第155話 地形の有利
(ば・・・化け物化け物化け物め!!)
ククモは心の中で叫ぶ。
降り注ぐ『樹木の砲弾』を間一髪で回避して、糸で木から木へ飛び移って距離を取る。
エイユの息子・・・
「出来が悪く、運動神経が悪い、そして、引っ込み思案で臆病な性格・・・」
確かエイユはそう言っていた。
ククモの前で、エイユは、他の聖騎士の部下と談笑していた。
「出来が悪いって・・・エイユさんは『ユシア君に対する期待値が高過ぎる』んですって」
「むぅ・・・妻のヒロイにも同じ事を言われたな」
エイユはユシアの事を思い出す。
自分に憧れると言って慕ってくれる息子が可愛くない訳がない。
「そうだな・・・この仕事が終わったら休暇取って、ユシアを鍛えてやるかな」
エイユは笑いながら部下に話す。
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ククモは、魔王軍の中でも『戦闘』に関して誰よりも経験を積んでいる自覚がある。
相手の予想外の攻撃に焦りながらも、まだ、若干の冷静さを残していた。
(『地形の有利』は自分にある・・・)
高い木の連なるこの森・・・
糸を使い、相手の頭上、飛び回り・・・十分距離を取る事が可能だ。
樹木の砲弾には驚いたが・・・裏を返せばそんな無茶な攻撃をしなければ自分に届かないという事。
(このまま、距離を取りつつ、『相手の攻撃パターンを分析』する・・・手札さえ把握しきれば、冷静に、毒針で、削り殺せばいい)
ククモは、翻り、上空からユシアの様子を伺う。
?
先程、木が放たれた位置にユシアは居ない。どこだ?
周囲の地面に目を走らせる。
どこに・・・
頭上後方から、葉が掠れる音が鳴る。
振り向くと斧を構えたユシアが『そこに居た』。
・・・は?
ユシアは斧の刃の下部を引っ掛けて木や壁を登る事ができる。そして、この『斧木登り』の技は応用が効く。勢い良く木に登れば、そのまま、木から木へ飛び移る事もできる。
つまり、ユシアは、森の中ならば縦横無尽に飛び回る事ができる。
・・・なんで?
・・・なんでなんでなんで??
森という地形は、確かにククモにとって有利な地形だ。だが、それは、いや、それ以上に森という地形は、ずっと森で木を斬ってきたユシアに絶対有利だ。
「クソがぁあああああ!!」
ククモは叫ぶ。
が、反撃する間も与えず、ユシアの斧は、ククモの土手っ腹にクリーンヒットする。
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