第97話 迎撃
〜アナスタシア視点〜
朱雀が向かって来る────
この熱気の中にいるだけで大分消耗してる気がする。早く片付けないと、こっちがもたない。
「総員、迎撃用意だのっ!」
私は全員に聞こえるように言い──
周りを見渡す──私の指揮に文句のある人はいないようだ。
バランさんは身体強化魔法で強化したあと、大槌に魔力を込めている。
ジョンは手甲を嵌めて闘気を纏い──迎え撃つ準備をしている。
セスは到着前に聞いていた、固有魔法【影】を纏衣し──その場から消えた。
イレーネは演舞しながら────水の精霊を呼び、周囲に大量の水を出現させ続けている。
イザベラは魔力を込め始め──ザックは片手を朱雀に向けて集中する。
ステラは剣を複数、宙に浮かせ展開させる。
ワルキューレは全員が表情から消耗しているのがわかるが、迎撃の為に各々が遠距離と近距離、防御、補助の役割をこなそうと準備を行う。
朱雀の速度が重力と重なり──迫る。
一番手はイレーネだった。
「行くよっ! 精霊魔法の真髄見せてやるっ!」
大量の水を自由自在に操り──朱雀に次々と当てていくが──
「ちっ、効果無しか……」
接触する前に水が蒸発し、水蒸気が発生する。
二番手はワルキューレの水、氷、風、土の魔法攻撃が次々と当たる。ララとルルもいる。
「「「「いけーっ!!!」」」」
いくつか魔法が体に接触するが、気にせずに突っ込んで来る。
「光よ──貫け────」
更に追撃でイザベラの収束された細い光線が複数放たれ──羽に貫通する。
羽に一瞬穴が空くが、直ぐに修復される。
三番手は私だ──効果範囲に入った瞬間に磁力を使い朱雀の自由を奪おうとする。
「くっ……完全には止められんか──」
多少は朱雀の勢いが削がれるが──
それでも──まだまだ驚異だ。
王都に着く前に倒したレッドドラゴンなんかより全然早い。
四番手はザック──手を向ける先は朱雀。恩恵【吸収】を使う。
「くそっ──どんだけの質量なんだよっ!」
無力化する事も叶わず──炎の勢いを少しだけ削がせる。
五番手はセス──朱雀の背面により出現したセスは剣を首に突き刺し──
「ほれほれ、後ろがガラ空きやでぇ? 影針でもくらえやっ!」
固有魔法【影】により発動された、無数の影が細く鋭利になり、朱雀の背面を滅多刺しにする。
その頃には朱雀は大分地面に近い距離にいた。
六番手はジョン、ステラ、ワルキューレの残りの人達だ。
まず、ワルキューレの盾役のカレンがローラの結界、補助魔法などの援護を受け────飛び上がり熱量を気にせず受け止める為に突撃する。
「止まれぇぇぇっ!!! がはっ──」
その甲斐もあって、一瞬だけ止まるが──吹き飛ばされる。
その次はジョンだ。
「おらぁぁぁぁっ! 必殺──百手っ!」
ジョンは朱雀が一瞬止まったのを見逃さずに顔面目掛けて、拳を放つ────
高速で残像が見え、連打と乱打を繰り返す。
正直──ただの滅多打ちだ。
剣と、短剣を持ったワルキューレの2人は朱雀の腹部に突き刺し──
「「隊長っ!」」
「おぅっ! 閃光牙っ! ステラ様っ!」
すかさず、フランが首元に光魔法を付与した槍の一突きを高速で放ち──ステラの名前を呼ぶ。
「死ねぇっ!!!」
ステラは──展開している複数の剣を凄まじい速度で朱雀に放ち、串刺しにする。
とても姫と呼ばれる人の言葉遣いじゃないと思ってしまった。
この時、朱雀の動きは完全に止まった──
────ラストはバランさんだ。
「全員どかんかぁぁぁっ! どっせぇぇぇぇいっ!!!」
大槌からは大きな氷の刺が生えており、ツルハシのようになっている──
バランさんが叫ぶと同時に全員が離脱し──
全力で振り────叩きつける。
朱雀は断末魔を上げる間も無く、吹き飛ばされる。
「「やったか!?」」
「黙れっ!」
「「ぐはっ」」
ジョンとセスがフラグを立てたので、私は2人を磁力でお仕置きし、即座にフラグをへし折る為に再度、業火のレーザーを吹き飛んだ朱雀目掛けて放ち──
──トドメを刺す。
爆裂音と共に辺りは静まり返る。
「消耗が半端ないのぉ……」
朱雀の魔力が消えたので、私は全員に振り向き言葉をかけると、皆は満身創痍だが表情が緩む。
短時間の戦闘だったけど、凄く長く感じた。
でも……何か忘れてる気がする……。
────しまった!?
朱雀の魔力の気配が再度現れる。
皆の視線は私の後ろに釘付けだ。
私も振り向くと──そこには先程、与えた傷はなく──燃えながら復活した朱雀がいた。
朱雀は倒しても復活する──大事な事を忘れてた。
全員の表情が絶望に変わる────
『ギュアァァァァァァッ』
朱雀の雄叫びが衝撃波となり、その場を支配する────
口に魔力を溜め始めている。おそらくブレスが来る──
私以外は衝撃波をまともに受けて動けない。
私は即座に、その場からなんとか離れ──攻撃し、朱雀の意識を皆から外す──
少しでも攻撃までの時間を引き伸ばす為に磁力を使い固定する。
そして──その時は来た。
炎の光線がこちらに向けて放たれようとしている──
これを受けたら──どうなるんだろう?
今までは回復してきたけど、肉体が残らないぐらいの攻撃を受けたら……。
無性に今、レオの顔が見たくなった────
目の前に光線が迫り────目を瞑る。
「アナぁぁぁぁっ!!!」
その時、レオの声が聞こえた気がした────
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