第20話 影魔術のセンシとチートな牛鬼




ススラカの街は四方を崖と塀に囲まれた街である。





その正門に魔獣の一団が取り囲む。

向かう合うのは、数人の衛兵と、黒い装束を纏った男、


彼の名はセンシ、王都の魔獣討伐士の中で十本の指に入る十天衆のひとりである。




ふふん♪ふふん♪




鼻唄を歌いながらひときわ大きな魔獣が一匹

正面に立つ、


牛の顔、大きな角、二足歩行で歩き

ひときわ目を引くのは、その巨体と筋肉隆々な肉体である。



「やーやー、十天衆、影魔術のセンシさんが、わざわざこんな田舎まで出向いて下さるなんて」




その身長ほどもある鉄の棍棒を

地面に荒っぽく置くだけで、振動が周囲に響く。




「 感 激 だぜ?・・・こんな寂れた街をぶっ潰すだけじゃ、いささか退屈だったんでなー」




センシは余裕の顔を崩さず、一息ついて応対する。



「そりゃ、お互い様だろ、「怪力の牛鬼」お前の悪名もしっかりこっち側に轟いてるぜ」




んー




牛鬼はしばらく上を向いて考えて

ぎろりとセンシを睨みつける。




「ノンノン、その通り名・・・俺は気に入っていないんだよ?」





ただの怪力じゃあ、俺の格は言い表せない!


で考えたんだが




「チートな怪力の牛鬼!!」




この通り名はどうだ

カッコいいだろ?




カッコいい!カッコいい!




周りの魔獣たちは声を出す。



「まぁちょっと長ったらしいかもな、ちょっと略して「チー牛」 とでも呼んでくれ」





チー牛!チー牛!チー牛!チー牛!






魔獣たちの声があたりに響く。

彼らのボルテージは最高潮だ。




「・・・だっさ」




センシはふっとため息をついてぼそりと言い切る。


そのすかした物言いに怒った一匹のゴブリンがセンシに向かって剣を奮う。


が、次の瞬間


地面の黒い影がゴブリンの下を通り抜けたと同時に

片足がスパンと切り取られ、地面にのた打ち回る。


影魔術のひとつ『影爪』である。



その様子を見て

牛鬼は仲間が斬られたにも関わらず、大笑いする。




「へー、今のが、かの有名な影魔術か・・・ふー・・・だが惜しいな、『お前の影魔術、日中は、かなり効果が下がる』んだろ?・・・俺としては全力のお前と戦って叩き潰したかったぜ」





その軽口を聞いた瞬間

センシの顔から余裕が消える。




「おい・・・その情報・・・誰から聞いた?」




牛鬼を睨みつける。


(おっといけね、口がすべっちまった)


牛鬼は誤魔化すように鉄の棍棒を振り上げる。



「まぁ、誰でもいいじゃねーの、これからミンチにされるんだから聞いたって仕方ないだろうよ!!」



そして、地面を強く蹴って、センシに襲い掛かる。




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