第46話 蓮華の花言葉は──
〜ミア視点〜
私、アリス、ハクちゃん、アイリスちゃんはアナスタシアさんのいた洞窟から離れ、レオンの元に向かっている。
あのまま、洞窟にいても……きっと
アナスタシアさん曰く。
聖王国の十傑は昔から教皇の命令に絶対服従だそうだ。そして、場所がどこであれ、必ず目的を遂行する為に危険であっても動くらしい。
狙いは私の恩恵である植物成長……これは過去の大地の聖女が持っていた恩恵と聞いた。聖王国と言われる国はこの恩恵が喉から手が出るぐらい欲しているそうだ。
狙っている以上は何度でも襲ってくるだろう事は予想出来た。
此処では逃げ場も無く、十傑相手では守り切れるかわからないとアナスタシアさんから告げられ、逃げた方が捕まらないだろうと勧められた。
少し寂しそうに言うアナスタシアさんに私は必ず戻る事を約束し──旅に出た。
たまに追っ手が来るが、アリス、ハクちゃん、アイリスちゃんと協力して退け、無難に逃げる事に成功し、隣の国の国境線辺りで最悪の敵に見つかる。
「み〜つっけたっ! ったく、あのおっさんのせいで、かなり足止めくらったぜ」
「──!?」
そいつは、レオンのお父さんと対峙した奴だった。
「おじさんと戦ってた奴だよね?」
「そうだね……」
アリスが私に聞いてくる。
きっと、思ってる事は一緒だと思う。
レオンのお父さんではなく、此処に奴が現れたという事は……。
「お父さんは?」
アイリスちゃんの言葉で意識が引き戻される。
今は私達の事を考えなければ! ここにはアイリスちゃんもいる!
「アイリスちゃん、今はレオンに会うために逃げよう。お父さんもきっと無事だよ!」
自分でも、もっと気の利いた言葉を言えれば良かったと思うけど、今私はこの場をどうするかで余裕がない。
「アリス、逃げようっ!」
私は直ぐに逃げるようアリスに言うが──
「んー無理っぽいかな? たぶん、これ囲まれてるよ……」
既に囲まれていると返答される。
これは────もう戦うしかないかな……せめて、アイリスちゃんだけでも逃したい。
「ハクちゃんっ! アイリスちゃんと逃げれない?」
『たぶん、無理だよ。周りにいくつか、目の前の奴かそれ以上に強い気配がしてる……ここで迎撃して隙を見つけて逃げた方が無難かも……』
本当にどうにもならない状況なんだね……。
皆、巻き込んでごめんね。
私はこの数年練習した植物成長を発動し、アイリスちゃんと私を植物で囲む。
〜アリス視点〜
くそっ、ヤバいっ! 目の前の奴でも厳しいのに、明らかにこいつより強い奴が潜んでいる……。
ミアは話し合った作戦を実行している。
その作戦とは植物成長での防御一択。これで、ハクちゃんと私が迎撃すると事前に決めていた。
レオンと会うまで絶対に諦めないっ!
絶対に倒すっ! 私は懐にある
アナスタシアさんから貰ったとっておきだ。
さぁ、こいつら蹴散らしてやるっ!
そのまま、
そして────居合切りの要領で二本とも抜刀し、首を切断しにかかる。
「なにっ!?」
驚きながらも男は私の最大速度の一撃を紙一重でバックステップし避けられてしまう。
体術の心得がある動き……こいつも近接タイプか。
「ちっ」
昔より大分強くなっているはずなのにな……。
「おっかねぇ、姉ちゃんだな! おらっ、お返しだっ!」
少し離れた場所から拳を振りかぶる男。
────っ!?
何かが急接近する気配がした。不可視のその何かを刀で弾く。
「これは……魔力?」
「中々勘が良いじゃねぇか。俺は断罪の十傑が1人、【狂犬】のジョンだ。お前は?」
犬みたいな名前だ……なんか狂犬とか言ってるし犬なのかな?
「犬が何の用?」
あちゃー、考えてた事がそのまま声に出ちゃってたー!
「犬じゃねーよっ! 見た目人間だろ! ジョンって名乗ったろうが! お前らはの逃避行はここでおしまいだ。集められる戦力で今回は来ている。この間の
──おじさんは生きてる!? また来る可能性を考えて戦力をかき集めたって事だよね?
良かった……一つ不安材料が無くなったわ。
さっき、戦闘した感じだと……たぶん、この犬と私は互角ぐらいかな? 何か奥の手とかもあるだろうから単純な近接勝負ならって条件付きだけど。
でも、これで────心置きなく戦える!
私は覚悟が決まる。
それを察した相手はナックルを装備し、胸の前で両手の拳をガンガンと打ち合わせた後に、左手を前に、右手を後ろにし構える。
そして、魔力を纏い始める。
────身体強化魔法か。
私も刀を鞘に戻さず、左手の刀を前に、右手の刀を引いて突きの構えを取る。
武器のリーチは違うが、2人とも近接が得意なタイプ。
構えてから、2人の時は止まっている。お互いに見つめて動かない。
周囲でハクちゃんによる氷魔法が発射された時に、2人の時は動き出す。
「おらっ!」
先に動いたのは相手だ。
私に向かい、一瞬にして間合いを詰め、少し屈んだ状態から膝を伸ばし、右拳を下から腹部目掛けて振り抜く。
「ふっ!」
それに対し、バックステップで0距離から己の刀が振りやすい距離まで移動し、左の刀を拳目掛けて振り抜く。
ギンッ
2人の攻撃が交わり、その衝撃で周りが振動する。
男は右拳で刀を払い、左拳を顔面に向かい放ち次の行動に移る。その拳は先程の威力を重視した攻撃ではなく、牽制の意味を込めた速度重視の攻撃だった。
私は左刀を弾かれた時に少しバランスを崩した状態になっており、顔面に拳が迫る。
「舐めるなっ!」
「──!?」
右刀で捌くのが間に合わないと判断し、柄で弾き軌道を逸らし避ける。
そして、左刀を外側より真横に振り抜く──
しかし、致命傷を避ける為に、左側に飛んで避けられてしまう。
「【蓮華】」
着地した瞬間に相手に16の刃を放つ。
蓮華は【
過去に放った八双撃ではなく、身体強化魔法の効果で────より高められ、より速く、より精密になった事により、片手で8連撃が放てるようになった。それを二本の刀で放つと、咲き乱れる蓮華の花のような斬撃が乱舞する。
「蓮華の花言葉は『私の幸せ』。私が幸せを掴むために会得したこの技で散りなさいっ!」
「ぐあぁぁぁぁぁっ」
ジョンは避ける事が叶わず攻撃を受ける。
全身からシャワーのように血飛沫が出、膝をつく。
「ぐっ……」
膝を着いたが、直ぐに血塗れで立ち上がる。
「これで倒れないなんて……」
身体強化の魔法が解けてない以上、いつ攻撃が来るかわからないため、まだ構えを解かない。
そのまま無言で睨み付けていると。
『消え去れっ!!!』
ハクちゃんの声が聞こえて来た。
その直後に周囲が氷漬けになり、先程とは規模が違い、白銀世界になっていた。
私の息は白くなり、周囲の温度が下がる。
それに気を取られている一瞬、油断する。
再度、ジョンを見ると。白いオーラが出ていた。
あれは何なんだろう?
そう思った次の瞬間相手が動く。
────っ!!!
こちらに向かってくる速度は先程より更に速くなっいた。
即座に私は刀をクロスさせ防御体制を取る。
「悪いなぁ、この状態じゃ手加減出来ねぇから潔く────沈んどけっ!」
ただの正拳突きが刀と接触した瞬間──
私は吹っ飛ばされ、私は消えゆく意識の中思う……。
皆────ごめん……。
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