第92話 八つ当たりとお仕置きです
「何か言う事は?」
捕縛した状態で俺は問う。
「こんなもん直ぐに抜け出して──がはっ」
質問に答えなかったので、腹部を殴る。
「俺に言う事があるだろ?」
今度は強めに聞く。
「ねぇよ──ぐっ」
問答無用で次は顔面だ。
「お前が何をしたか思い出せないのか? お前実行犯だろうが。ミアを拐おうとして、母さんの死ぬ原因を作っただろう? 父さんの片腕も切り落としていたし、妹も酷い怪我だった……」
「ありゃぁ……村の連中が勝手にやった事だろが……俺は関係ねぇ……ごふっ」
今度は鳩尾に拳をめり込ませる。
罪の意識がない奴に容赦はしない。こいつにとっては些細な事で──どこにでも起こっている事なのかもしれない────だが、その態度が俺を更に苛つかせる。
俺が存分にすっきりするまで相手してもらおう。
「はぁ? お前、止めようともしなかっただろが。所詮は人の命を軽く見てるカスだろう? お前が誰であれ、どんな立場であっても──例え国が相手になろうとも関係ない。誰も裁かないなら俺が裁いてやるよ──なぁに、気にしなくていい。これは俺の八つ当たりだ────氷柱舞」
「ぐあぁぁぁぁぁっ」
行動に移そうとしたので氷柱舞を発動する。
複数の氷柱がザックに突き刺さり、その場を絶叫が支配する。
俺は別に殺すつもりはない。これは復讐ではなく────八つ当たりとお仕置きだ。ちゃんと急所は外している。
その為、バランは静観している。
ジョンとセスは俺の豹変ぶりに驚いているようだ。
アナスタシアとイレーネは何故かうっとりしていて、王は気絶している。
今、俺を止める奴はここにはいないだろう。
「悪い事したらごめんなさいだろ? 子供でも出来る事だぞ? お前の吸収じゃ、俺の鎖は絶対に解けねぇから無駄な抵抗はやめておけ──爆鎖」
「ぐあぁっ」
激痛に耐えているザックに諭すように言った後、再度抜け出そうと行動したので爆鎖を使い、衝撃波が周りを襲う。
「全く──まだわからないのか? 成長した俺はお前如きじゃお遊びにしかならないんだよ。さっきまでの威勢はどうしたよ? その程度でよく調子に乗ってられるな?」
俺は動けないザックに対し、冷たい目を向け──井の中の蛙だと伝えて煽る。
「「すんません」」
何故かジョンとセスが返事する。
いや、お前らに言ってないんだけど!?
だが──お前らのお陰で少し頭が冷えたな。
ある意味ストッパーだな……。
そんな事を思っていると──
「お願いっ! もうやめて! 私が謝るからっ! もう許して……」
イザベラと言われた女が気が付き、俺に許しを得ようとする。
「ん? 嫌だが? イザベラとか言ったな。お前──こいつと、どんな関係だ?」
「妻よ……」
「なら、片腕もらうわ。俺の父さんの腕をこいつが切り落としたからな。こいつも同じ目に合えばわかるだろ? 人の痛みをわかる大人にならなきゃダメだと俺は思うぞ?」
俺は三日月鎌鎖を顕現させ──大鎌をイザベラに向けて笑いながら吐き捨てるように言葉を発する。
もはや、俺の発言は悪役で間違いないだろう。自覚はある。
ここで──妻を見捨てるようなら、俺に躊躇いはなくなる────
「まっ、待ってくれ……謝る……」
「なんだ? 聞こえないぞ?」
実際は聞こえてはいるが、謝罪の言葉じゃないので催促するように返す。
「──っ。すいませんでした……」
「声が小さいっ!」
「すいませんでしたっ!」
「ったく、最初から謝れよな」
俺は巻き付いた鎖に聖属性を込め──癒しの鎖を発動し、傷を回復させる。
「────!?」
「次に手を出したら一族郎党──皆殺しだからな?」
ザックは目を見開き驚愕するが、俺は無視して──そう告げた後────最後に一発、鼻っ柱に拳をぶち込み、吹っ飛ばす。
そのまま、ザックは机や椅子を巻き込みながら壁に激突し、体をぴくぴくと動かしながら気絶した。
「ザック!」
イザベラは近付き、ザックに寄り添う。
「これに懲りたら、ちゃんと言い聞かせておけ」
「えぇ……ご家族の事はごめんなさい……私もあの場にいたけど……何もしなかったわ」
「そうか……次に俺や周りに危害を加えたら手加減はしてやらない」
「肝に命じておくわ……ありがとう、これぐらいで許してくれて」
「──そいつを連れて行け」
そのまま、イザベラはザックを抱えて退出する。
これで少しは溜飲が下がったな。
「「自分達調子に乗ってましたっ! 心を入れ替えますっ!」」
ジョンとセスが俺に向かって90度腰を曲げて言ってくる。
いや、お前らに言ってないからっ!
「レオ──格好良い……」
アナスタシアはうっとりした表情をまた浮かべる。
何処に格好良い要素があった!? 明らかに鬼畜だだったろ!?
「元気じゃのう……」
バランはバランでこの程度は当たり前みたいな感じだし。
「決めたわっ! 私の婿にするわっ!」
会ったばかりのイレーネは何故かそんな事を言う……。何処に惚れる要素があった!? 強ければそれで良いのか!?
「お断りします。既に嫁いるんで」
俺は即答すると、アナスタシアは勝ち誇った顔をしていた。
「ぐぬぬ……」
なにやら唸っていたが、変に言葉をかけると後で絶対に後悔する──そう、俺の直感が判断したので────放置する事にした。
「う……ん……!? ザックとイザベラはどこだ!?」
王が気が付き、周りを見渡し──2人がいないと声をあげる。
一応あいつら護衛だったんだろうな。
「悪いが、強制退場してもらった」
俺が代表で王に対して返事をする。もはや、この国の王であれ敬称や敬語など使う気はない。
「────2人とも君にやられたか……」
「そうだな。躾がなってなかったからな」
お前が責任者だろ? と遠回しに言う。
「こちらの手違いで君には辛い思いをさせたな。すまなかった」
王は俺に謝罪をする。
「許しはしないが──謝罪は受け取ろう」
「感謝する。あいつらはいなくても会議に差し支えはないだろう。──さぁ、始めよう。事は緊急を要する──全員席に着いてほしい」
そんな王の言葉が響き渡る。
俺は無言で周りを見渡したが──
────爆鎖の衝撃波とザックをぶん殴ったせいで、部屋の中に椅子と机は酷い状態になっていた。
俺が暴れるなと言ったアナスタシアとイレーネの視線が痛い……。
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