第73話 フドゥ遂に動く



鴉部隊が戻らない・・・




今まであいつらが定時連絡を怠った事なんて無かった。冷静に考えて・・・全滅したという事しか考えられない。


だが、そんな事があり得るのか?夜中に奴ら全員を誰も逃す事なく仕留めるなど・・・



フドゥは考えるたび、膝がガクガク震えるのを感じた。


牛鬼、ギヤル、ドロロ、鴉部隊・・・魔王軍の中でも戦闘力に秀でた彼らを失った事がマゼンダ様にバレたら・・・あ・・・あー-!!!




本日、フドゥは、噂のチー牛一味が、ギリギーリ砦を付近に向かっているという報を受ける。



・・・しゃあおら!!



表面上は動かないが、心の中では飛び上がるほどに喜んだ。



あそこはギゼンシヤの管轄だ。これで奴らを追う口実は無くなった。良かったー、あっち行ってくれてホント良かった-!



いや、待てよ、最低限チー牛の存在をギゼンシヤに報告する必要があるかもしれない。



フドゥは最低限の連絡は欠かさない、なぜなら、周囲との軋轢もまた出世へのマイナス点になるからだ。





$$$





フドゥは、直々にギゼンシヤの元まで出向いた。出不精なフドゥには珍しい事でギゼンシヤ側が何事かと驚いた。



「やぁ、フドゥ、出迎えの準備が不十分で済まない」



ギゼンシヤの物腰は柔らかい。コイツ、正義だのなんだのが絡まないとホント爽やかだよなとフドゥは思う。



(構わない、急に押しかけたのは、こちらだ)



フドゥは小声で返す。


ギゼンシヤは近況の世間話を饒舌に話すが、フドゥは相槌を打つばかりだ。状況が状況なだけに余計な失言は避けたい。



「それにしても君の部下は精鋭揃いで羨ましいよ、こちらももう少し戦力があれば、人間どもも砦ひとつ陥落するのにここまで手こずる事は無かった」



んんんっん



フドゥは咳払いをした。

その言葉、その精鋭をほとんど失ったフドゥにとっては痛すぎる。




「・・・さてそろそろ本題に入ろうか、今日はどんな用事でここに来たんだい?」



本題・・・



フドゥは恐る恐る口を開く、チー牛達がギゼンシヤの管轄に向かっている事を伝えた。



「そいつらは魔王軍にとって『脅威』なのか?」



・・・



(え、全然?)


フドゥは無意識に全然脅威になり得ないと口走っていた。


脅威とか言っちゃたら余計な詮索をされるかもしれないと考えたからだ。



「ええっと・・・脅威でも無い奴らの報告の為にわざわざ出向いたのか?」



ギゼンシヤは不審に思い詳細を質問する。チー牛とは一体何者なのか。どんな武器や魔術を使うのか等々・・・



フドゥは焦る。

思わず口走った嘘で、矛盾が生じている。どうする?どうする?



・・・




「・・・奴らは、『悪』だ」




フドゥは咄嗟にそう言葉にした。

その瞬間、ギゼンシヤの目の色が変わる。



「いや、いい、その言葉で十分だ」



ギゼンシヤはチー牛共を皆殺しにすると約束し、それ以上何も聞いてこなかった。

良かったとフドゥはそっと胸を撫で下ろす。


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