第39話 エイユの墓に祈る少女




王都に来て、今現在





「出てきたのは・・・ちっ男か・・・パスね、次、次」


人の家の玄関前で、

はぁはぁ言いながら、女の子が出てくるのを出待ちしている・・・ああ



待つのも、

飽きてきて、よそ見をし始めたあたりで、


門の横の勝手口から誰か出てくる。

顔はローブで隠れていてよく見えない。




!?




その子を見たフェリが反応して声を上げる。

「あの少女・・・ちらっと顔が見えたけど、可愛いわ!」


「回復術師のオーラも感じ取れるし、よし、彼女にしましょう!」






$$$






その少女は

誰にも見られたくないのか

コソコソしながら、どんどん人気のない方向へ向かう。



その子に見つからないように尾行する・・・斧をたくさん持つ男と妖精




「ぐへへ・・・こんな夕暮れに女一人で出歩くなんて・・・勇者の仲間にされても文句は言えないわねぇ・・・くくく」




フェリの発言が『変質者』じみてきた。

・・・勇者の仲間ってなんだっけ?・・・




(さぁ、ユシアも準備して、頃合いを見て、彼女を誘うわよ)


(誘う!?)



(そうねぇ、最初のセリフから、こんな感じの流れはどうかしら)




『チョリーす!ヘイ彼女、かわウィーねぇ!とりま、俺らと魔王討伐行かない?』


ドン引きして素通りする彼女・・・



からのー



『チョマテヨ!チョマテヨ!・・・俺本気だから、本気と書いてマジだから、絶対魔王討伐すっから!』


と迫真の顔で力説するユシア



彼のチャラい発言からの一転、

熱い部分も見せられて、『キュン』とくる彼女




・・・




(ならねぇよ!)



というやり取りをしながら尾行は続く。

王都の端、木の茂る小高い丘に着く。


古びた剣の刺さった場所に花を供え、祈りを捧げる彼女



誰かのお墓だろうか・・・それにしては、粗末だな・・・



小さな声だったが

風に乗って微かに聞こえてくる。






「エイユ様・・・私はきっと・・・勇者の仲間になって、この世界を救います」






エイユ?って言ったか

そういえば、あの古びた剣に巻いてある布、

親父の持ってた物にそっくりだな・・・



彼女に事情を聞きたいという思いが先走り

油断が生じ、草むらから出ようと大きな音を立ててしまう。

(しまった・・・)




「誰!?」




ユシアはうっかり彼女の前に姿を現してしまうのだった。




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