3章 〜幸せは己で掴み取る〜
第24話 妖精との出会い
「母さん……」
ふと目が覚めると、俺は広野にいた。
そうか……もう母さんはいないんだったな……。
ここはどこだろうか?
周りは草が生え、たまに木々が見える程度だ。周りには人もいなければ、魔物もいない。
ここは全く見覚えがない場所だ。
やはり、男を後少しで倒せるという所で転移魔法かそれに近い能力で飛ばされた可能性が高い。
あいつがやったのか? それともまだ仲間がいたのか?
わからない────
まぁ、此処にいる理由はどうでもいい。
どれぐらいの時間があれから経ったのだろうか?
絆の指輪も点滅していないから、皆無事だろう。
早く皆の顔が見たいな……。
再度周りも見渡すも、本当に誰もいなければ、何もない。近くに町か何かあればいいのだが……。
そう思いながら歩みを進めるが──
──小一時間程何もない光景が続いた。
ぐぅ〜〜
腹減ったな……。
そういえば────無限収納の中にミノタウロスの肉があったな。
食わないと体力が持たないし、食べよう。
俺はその場で肉片手に火魔法を出して焼き始める。
中々ミディアムな感じに仕上がった所で、近くから声が聞こえる。
「────!?!?」
なにやら少し離れた所で騒がしい声がする。
襲われているのか?
争い事なら助けて情報を貰おう。
危害を加えて来たら────物理的に退散願おう。
俺より強かったら────即逃げるけどなっ!
そして、俺は声が聞こえる方に足を向ける。
……
…………
…………………………
しばらくすると声が聞こえてきたらしき所まで着くが、誰もいなかった。
「おかしいなぁ、確かにここらへんで人の声が聞こえたんだけどな……」
「美味そうなお肉……じゅるり……」
独り言をしていると、後ろから声が聞こえてくる。
どうやら肉がほしいようだ。
というか、全然気配を感じなかったんだが……。
恐る恐る後ろを振り向くと、そこには女の子がいた。
ただの女の子ではない。
とりあえず小さい。20cmぐらいだろうか? 髪の毛の色は銀髪、ポニーテール。視線は肉に釘付けだが、柔らかい感じの目付きだ。そして背中の羽……。
妖精って奴かな??
妖精って肉食なのだろうか?
「肉食うか?」
危害を加える様子も無いので、とりあえず聞いてみる。
「えっ? くれるの? やったっ!!!」
物凄い食いついてきたので、俺は骨付き肉を差し出す。
どうやら肉食のようだ。
「君妖精だよね?」
「はむむ、ほーだよ」
「いや、食べてからでいいよ」
勢い良く肉に食いつき喋る妖精さんか……。
俺の中のイメージと大分違う気がする。妖精って優しそうで、元気な感じのイメージなんだが……。
「はむはむ……うっ! あぅ……水……」
「……ほれ」
「────げっふ……」
俺は水筒を渡すと大きなゲップをする妖精。
絵面だけ見るとかなりシュールだな……だって、小さい妖精が肉を貪り食って、水を酒のように飲んでゲップするんだぜ?
「……げふっ。ありがとー! お腹ペコペコだったんだー! お兄ちゃん何してるの??」
食べ終わった妖精さんを見ていると──
──俺に変化が訪れる。
「ぐっ……痛っ……」
痛みだけで死ねるぐらいの激痛が身体中を襲う。
なん……だ……これ?
超回復が発動するも、多少マシになる程度で症状は変わらない。
「お兄ちゃんっ! おいっ! 大丈夫!? まさか、この肉毒なのか!? 毒なのかっ!!!」
施しを受けておいて失礼な奴だな。
「そ……れ……は毒……じゃ……」
それは毒じゃない────そう言う途中で俺は意識を失う。
「毒なのかーーーーっ!!!」
その場にその言葉が響き渡った。
どれぐらい経ったのかわからないが、俺は目が覚める。
目の前には先程会った妖精がいた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「あぁ、済まない。心配かけたな。介抱してくれてたんだな。ありがとう。気を失ってどれぐらい経ったか教えてくれるか?」
「肉は毒じゃなかったんだな。ごめんよ。失礼な事言って……。気を失ってからそんなに時間経ってないよ」
そうか。なら一時的な痛みだったのか?
何かの副作用?
いや、今までそんな事はなかった。特に初めてした事もない。
わから────? ん?
激痛? まさか──
────アナの契約魔法!?
此処に飛ばされてからどれぐらい時間が経っているかわからないが、可能性はある!
これなら辻褄が合う。
なら、なんで今は発動していないんだ??
術式が切れた?
俺は目線を絆の指輪に移す。
何も変化はない。激痛が襲っている時も特に変化はなかった。まぁ、アナが倒される事はないだろうし……。
皆に危険はないという事はアナが術式を解いてくれた可能性が高い。
これは予想だか、無事に試練の洞窟までアリスが到着して、アナに事情を話してくれたような気がする。
というか契約違反やばいな……死ぬ方が楽だったような感じだったぞ?
「お兄ちゃん、本当に大丈夫か?? さっきからボーッとして」
物思いにふけっていると妖精さんから声がかかる。
おっと、これは失礼な事をしたな。
「あぁ、大丈夫だよ。俺はレオン。君は?」
「私はフローラ!」
とても肉を頬張っていた名前だとは思えないが、失礼な事だし、胸にしまおう。
それより、こっちの方向で騒がしい声がした事を聞こう。
「さっき、この辺で何か聞こえてきたんだけど心当たりある??」
「あー、それ私だよ? 暇だったから歌ってたの! 私の種族は歌が上手いんだよ?」
……俺には叫び声とか喧騒のように聞こえてきたんだが……。
という事は……フローラはとてつもなく音痴?
いや、種族の違いでそう聞こえるだけかもしれん。
「そっ、そうか。襲われてるかと思ったよ」
「
大事なキーワードが出た。
やはり、俺の思い違いではないようだ。
つまり、フローラは音痴。
「まぁ、なんだ……いつか上手くなる事を祈ってるよ」
俺は優しい顔をしながらそう答える。
「むっきゅーーーっ! その哀れんだ目をやめろーーーっ!!!」
頬を膨らませて俺の体をパカパカと叩くフローラ。
「はっはっはっ、すまんすまん」
俺は笑いながら謝罪する。
失礼だとは思うけど、到底上手く歌えるなんて思えない……。
さて、この辺りの情報など聞かないとな。
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