第56話 仮面部隊、マジョの使命



高い高い山々に囲まれた天空の都市ロストロイス




外界とは交易が少なく

冬場は完全に外界と隔絶される国


どの国よりも進んだ魔術によって人々の生活は成り立っており

その中枢は『元老院』と呼ばれる議会によって統治されていた。


その元老院直属の軍兵が『仮面部隊』であり、少数精鋭の傑物揃いと名高い。


その中でも『魔術師殺し』の異名と『戦鬼』の仮面を持つ『マジョ』は仮面部隊の中でも指折りの戦闘力を持つ。



長老たちがマジョに下した命令は以下の通りだった。

かのアーカディア王国の王都の勇者の候補選抜会で




『本物の勇者が、存在するかどうかを確認する事』




マジョはその命令に戸惑う。

確か噂ではどこかの片田舎で勇者の証を持つ者が現れたのではなかったか?


マジョの質問に一息つき

他言しないことを約束してから

話を続ける。



「世界樹の聖域は、既に魔王軍の手に堕ちた・・・女神の安否はわからない」



マジョは驚きのあまり目を見開く。

女神が居なくなるという事は、それすなわち、

その加護がなくなり、世界が魔獣で溢れかえるという事と同義だ。



そして、最後の希望である『勇者の証の継承』

それすらもおこなえたかどうか定かではないらしい。





・・・





ここからはマジョの個人的な所感




(ああ・・・もう・・・世界・・・終わったなぁ)




何もかも、あきらめていた。



長老たちの話しぶりから察するに、


もう勇者は存在しない可能性が濃厚だけど、

一応確認してきてー、ぐらいのニュアンスだったし


王都に着いてからも、城とか聖教会の方に魔族の気配を確かに感じる。


こっそり、忍び込んで勇者とやらの姿も確認したが、明らかな偽物、

もうちょっと似せる努力できなかったのか?と問い詰めたくなるレベルの雑魚だった。



所詮、勇者など、お伽話の中だけの存在・・・



改めてそう思い知らされた。



このまま、この国に魔王軍の手が伸びれば

この国の人間はほぼ全員殺され、王都の地面が真っ赤に染まる。

おそらく、あと一年も経たないうちに確実に起こる未来


マジョは顔をしかめる。



それでも、ロストロイスの長老たちは何も思わないだろう。

ロストロイスは外界から隔絶された国

他の国がどういう末路を辿ろうが、すべては高みの見物なのだから





そして、マジョは目撃してしまう。


月見の塔で


ユシアの股間の、その光を





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