第84話 決死の覚悟で挑む?

 〜願いの乙女の隊長視点〜



 私はワルキューレの隊長で名をフラン。今は姫のいる厄災の封印場所に向かっている最中だ。


 現在、まだアルステラ王国の王都から出て、そんなに経ってないのに大量の魔物に襲われている。


 ゴブリン、オーク、オーガ、ウルフなどの獣系の魔物など様々な種類が襲って来ている。



「あーうざったいっ!!!」


 彼女はカレン。大雑把な性格でワルキューレの盾役を担う。



「なんでこんな所に大量の魔物が……」


 彼女は回復兼補助を担当しているローラ。



「「めんどいっ」」


 2人でハモって発言しているのは双子のララとルル。魔法使いだ。



 全員白いドレスアーマーを着ており、次々と魔物を蹴散らしていく。その姿は戦場の天使だと────私は思っている。




「つべこべ言わずにさっさと殲滅するぞっ!!!」


 やる気がないメンバーに私は叱咤する。



「「「「はーい」」」」




 各々が波状攻撃をしかけ、しばらくして魔物の殲滅が完了する。



「ご苦労。急いで姫の元に向かうぞっ! ここでこれなら向こうはもっと襲撃を受けているはずだ」


 殲滅したので、先に向かうように告げる。



「隊長っ! ──近くに高魔力反応っ! こちらに来ますっ!」



「ちっ、敵の規模は!?」


 私は周りを見渡し警戒する。



「数は2。ただ────来ましたね」


 顔を青ざめながら、ローラはそう告げ──上空を見上げる。



 残りの4人はそれにつられて見上げると────



「ドラゴンだと!?」


 私は驚愕し。



「あちゃー、これ死んだんじゃない?」


「「男と付き合ってみたかった……」」


 カレン、ララ、ルルの3人は諦めの表情を宿す。



「どうしますか?」


 ローラは指示を仰ぐ。




「無論、こんなとこで死ぬわけにはいかんっ! 総員迎撃態勢をとれ! そこ2人っ! 男ならそこら中にいるだろっ! 私だって彼氏がほしいんだっ!!! 生き残るぞっ!」



「「「「男ぉぉっ!!!」」」」



 男じゃなくて、返事しろっ! ローラも混ざるなっ!




 ドラゴンの一頭が向かってくる────


「ちっ、来るぞっ! 散開っ! 各々持ち場につけっ! 行くぞっ!」


 指示を出し、全員が散開する。


 ……ワルキューレ全員でドラゴン一頭ならなんとかなるかどうかの相手だが……二頭か……しかも属性竜。レッドドラゴンだ。



 私は槍を構え指示を飛ばす。



「ララとルルは牽制」


「「男の為にっ!」」


 男の為にの言葉と共に放たれる──風魔法と火魔法はレッドドラゴンの体に命中し、勢いを削ぐ。



 ドラゴンは一瞬止まるも再度特攻をかける。



「ローラ、カレンと私に補助魔法と……奴には阻害──後は──結界を」


「はいっ」


 カレンに防御力向上、私には攻撃力向上の魔法を使い、レッドドラゴンには光魔法で目眩しをし、目の前に結界を展開する。



 レッドドラゴンは光など気にせず──落下してくる。勢いは止まらない。




「カレン──防御だ」


「応っ」


 身体強化魔法をかけた後に大盾を構え──接敵に備えた瞬間に──



 ズゴオオオォォォォォンッ



 接触する。


 ローラの結界は紙のように突き抜かれ、カレンは押しつぶされる。



「ローラっ! 今だっ!」


 即座にローラに指示を飛ばす。



「はいっ! アースバインドっ!」


 レッドドラゴンは地面から複数箇所から土が盛り上がり拘束される。




「最後は私が行く──」


 私は眉間に槍を貫く為動く────



 ぐがぁぁぁぁあああっ


 レッドドラゴンが暴れ────土の拘束を振り解き────



 ────私の目の前に爪が迫る────



 即座に攻撃から防御に切り替えるが────



 時既に遅し。



「がっ────」



 そのまま槍の防御ごと怪力で吹き飛ばされ──


 そのまま地面に打ち付けられる。



「「「隊長っ!!!」」」



「ぐぅ……く……」



 私は槍を地面に刺しながら立ち上がる。



 私は────こんな所で死ねんっ!



 必ず姫の元へ行くっ!



「────まだだっ! 行くぞっ!」



 アースバインドをかけたレッドドラゴンは自由になり、空高く舞い上がる。



 私は空を見上げると────



 もう一頭のレッドドラゴンが目に入る。



 そいつは私達に向けて口を開いていた────



 くそっ、ブレスか……



 私は全員の顔を見る。カレンは気を失っていたが、今は動き始めている。残り3人の顔は青ざめていた。



 これまでか……



「お前ら3人は離脱しろ。最後の命令だ」



「「やだっ」」


「私達は貴女に着いて来たのです。例えここで死のうと本望っ!」


「ぐぅ……死ぬなら皆一緒だっ」


 ララとルルは即答し、ローラと起き上がったカレンは私と一緒に死ぬと伝えてくる。



 仕方ないか……。



「最後まで足掻くぞっ!」


「「「はいっ」」」




 私は槍を持ち直し、カレンは盾を構え、ローラは結界を張り、ララとルルは魔法を放つ為に魔力を込める。





 ぎゅあああぁぁぁぁっ



 私達は決死の覚悟で挑む────




 レッドドラゴンがブレスを放とうとした瞬間に、その周囲から鎖が発生し────次々と絡めとっていく。




 グジャッ




 私達は決死の覚悟で────



 ────挑む?



 ────グジャッ?



 挑む前に潰れた?



 目の前には肉塊になったレッドドラゴンの屍が落ちてきた。



「こっ、これは──「すいませーん」──ん?」


 私達は声のする方を見る。



 ────若い……男と女?


 男女共に黒い姿……しかも男は大きな鎌を持っている。




「なんかヤバそうだったので手を出しましたが──あっ、この肉塊貰っていいですかね? 後──出来れば──あそこに飛んでるトカゲも貰えたら嬉しいかな?」



 そう男はハニカムように言う。


 レッドドラゴンを赤子を捻るように殺し────挙句にトカゲ呼ばわり……。



「……あぁ、構わない……」


 私は今の惨状を目にして、そう答えるのが精一杯だった。



「やったっ! ラッキー。アナっ! 俺は金を稼いでくるよっ! そしてお前達を養うっ!」



 金っ!? レッドドラゴンを金扱い!?



 そして────男は黒い大鎌を構え────



 ────悪戯子っぽい笑みを浮かべる。




 私達は全員がその笑みに頬を染め──見惚れてしまった。

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