第72話 ホウロビの街の惨状
ホウロビの街は、広大なグエナ火山を望む街だ。
火の神の加護を受けたその街は、地下からお湯が湧き出て、その湯につかれば万病を癒し、滋養強壮、体力回復の効果があると有名でありひと昔前はたくさんの人で賑わっていたらしい。その先ギリギーリ砦を経由してグエナ火山を登頂した山頂に火の神殿がある。
当初、センシの立てた旅程は、ホウロビの街に一度立ち寄り食糧や水を補給すると言う計画だったが、
マジョがその計画に意義を唱える。
「ホウロビの街での補給は期待しないで方が良いと思うけど」
「どういう意味だ?」
センシは聞き返す。
「・・・行けば分かる」
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眼下に見渡すホウロビの街、
話に聞いていた賑やかな温泉街はどこにも無く、ただただそこは木材の燃えカスと廃橋が広がっているばかりだった。所々に死体が埋葬もされずに横たわっている。
「一体、なんだこれは?」
ソウリオの動揺した悲鳴のような声が周囲に響く。
センシは一層不機嫌そうな顔になりながら、呟く。
「魔王軍の攻撃を受けた可能性があるって噂までは聞いてたが、まさかここまで壊滅してるとは思わなかった」
そして、浮かんだ次の疑問はこうだ、なぜマジョがホウロビの街の惨状を知っていて、なおかつ、俺が知らなかったのか?
「ロストロイスの情報網はどこよりも正確よ、でも王国の方は・・・」
「情報統制か・・・」
ご名答、という手振りをマジョは示す。
マジョの話、ギリギーリ砦を攻めあぐねていた魔王軍は、先にホウロビの街に手をつけた。
砦からも援軍を出したが間に合わず、むしろ大打撃を受けて砦自体も落ちるのは時間の問題という情勢らしい。
ソウリオは、倒れた死体に掛け寄り、まだ息がある人がいないか探し回る。
センシは大きくため息をついてその場に腰掛ける。
(ススラカの街だって一歩間違えば、こうなっていた)
そして、ユシアは、
無表情でただその場に立ち尽くす。
おい・・・おい・・・
足元から声が聞こえる。
見下ろすと、匍匐前進しながら動く黒い衣装の男がコソコソとユシアに話しかけている。
(そこのお前、お前に話しかけているんだ)
困惑するユシアを気にせず話を続ける。
(ついて来い、『火の神様』がお前をお待ちだ!)
と確かにつぶやいた。
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