第50話 断った人は──助っ人だった!

 しばらくの静寂の後、シオンが俺を見据えて言葉を発する。


「……二回だ……殺界を使わされたのが二回……久しぶりだ。君の名前は?」


「レオンだ……」


「レオンか……その年で固有魔法を複数箇所に展開し、他の魔法も組み合わせた上に──自在に操る奴は久しぶりに見た」


「……」


「君は十傑に入る気はないか? 大地の聖女とも知り合いだろう? 一緒に来るといい。私が許可しよう」


 真剣な顔付きで勧誘してくるシオン。



 俺は返事を告げようとする────


「断──「断るっ! こいつは大蛇に入るからなぁ」──る?」


 ────この声はシバか!? 人の台詞とるなよっ!!! それに入らねーよっ! 約束は助っ人だろっ!


 気配のする方向に振り返るとシバとシャーリーさんがいた。


「ふぅ、疲れたぜ。げっ、よく見りゃ十傑が5人か? 知らなねぇ顔もいるな……面倒くせぇな」


「やっと、追いついたわ……って……【断罪】のシオンじゃない……レオン君、よく無事だったわね」


 シバとシャーリーさんが呑気に話す。


「【金剛】と【乱射】か……何しに来た? お前らとやり合う気は今の所ないが?」


 おそらく──【金剛】はシバ、【乱射】はシャーリーさんだろう。


「もちろん、レオンの手助けだが?」


「ならば────闘うしかないか────ガハッ……」


 唐突に血を吐くシオン。


「シオンっ! 今回復するわ……まさかこんな時に……」


 お嬢様風の女性が近付き、回復魔法をかける。シオンは病気なのか?


「【光姫】か……それに──【停滞】【鉄壁】……あと1人は知らんが……戦争でもおっ始めようってか?」


 光姫はこの女性だろう…… 停滞と鉄壁はこの男3人のうちの2人だろうし、 1人だけ十傑じゃないのだろうか? 


「大地の聖女は我等の……いや────国の希望となる……必ず保護しなければならないっ!」


 少し回復魔法を受け、楽になったであろうシオンが発言する。


 攫おうとする奴らが保護とは笑えてくるな。


「お前ら聖王国の事情なぞ、知らんわ! こちとら、レオンを助けんと大蛇に入ってくれんのだぞっ!」


 いや、入らねーから!

 しかも理由がシオンに比べたら理由が酷いから!


「……相変わらず、話が通じんな。十傑の使命を────必ず果たすっ!」


「シオンっ! 貴方は回復よっ! 動かないでちょうだい! 今はそこにいる暑苦しい野郎共に特攻させたらいいのっ!」


「「「ひでぇな! おいっ!」」」


 シオンは構えるが、光姫と呼ばれた女性に制止される。残りの人達には特攻して来いと言われ、声を揃えて反論していた。


 確かに他の人の扱いが酷いと思う。


「そんじゃ、俺ら2人で相手してやるよ。レオンは見てたらいいぞ?」


「あぁ……」


 正直かなり精神的に疲れたからその方が助かる。


「とりあえず、どいつからボコられたい?」


「熊野郎が舐めんなよっ! この【狂犬】のジョン様がが相手してやるよ!」


「1番弱そうな奴からか……お前見たことねぇな。新顔か?」


「弱くねぇよ! 確かに最近十傑に入ったばっかだがよっ!」


 どうやら、こいつも十傑だったらしい。


「はいはい、とっとと来い」


「絶対後悔させてやるっ!」


 白いオーラがジョンから放出する。

 シバが使っていた奴と同じだ。


「ふむ、闘気は使えるようだな……荒削りだがな。どれどれ……ふんっ!」


 シバも白いオーラを纏う。


 あれは闘気というらしい。圧力が確かに増しているし、強くなっている気がするが、ジョンの方はシバと比べると──オーラが落ち着いていない。明らかに制御出来てないように感じる。


「うっせぇっ! 熊のおっさんはさっさとくたばれやっ!」


 ジョンは白いオーラを放出しながら、勢い良くシバの懐に入り込み、ナックルで鳩尾目掛けて拳を放つ。


「むんっ」


「────なっ!?」


 シバは仁王立ちで受け止め、ジョンはその光景に驚愕した表情を浮かべていた。


「さすが、狂犬。躾がなってない────なっ!」


 シバは鳩尾で止まっている腕を掴み、勢い良く木に向けて投げつける。


 ヅガァァァァァァァッン


 ジョンは勢い良く当たり、爆発音と共に木に埋もれ、骨が曲がってはいけない方向に曲がり、白目を向いて気絶していた。ピクピクしてるし死んでないだろう。


 あっという間にやられたジョン……弱いな……。

 狂犬って二つ名は強がりで煩いから付けられたのだろうか?


「さってと。次は鉄壁か? それとも停滞か? 2人はめんどくせぇから1人な?」


 シバはジョンの事はどうでもいいようで、見向きもせずに次の相手を催促していた。……だが、男らしく2人まとめてではないらしい。


「では、我が相手しよう」


 大柄の男が前に出る。シバも大きいが、この男もかなり大きいな。2mぐらいじゃないかな?


「停滞か……」


「我は停滞という名ではない」


「それぐらい知っとるわっ!」


「我はオリバーだ」


「それも知っとるわっ! 顔合わせたことあるだろっ!」


 ……なんというか、マイペースというか独特な人だな。この人が【停滞】のオリバーか。


「なら……私の相手はそこの上半身裸の────確かガイだったかしら?」


「ガハハハハッ! 覚えとったかシャーリー! 俺が相手になろう!」


 シャーリーさんの相手は上半身裸のおっさんみたいだな。【鉄壁】のガイか……見た感じシバ並に性格が豪快そうな感じがするな。


 俺達とジョンと呼ばれた人以外は面識もあるようだ。


 国の上層部みたいなもんだし、そりゃあ面識ぐらいあるか……。


 ただ五月蠅いだけで、特に見せ場もなくやられ、誰にも気にしてもらえないジョンは────敵ながら同情する。


 フローラもミーラの近くで待機してくれているようだし、シオンは光姫って呼ばれてる女性に回復されている。


 残りの十傑もシバとシャーリーさんが相手してくれるみたいだし、今の所はミア達に危険は及ばないだろう────


「おらぁぁぁぁっ! 潰れろやっ!!!」


 ────シバが戦い始めたようだ。

 あの大斧って重く見えるんだが、何であんな棒振り回すみたいに使えるのか不思議だ……。


 この間に切り抜ける方法考えないと────

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