第110話 謁見する度に……

 城に到着した俺達4人は応接室らしき場所で適当にお茶を飲みながら待っている。


「これ、懐かしいな」


 ジョンが手に取って食べているのは饅頭だ。他にも和菓子がたくさん並んでいる。


「緑茶も久しぶりやでぇ〜」


 セスも緑茶をすすりながら同意する。


「これ持ち帰っていいかな?」


 アナスタシアはそんな事を言いながら空間魔法を使い────どんどん収納していく。


 質問している意味がわからない……これは──同意を求めているのか?


「……好きなだけ持って帰ればいいんじゃないかな? 俺、一応重役だし?」


 とりあえず返事してみると──


「そこのメイド──こんなちゃちな量じゃなくて大量に持ってくるが良い。レオン様が所望しとるのう」


 ──!? うぉい!? そこ普通に頼んだら良くね!? 何故巻き込んだ!?


「そうだな、ありったけ持ってこい。レオン様はお腹が空いていらっしゃる」


「せやせや、何たって英雄レオン様が所望しとるからな〜。逆らえば打ち首? みたいな?」


 メイドは顔面蒼白になって走り去って行った……。


「お前ら酷くね?」


「「「普通?」」」


 いやいや、絶対普通じゃないからな。確かに菓子は美味いけどよ!


 バタンッ


 扉が勢い良く開かれる──


 ──やっとお迎えが来た────か?


「──はぁ……はぁ……お、お待たせしました……菓子をお待ち致しました」


 現れたのは先程のメイドさんだった。息切れが激しいな。急いで持ってきてくれたのがよくわかる。


 目の前にはカートに乗った山盛りのお菓子がある。


「お替わりだの」


「──えっ!? 菓子がもうない? ────少々お待ちを!」


 アナスタシアさんや……即収納しただろ……。


 メイドさんとの、このやり取りはしばらく続いた。



「はぁ……いつまでここにいたらいいのやら……。1時間ぐらい待ってるよな?」


 俺は皆に話しかけると、セス、ジョン、アナスタシアが順番に答える。


「せやな。無礼な連中やな。こりゃ、お仕置き必須やな!」


 いや、これぐらいでお仕置きとかどこの暴君だよ!?


「俺はシバって奴にリベンジしたいぜっ!」


 お前ってそんな血の気多かったか? それよりシバと戦うとか俺が絶対巻き込まれるからやめろよ?


「私は良い機会だし、シャーリーを場合によっては──潰すわ」


 へっ?!


 アナスタシアさん……殺気が半端ないんですが!?


「アナ……理由を聞いても? 後──部屋の中にいるメイドさん達が怯えてるから殺気を抑えようか」


「──仕返しをするだけよ? 私にとって不利益な事をすれば潰すだけよ。ピンチになったら助けてね?」


 怖いな……ジョンとセスが生まれたての小鹿みたいになってるぞ?


 俺もポーカーフェイスをしているはずなのに最後の丸投げ部分で頬が軽く引き攣っている。


「程々にな……」


 そう答えるのが最一杯だった。



「大変お待たせ致しました。準備が整いましたのでお越し下さい」


 執事からお呼びがかかる。


 俺達は顔を引き締める。


「さぁ──「行くかの! 戦じゃ!」──「「応っ!」」──お、おう……」


 俺の台詞はアナスタシアに取られ、2人は普通に返事をした。


 俺は取り残された感じが半端なかった。それに戦なんかしないからな?


 執事さんの目が哀れんでいるのが少し堪えるな。


 俺達は王の間に歩いて行く────



「レオン様、到着されました」


「入れ」


 謁見の間に到着すると、部屋の前にいる近衛兵と王がやり取りをし、扉が開かれる。



 ────中には以前と違い、たくさんの人がいた。


 王の近くにシバ、シャーリー、ドラン、以前に謁見の間にいた2人がいる。他に2人いるという事は八首が揃っているという事か……それで時間がかかったのか。


「レオンよ……呆けておらんと、こっちに来るといい」


 俺達は王の前に行く。


「此度の件、誠にご苦労であった。我が国も鼻が高い。今やレオンは英雄──報酬は好きな物を言うと良い」


 前より、少し王様っぽい感じだな。だが、話が早いな。


「では────呪いを解くアイテムか、情報を。後────金ですね」


 初対面の八首2人から威圧が放たれる。


 おそらく、普通は一旦断ったりするのだろうが────俺にはどうしても必要な情報……引くわけにはいかない。


 ──この2人は礼儀とかに煩いタイプか? というか強いな……。


 しかし、初対面で威圧されるのは気持ちの良い物ではないな……。



「やめんかっ!」


 王が驚いた後に制止する。王も予想外だったようだ。



 ────!? こいつ……。


「何のつもりだ?」


 俺はアナスタシア目掛けて放たれたナイフを掴み取り、投げてきた2人の内1人に問いかける。


「いや? 厄災を倒すぐらいの奴がどれぐらいなのかなって?」


 俺はふざけた返事をして来た男に向かい────穿通鎖をノーモーションで放つ。


「ちっ」


 鎖は男の肩に目掛けて突き進むが避けられる──


「────爆鎖──ジョン、セス──「「応っ!」」──アナスタシアは無理するな────殲滅する」


 避けられた瞬間に爆鎖を発動し、男を足止めしている間に俺達は迎撃体制をとる。


 本当に戦になってしまいそうだな……。


「クイン、やめなさいっ! アナスタシアも止めるように言いなさい────じゃないと──「じゃないと?」──くっ……」


 アナスタシアはシャーリーに斥力を発生させて圧力をかける。


「仕掛けて来たのはお前らだ────シバだっけか? リベンジしてやるからかかってこいやっ!」


 ジョンは闘気を纏い、シバに挑発する。


「やっぱ、若とおると楽しいな〜。若、あの弱そうな2人が限界やで? その間になんとかしてな!」


 セスは影魔法を放ち、以前謁見の間にいた2人を相手取る。


「俺は全然楽しくないけどなっ! 残り3人は俺がなんとかしてやる。負けたら許さんぞっ!」


「「応っ!」」


 俺の掛け声に2人が返事し、1番強そうな初対面の男、クインと呼ばれた男、ドランの目の前に移動する。



 謁見の間にて戦闘が始まる────


 王、サクゲンは額に手を当てて大きな溜息を吐き、姫であるサクヤはノリノリだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る