第74話 ついでに偽勇者も動く



マゼンダ総司祭が考えていたのは、『勇者の適切な処理方法』だ。




アレを・・・殺すだけなら、造作もない・・・が、それではダメだ。


より多くの人間共を絶望の淵に叩き落とすような・・・そんな残虐な方法で、見せしめて殺さなくてはならない。


・・・そうだ!


ギリギーリ砦、ギゼンシヤがもう少しで陥落させるあそこに送ってしまおう。




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マゼンダ総司祭は王国の重鎮達に話を通していく。奴らは勇者がカスみたいな能力しか持ってない事を知らないから快く承諾した。



「ああ、ザーコ様、我らが勇者よ、どうか憎き魔王軍の攻撃を受けているギリギーリ砦を、奴らの魔の手から解放して下さらぬか!」



マゼンダはひざまづいてザーコに懇願した。



「・・・」



今まで、王様待遇で食べては寝て食べては寝てという環境・・・からの、本格的な戦場へ急に連れて行かれるという事態の急変に、顔に出さないまでも、戸惑うザーコ。



「ご心配する事は、ありませぬ!・・・既に!あなた様のお力は!魔王をも!上回っておりますぞ!!!」



「そうだな?皆のもの?」

マゼンダが周りを見渡すと

周囲の者らも、一拍置いて、賛同する。


「そうだ!勇者様バンザイ!」

「勇者様バンザイ!」



彼らは内心思っていた。

この目の前の勇者が、全く戦闘力が皆無の雑魚だと

だが、否定は出来ない。マゼンダ総司祭がそう言っているから、聖教会の讃える英雄が弱いはずが無いと信じたかったから、そして周りの誰も疑問を口にしないから。



「・・・やっぱり?・・・魔王の配下ごとき、勇者の俺様の敵じゃねンだわ」



ザーコはすっかり気分を良くして両手を上げて皆にパフォーマンスした。




ただ一人、

若い聖騎士見習いの男だけは、その場の雰囲気に流されず、俯いていた。そして意を決して声を上げる。




「あの!・・・もう少し鍛錬を積んでからの方が良くないですか?・・・今のままだとワンパンで殺されますよ?」




精一杯大きな声で叫んだ。

若いながらもこの国を憂いているから、勇者という存在を信じたいから声を上げた。



・・・



一時の静寂

マゼンダ総司祭だけが、人間とは思えないような恐ろしい顔で若者を睨みつけ、親指を下に向ける。


彼はすぐに取り押さえられ、地下の牢屋にぶち込まれた。



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