第3話 ■トイレ1

■トイレ1


「ごめんなさい!ごめんなさい!」

今朝も通勤途中の女子トイレに立ち寄ると個室の中から、女性の謝る声と男性の粗い息が聞こえる。

きっと男性様を怒らせるようなことをしたか、普段からちやほやされて調子に乗ってしまった子だろうということは、声のトーンから勝手ながら想像ができた。

私は便器に座り急いでパンツを下ろして、便座に腰をかけた。


男尊女卑法が施行されてから、私たちの居場所は徐々に少なく無くなった。

元来、化粧室というものは私たちにとっては、日常の中で男性の目を避けれる唯一のばしょだった。

そのため用を足したり、化粧を直したりと男性の目の前では決して行いたくない行為を、この空間で行ってきた。

それが今や、その化粧室までが男性様の手によって管理されているのだ。

例えば女は鍵の使用を原則禁止され、男性の出入りは以前に比べて自由になり、また個室によっては女性が勝手に便や尿などを流すことが禁止されているトイレなどもあった。

そのため、コンビニなどでトイレをかりるときは、お店に使用許可を取るのは当然だったし、その時に使用後の報告を求められた場合は、自分で便器を流すことは許されず、必ず男性店員様へ報告にいかなければならなかった。

私は求められたことは、これまでに数回あったが、やはり私より可愛い子達のほうが求められる確率も高かった。


『女 鍵使用 禁止』

雑に張られているステッカーを見ながら用を足した。

となりでは相変わらず女の声が聞こえる。

音を想像するに、男性器を口にいれられているようだ。

彼女の必死に抵抗する声を、押し殺してることが安易にわかる音がしていた。


私はいつのまにか、そんな環境の中でも平気で用が足せるようになっていた。

常に長居はせぬよう心掛けていたので、用を足し終わったあとはすぐに立ち上がり、ドアを勢いよく開けた。

ドンという衝突音が聞こえた。

「あぁ。。」私は順調にいくはずの日常が崩れ去る音が聞こえた。

相手は男性様だった。

「っち」男性は舌打ちをして私の髪の毛を掴み個室へと連れ戻した。


本来であればこのような暴力は禁止されているが、この場合、私のほうから男性に暴力をふるっているため、通常であれば裁判にかけられるか、もしくはその場で相手方の納得するような謝罪を行うかの二択だった。


私は無意識に謝罪していた。

まるでさっきまで隣の個室の女がしていたように。

私もこの人に何をされるのかわからないことが恐かった。

想像がつかないというものは恐怖心を何倍にも引き揚げてしまう。

それならばと思った私は、その男に自ら謝罪を懇願することにしたのだ。

私から行動するこで、相手様に受け身になってもらおうという魂胆でもあったのだ。


つづく



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