第88話 受付……嬢?
俺達は高級宿のあるらしい場所を探してうろうろしている。
王城の近くという事だったので、ひたすら歩いているわけだが────ただ一言……遠い! に尽きる。
冒険者ギルドの看板が目に入る。
「なぁ、冒険者ギルド寄らないか?」
「別に寄らなくていいんじゃないかな? 早くズッコンバッコンしようよっ!」
こらこら、そんな事を歩きながら言うんじゃありませんっ!
まぁ、人気が全くないんだけどね。皆逃げたり、家に閉じこもっているみたいだな。
冒険者ギルドに寄りたい理由としては────情報だ。
どこまでの厄災の情報が流れているか確認したい。
「なら、俺だけ行くから──アナは宿の手配お願いしていいか?」
「やだっ! 一緒が良いっ!」
頬を膨らませ可愛らしく言う。
「なぁ、頼むよぉ〜。お楽しみは夜だろ? まだ昼過ぎだしさぁ……追加でどんなプレイにも応えるから──「宿屋で待ってるからねっ!」──って変わり身はやっ!? まぁいいんだけどさ……お手柔らかに頼むぞ?」
「じゅるり……」
アナスタシアさんや……その顔超エロいっす。
俺は苦笑しながら別れた後、冒険者ギルドに入っていく。
中は人が溢れているという事はなく────閑古鳥が鳴いていた。併設した酒場にチラホラ人がいるぐらいだ。
思った以上に事態は深刻なようだ。
俺は前に進みカウンターまで進む。
「すいませーん」
誰もいなかったので受付嬢を呼ぶ。
しばらくすると、奥からお婆さんが出てきた。
受付嬢は? と俺は内心思う。
冒険者ギルドの受付と言えば──受付嬢だ。
選ばれし、美女の天職──それが受付嬢だ。
ヤマト王国でも受付嬢だったはずだ。
お婆さんは──嬢ではないよね?
しかも──凄く恰幅がいい。
アルステラ王都の受付は受付婆が主流なのだろうか?
俺が思考していると、お婆さんが話しかけてきた。
「あんたも受付嬢目当てで来たのかい? 皆逃げちまったよ。ここらはもうすぐ厄災が襲ってきちまうからね。あんたらも別の国に逃げな」
なるほど、受付嬢も避難したのか……。
この国の受付はお婆さんがするものだと本気で信じかけてたぞ?
とりあえず謎は解けた。厄災のせいでギルドの中も閑散としてるわけね。
「逃げるつもりはないんですよ。出来れば厄災について何か情報がないかなと思って──」
その時、俺の後ろから声が聞こえてきた。
「おいっ、そこの奴」
後ろから声がかかる。俺は振り向くと──そこには知った顔がいた。
「え〜っと、犬のなんだっけ?」
「【狂犬】のジョンだっ!!!」
「そうそう、そんな名前だったな。お前こんなとこで何してんの?」
何故かジョンがいた。それと隣に茶髪の猫目みたいな男がいる。
ジョンがいるのはシバの言ってた救援要請を受けたからだろうな……。
けど──こいつ弱くなかったか?
後、となりの猫目の男は目が細すぎるだろ……前見えてるのか?
そんな事を思っていると──ジョンが話出す。
「当然、厄災ぶっ殺す為に来てるに決まってるだろっ!」
「いや、お前……死ぬぞ?」
俺はオブラートに包まず言葉を発する。俺は正直者だからな。
「俺は弱くねぇよっ! 十傑だぞ!? 聖王国の最高戦力の1人だぞ!?」
「……いや、俺の中のお前の印象って──やられ役なんだが……」
そんな事言われてもな……説得力皆無なんだが。
「ぷふぁ、もう耐えられへんわ……ジョン、弱いんやし、死ぬんちゃうで?」
「弱くねぇって言ってんだろ!? どつくぞ!? 後その関西弁もどきやめろっ!」
笑いを堪えながら話に入って来たのは猫目の男だった。関西弁とか懐かしいな。
「……初めて見る顔だな。十傑か?」
「おっと、自己紹介してへんかったなぁ。ちなみに十傑じゃあらへんで? わいはジルバ帝国の七武将が一人──【瞬影】セス。よろしゅうに……確かレオン君で良かったんかいな?」
帝国か……本当に救援要請で各国から助っ人が来てるんだな。
それより──何で俺の名前を何で知ってるんだ?
「俺は仮八首のレオン。何で俺の名前を知っている?」
俺はさりげなく仮と言う。
「なんでって──そりゃぁ、あんさんめっちゃ有名やでぇ? 断罪退けたんやろ? それで八首入隊したんちゃうん?」
あの時の戦闘の情報ってもう知れ渡ってるのか?
「あーなるほど、そこから名前がバレてんのな。それで、お前ら何しに此処に来たんだ?」
「いや、ジョンが見た事ある顔があるっちゅーさかい、覗いただけやで?」
「暇人か……さっさと厄災の対処してこいよ」
「暇なんだよっ! 一旦各国の精鋭が集まって会議してから厄災場所に行くらしいから下手に動けねぇんだよ」
今度はジョンが口を挟んで来た。
本当に暇人だったのか……まぁ、そりゃぁそうか。厄災もまだ復活してないみたいだし──緊急でもなさそうだからな。各国で連携を取る必要もあるのだろう。
「まぁ、邪魔だし帰れば? 俺は特に用とかないしな」
俺は手をひらひらさせて帰るように言う。
「扱い雑だなっ! もう行くが……一言だけ──これから共に闘う仲間だ……お前の仲間の金髪の女を傷付けた事を謝る──ぐはっ……ごほっ……」
一瞬にして闘気を使いぶん殴り──空中に浮いた瞬間に黒鎖を巻き付け引き寄せ────地面に叩きつけて踏む。
「────これで手打ちにしてやる。次俺の近くの奴を襲ったらこれぐらいじゃ済ませないからな」
「……容赦ねぇな……任務とはいえ済まなかったな……次はない事を俺も祈る。お前に勝てる気がしねぇからな」
四つん這いになり謝罪をするジョン。その様は土下座だ。
「あぁ、謝罪を今受け取ってやる。ほれっ」
俺は手を貸しジョンを立たせる。
「すまん、ありがとな……」
「気にするな。死ぬなよ」
「こんなとこで死なねぇよ。俺は会いたい人がいるからな」
ジョンは笑いながら答える。
「ふふっ、そうか。なら目的を達成する為に足掻け。お前は──俺の知り合いに似ている……だから────出来る限り守ってやる。失う前に早めに行動しろ」
失う前に行動しろ──か……前世で琴音が死んでから丈二によく言っていたな。こいつの真っ直ぐな所が前世で会った丈二を思い起こさせる。
死なせたくない──そんな気持ちが出てくる。
アリスを傷付けた事は許さんがな。
「レオン……お前は──いやなんでもない……────また会おう」
「あぁ、俺達はもう友達だ」
「お前──やっぱ俺の知ってる人に似てるわ」
まさか……丈二なのか? いや、いくら何でも────
「なぁ、男の友情もええんやけど──周りドン引きやで?」
俺の思考中にセスが水を差す。
その言葉で俺は周りを見渡すと──酒場にいた全員が固まっていた。
「それにな……わいだけ蚊帳の外って寂しいやで?」
なんかすまん。
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