この魔国に所属している一般的な魔物ですら『ミールガルド』大陸にあるニビシアの天才魔導士ルビアを
――そして東の『トウジン魔国』。
数と力ではラルグとレイズに劣るが、決してその二大魔国も『トウジン魔国』を侮ることはない。
同胞を殺されでもすれば、トウジン魔国の全魔族が結集して戦争を仕掛けた国に対して、国民一人一人が報復に乗り出してくる。
この国に戦争を仕掛けるのであれば、甚大な被害を及ぼす為に他の大国であっても、この国と戦争を仕掛けるのは極力敬遠をしている。
トウジン魔国と事を構えるとなると、その間に他の二大魔国が攻め込んできた場合に非常に厄介な事になるからである。
この魔族達の大陸の名前はヴェルマー大陸と言われており、この三つの国が大陸の代表的な魔国である。
数千年に渡ってこの三大魔国が睨み合ってはいるが、その他の小国も決して弱小国というワケではなく『ヴェルマー大陸』の数多の国々であっても『ミールガルド』大陸にあるルードリヒ王国や、ケビン王国の国力を上回っている程である。
そしてミナトを攫ったビレッジたちがいる組織は、元々ヴェルマー大陸の『ラルグ魔国』に所属する魔族達であった。
ある事件がきっかけでビレッジの直属の上司である『レルバノン』の派閥と、王である『シーマ』の派閥が敵対関係になり、レルバノンの派閥は撤退を余儀なくされて逃げるように、この人間が多くいる大陸『ミールガルド』に居を移してきたのである。
この組織の目的はこの大陸に生息する魔物と冒険者たちを洗脳して自分たちの兵士として使い、いつかはこの町を足掛かりに、大陸中の街を支配して、
その第一歩として調合師ルノガンの薬を大量に生産するために、ミナトの売っている新たなる薬草は適合率がよく、まさにルノガンの洗脳の薬を生み出すために存在するようだった。
――これに目を付けたビレッジ達は作戦を決行。
そしてミナトを捕らえてこれからだというところで、ギルドの指名依頼を受けたソフィ達に見つかったというわけである。
「だが西の奴らが、我らの場所を捕捉したというわけではないのであれば問題はない」
ビレッジはミナトの持つ金の卵ともいうべき薬草と、ルノガンの調合の力があれば、どうにでもなると考えている。
このステンシアの町には多くの冒険者が生息している。
この『ステンシア』の町を支配する事が出来れば、後は倍々に兵を増やす事が可能であると考えているからであった。
数さえ増やしてしまえば後は、レルバノンと言った力有る魔族達が『
そしてビレッジ達の馬車はようやく彼らの主、レルバノンの待つ屋敷に到着するのであった。
目覚めたミナトを捕縛し終えたビレッジ達は、そのまま主の待つ部屋に向かうのだった。
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