第160話 深夜の来訪者



ドゥモ魔術学園、兎寮




夜も更けてきた。

森から梟の鳴き声の聞こえる静かな夜、

ユシアは慣れた動作でベット藁の中に潜り込む。


「ユシア!ユシア!」


フェリが呼びかけるが、

ユシアは既に寝息を立てていた。


「・・・」


今日は魔獣との戦闘があったみたいだから、疲れているのだろうか?



それにしても、少し無防備過ぎる気がする。



未だ目的の『水の神』とも会えていないし、いつ魔王軍の暗殺者がやって来てもおかしくない。そんな状況で、油断してはいけないのだ。



などと考えているうちに、フェリも眠くなってきた。



深夜・・・



真っ暗で誰も居ないはずの廊下に黒い外套に身を包んだ何者かが、ユシアの部屋に静かに侵入する。


そして、浅い呼吸を荒げながら、ゆっくりと、『ユシアの股間』に手を伸ば・・・



「誰!?」



フェリが飛び起きて声を上げる。





$$$





「・・・って事が、昨夜あったんだけど!」


黒い外套の人物はフェリに気づいて、すぐに逃げて行ったらしい。


「ふーん」


ユシアは寝ぼけながら生返事を返す。



「暗くてよく見えなかったけど・・・あの逃げる後ろ姿・・・ここの学園の『女生徒』っぽかったわ」



女生徒・・・



その言葉を聞いた瞬間

ユシアの顔が少し緩むが、すぐ首を振り、今度はどんどん気落ちして沈んでいく。




「・・・信じない」


ユシアはそう言って、ぷいとそっぽを向く。



「俺はモテないから、そんな事ある訳ないしー・・・」



(・・・えー)


夜這いとかそういうのじゃなくて殺されそうだったって言ってるんだけど?


結局、信じようとしなかった。おそらく、ユシアの心の傷は、まだ癒えていないのだろう。



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