第91話 俺が裁いてやるよ!

 王城に到着すると兵士が会議室らしき場所まで案内してくれた。


 アナスタシアが付いてきていいのか少し気になったが、バランが先に話を通しておいてくれたようで問題なく入る事が出来た。


 武器の携帯も俺達はOKだそうだ。少し警備体制に不安を覚えた……。


 現在、俺達4人は会議室というには大きすぎる部屋で座りながら雑談している。



「部屋が広すぎて落ち着かないな」


「「それなっ!」」


 俺の発言にジョンとセスが反応してくれる。


 こいつらノリが良くて好きだわ。



「お主ら子供かのう……アナスタシアの嬢ちゃん見習わんか」


 そんな俺達にバランがアナスタシアを見習えと言う。


「うむ、我を見習うと良いぞ?」


 俺達は一斉にアナスタシアに視線を向けると──


 ドヤ顔しているが、気品に満ち溢れた貴族のような優雅さを漂わせていた。



 誰!? と俺は驚愕し──



 ──ジョンとセスは見惚れていた。




「レオだけ失礼な顔をしとるのぅ。これはお仕置きが必要だの」



 俺は冷や汗を流す。



 なんとか褒めて──この場を収めなければっ!




 そう思った時、扉が開かれる。



 現れたのは橙色の髪でツインテールの同い年ぐらいの女の子だった。


 誰だろ? って────



 それより──服っ! 短いスカートパンツに胸隠してるだけじゃねぇかっ! 服装が薄着過ぎるだろっ! 目のやり場に困るわっ!


 俺は武器が気になり、腰ベルトに付けてる2本の曲刀が目が行く──


「レオン?」


 アナスタシアの殺気が俺を襲う。


「いや、武器が気になっただけだ。断じて、卑猥な意味で見ていたわけじゃない! 断じて違うっ!」


 即座に誤解だと伝える。大事な事だから俺は二回言う。


「「またまたぁ〜」」


「うっさいっ!」


 ジョンとセスが燃料を投下してくる。


 後で怖いからやめてくれっ!





「私はアリアナ水国所属の──イレーネと申します。此度はよろしくお願いします」


 俺達の事は華麗にスルーして──優雅に一礼し、挨拶をする。


「わしはヤマト王国所属のバランじゃ。よろしくのう」


「俺もヤマト王国所属のレオンだ。よろしく」


「俺は聖王国所属のジョンだ。よろしく」


「わいはジルバ帝国所属のセスや。よろしゅうな」


「我はレオンの嫁、アナスタシアじゃ。レオンに手を出したら殺すっ」


 その流れで各々自己紹介をするが──アナスタシアの番で、空気が凍りつく。



「くすっ……大丈夫です。私は強い男にしか興味はありません──なのでご心配なく」


 軽くディスられた!?


 バランは普通に笑っているけど、それ以外の男は苦笑する。


 というか────この殺気の飛びまくってる空気の中で発言出来るか!



「相手の力量も測れん輩は────戦場で死ぬの。そしてイレーネだったかの? お主が1番弱い。せいぜい死なぬようにの」


 アナスタシアさんや……燃料が過剰に投下されてます。もうその内バックドラフト現象が起こりそうなので、その辺で────



「アナ──「……確かめてやろう。────しっ!」──!?」


 俺は制止しようとした瞬間、曲刀二本を逆手に持ち、アナスタシアに飛びかかるイレーネ。



 これはさすがに看過出来ないな。


「なっ!?」


 俺は黒鎖をイレーネの周囲に出して、アナスタシアに刃が届く前に捕縛する。



「ここまでだ。王城で暴れるなよ……」



「レオの事馬鹿にしたのだぞ!? 身の程分からせてやるのだ!」



「別にそれぐらいかまわない。どうせ戦うなら厄災にしてくれ────!?」



 俺が話してる途中に3人の気配が部屋に入ってきた。


 視線を向けると、真ん中の人は王冠を被っている事から王様なんだろう。


 その後ろにも男女の2人が付いて来て────



 ────!?



 俺はその男女の内、男に見覚えがあった。短髪碧眼の男……そいつは──


 父さんの腕を切り落とし──母さんの死んだ原因を作った男だ。


 忘れるわけがない────



 俺は一瞬にして頭に血が昇る。



 踏ん切りが着いたと思ったが────ダメだ……。


 やっぱり許せねぇ……。


 俺は普段押し留めている魔力を解放する。



「「「「レオ(ン)っ!?」」」」


「ちょ──」


 皆が驚愕しているが──俺はそれより目の前のをぶちのめす事しか考えていない。



「久しぶりだな坊主。俺はザックだ。その物騒な威圧を収めてくれねぇか? じゃねぇと前の続きをする事になるぜ?」


 普通に挨拶をしてくるザックに対し──俺は更に苛立ちを覚える。



 俺は無意識に九尾が発現する。



「望む所だ。後悔させてやるよ」


 そう俺は言い放つと同時に九尾が襲いかかる。



 男は手を前にかざすが──


「なにっ!?」


 何も起こらず、そのまま九尾が束縛しにかかる。


 おそらく、恩恵【吸収】を使ったのだろう。だが、九尾の前ではその程度──無意味。


 パリンッ


「くそっ……」


「ちっ、結界か────お前か──」


 ──結界により一瞬、九尾の動きが鈍り、ザックはその場から離脱する。



 俺は結界を展開させた張本人である、部屋に入ってきた女に対し、蛇腹鎖を伸ばし────高速で振り抜く。



 パリンッ パリンッ パリンッ パリンッ パリンッ パリンッ


「きゃぁぁっ」


 結界を何枚も展開していたみたいだが、関係無しに全てを砕いた上で女を吹き飛ばす。


「イザベラっ!」



「自分の心配でもしてろ」



「なっ!? 動けねぇ!?」



 俺は不可視の黒鎖を可視化する。既にザックの近くに不可視の鎖を展開していたので、複数の黒鎖によって地面に張り付けにされている。



 これは復讐か? ──いや、ただの八つ当たりだ。俺の気が済めばそれでいい。


 こいつは所詮、命令で動いていただけだ。だが、実行犯に違いは無い。


 だから──裁かれても問題ないだろう。


 この異世界は理不尽に溢れている。


 誰も裁かないなら────俺が裁いてやるよ。



 さぁ、八つ当たりの時間だ────



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