第157話 震える声



ソウリオは思い出す。




ドゥモ魔術学園の孤児院で、エイユに自分が『聖女』の血を引いている事を知った時、


ソウリオは大いに喜んだ。

自分にも『生きる意味』があるんだと


だが、そんな淡い期待を抱いた事をすぐに後悔する事になる。



自分が『聖女であるせい』で、聖騎士団が何人も死んだからだ。



エイユは、血まみれになりながら、必死に自分を逃してくれた。


「私の・・・私のせいで!」


泣きじゃくる私の頭を何度も撫でる。



「そんな訳ある訳ないだろ。・・・むしろ、俺達のドジで、危ない目に遭わせた事を謝罪させてくれ・・・」



私のせいで!私のせいで!



その後悔がずっと頭に響き続ける。





$$$





ユシアは蜘蛛の魔獣を吹っ飛ばした後、すぐにソウリオを抱えて、学園に戻る。


ソウリオの怪我は命に別状は無いとの事で安心した。



ふー



ユシアは一息つく。

その顔は晴れやかであった。



(はー、久々に森で『大暴れ』してスッキリしたー)



アヤシにふられた事とか『小さい事』であんなに取り乱して、情けなかったなぁ


そんな事を考えていると

フェリがあわててこっちに飛んでくる。


ソウリオが目を覚ましたらしい。



ユシアの無事な姿を見たソウリオは、目を丸くしてこっちを見る。


「あ・・・あ・・・ああ」


堰を切ったように涙がぽろぽろと溢れ出し。顔をくしゃくしゃにして泣き出す。


そのマジな様子に、ユシア、フェリ、マジョ、センシは、ぎょっと驚く。


事情が全く飲み込めないから仕方がないのだが、一堂はおろおろするばかりである。


ひとしきり泣き終えた後、ソウリオは涙を拭きながら、言葉を発する。



「ユシア殿、私のピンチに助けに来てくれて、本当にありがとう」




・・・え?




ソウリオの感謝の言葉に、ユシアの思考はフリーズする。



ユシアは、『ソウリオを助けに行った』覚えは無い。



通りかかったら、たまたまそこに居た感が強い。


そもそも森に行ったのだって、女子に告白されると思って、期待外れで、落ち込んでいただけである。


いや、仲間が危ない目にあってる時に『色恋に』うつつをぬかしていた自分って、かなりクズなのでは?


なんて今更ながらに申し訳なくなってきた。



ユシアの顔は青ざめていく。


「あーなんかそんな話だった気がするわ」

「流石ユシア、勘が冴えてる」

適当に話を合わせる、フェリとマジョ。


ソウリオの純真な顔を、ユシアは直視できない。



「・・・・そうだったかも」



ユシアは嘘をつく。

その声はとても震えていた。




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