第109話 プロローグ

 ────城の中で慌ただしく動く人達。



「陛下っ! レオン様と会いたいと各国から連絡が入っていますっ!」


「放っておけ……」


「ただいま、レオン様が到着致しましたっ!」


「うむ、直ぐに準備をする」


 衛兵が次々と王に向かい報告を行い、それに答える。


「レオンは──予想以上の働きをしたか……」


「王よ、褒美はしっかり与えて下さい。八岐大蛇討伐が現実味が増していきます。ここで──他国に行かれれば間違いなく……この国は滅びます。ドランの報告によると──現ヤマトの戦力では厄災を相手に全滅するでしょう……」


 シャーリーが諭すように報告する。


「そうだな……サクヤの為にも残って貰わねばならん」


 もちろん、王の元にも厄災【朱雀】の報告は来ている。八首でも中堅ぐらいの強さのドランが全く役に立てなかったと目を疑うような報告が。


 逆にレオンに関する報告は更に驚愕する内容だった。


 厄災を恩恵【封印】を使わずに倒した──それだけではない。伝承により、討伐不可能と言われていたがレオンはそれを成してしまったという内容だ。


 娘であるサクヤは恩恵【封印】持ちだ。娘を死なせたくない王──サクゲンは戦力として八首に迎え入れた事に運命を感じた。


「王よ。レオン君は父親の呪いを解く手掛かりを探しています。ここで恩を売る方が良い印象を持ってくれるでしょう」


「ふむ……呪いとは厄介な……解呪のアイテムは宝物庫になかったか?」


「既に調べましたが、ありませんでした。私に心当たりがあるのでそれを報酬の一つとして渡そうと思います」


「さすが、シャーリー。頼りにしている」


「それと、厄介な事に剣姫と他数名がこちらに向かっていると情報がありますがどうしますか?」


「アルステラの姫が何故ここに来る?」


「それは──レオン君目当てですよ……」


「一応、国賓扱いしておくか……。ドランはどうしている?」


「ドランは──」


「今さっき帰ったわい……」


「任務ご苦労様」


 シャーリーが現れたドランに労りの言葉をかける。


「無事に帰ってなにより。帰った早々で悪いがレオンの率直な感想を言ってくれ」


「ふむ……わしから言えるのは────レオンを敵に回さない方がいいのぅ……あやつ──聖王国と帝国から人を引き抜きよったわい……」


「「────!?」」


「それと──奥の手を使った時は単独で厄災と渡り合えるぐらい強かったわい……赤闘気────シャーリーなら聞き覚えはあるじゃろ? あれを使って死なん奴がおるとはな……」


「────ドランっ、ちょっと待ってっ! レオン君って赤闘気使ったの!? 何で生きてるのよ!?」


「五体満足ではないであろうが────死んでおらんな……何か恩恵を持っておるのは間違いないのぅ」


「赤闘気とは何だ?」


 王は1人、話に取り残され質問をする。


「王よ、赤闘気とは────生命力全てを闘気を変えた時に血煙が闘気と混ざり赤く見える事から命名されています。──命と引き換えに使うので使い手は必ず死ぬ────失伝した奥義です」


「レオンは生きているぞ?」


「本来は有り得ないんです。昔は赤闘気で厄災と戦った記録はありますが────全員死んでいますし、そう文献に書いてあります」


「そこを恩恵で補っておるのじゃろうな……傷を受けても回復しとったからのぅ。副作用はあるようじゃがな……後から現れた敵に苦戦しとったし」


「……例の組織か……」


「「…………」」


 王の呟きに2人は沈黙する。


「これから────厄災は復活して行く可能性が高い。レオンを必ずや手放す事のないように……特に他国からの引き抜きには何か手を打たねばならんな……解呪を取り引きに使われかねん……シャーリー頼んだぞ」


「はっ」


「では──レオンを待たせている。余は先に行く────他の八首で手が空いてる者も呼んでおいてくれ。顔合わせぐらいはした方が良かろう」


「「御意」」


 2人はそのまま去る。


「とりあえず、労りの言葉と────報酬。そして今後の予定を把握しておくか……」


 胸に他の八首が馬鹿をやらかさないか冷や冷やしながら足を王座に進めて行く。


「陛下っ! シバ様が訓練場を破壊しましたっ!」


 途中そんな報告を受ける。


「……本当に何も起こらなかったら良いが……」


 本当に──本当に暴れたりするなよ! とサクゲンは思いながら再度足を動かしていった。

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