16. ナンホウ大陸の人たち

おそくなりましたが、明けましておめでとうございます。

番外編も終盤に突入していますが、もうしばらくおつきあいください。


~~~~~


ニルクの町はランタク側での待ち合わせの町だったのでちょうど良かった。町に入るのに特に問題なく、そのまま役場へと顔を出す。受付に行ってからロンさんから預かった紹介状を出した。


「すみません。この紹介状を出せば担当者に連絡が行くときいているのですが大丈夫でしょうか?」


「えっと・・・はい、大丈夫です。すぐに担当の者に連絡します。」


すると待ち構えたようにすぐに担当者という人がやって来た。あれ?この人達は・・・。


「わざわざお越しくださってありがとうございます。今回の連絡通路について担当を任命されましたデリアンといいます。こっちは助手のカルアです。

内密の話になりますので、別の建物に案内いたしますのでご同行願います。」


そういうと、すぐに役場を出てから3軒ほど隣の建物に案内される。建物は宿を改造したようなところで、説明では役場の仮の建物として使用していると言うことだった。部屋に通されるとすぐにカルアさんがお茶を用意してくれていたんだが、デリアンさんが待てないとばかりに話しかけてきた。


「さっそく本題となりますが、今回こちらの国に来られたと言うことは、古代の連絡通路を発見したということでよろしいのでしょうか?」


「ええ、そのように理解していただいて問題ありません。」


「古代の連絡通路ですか・・・。私達も自分たちで発見したかったものです。

古代の連絡通路はやはり現在見つかっているものと同じ感じでしたか?地下空洞もあったんですかね?連絡通路に何か古代文字などは残っていませんでしたか?ああ、あと・・・。」


「はいはい、デル、そこまでよ。相手もかなり不審に思っているでしょう?


申し訳ありません。デリアンは遺跡のこととなるとどうしても歯止めがきかなくなるのです。」


お茶の準備を終えたカルアさんがデリアンさんの暴走を止めてくれた。


「いえ、それはかまいませんよ。

ところでお二人は遺跡にかなり詳しいようですが、古代遺跡の調査が専門なのですか?」


「ええ、古代遺跡に人生を捧げられるくらいにはまっていますよ。若い頃はなかなか調査も出来なくてもんもんとしていたのですが、あることをきっかけに好転しましてね。

アムダの英雄をご存知ですよね。あのお二人に遺跡調査の依頼を受けてもらったところからいろいろと運がよくなったんですよ。


今は子供達も成人したので二人であちこちに飛び回っていますよ。あ、すみません。助手のカルラは私の妻なんです。彼女も古代文明についてはかなり造詣が深いんですよ。


今回も古代の連絡通路の話を聞いていたのですが、自分たちにも声がかかったのですぐに立候補したんです。」


そういえばアムダの討伐の時にも国の代表としてきていたからなあ。ちゃんと認められて良かったよなあ。ジェンを見ると同じようにほほえんでいる。


連絡通路について一通りの話をした後、サビオニア、タイカンの担当者に連絡を取る。連絡通路の発見と、簡単な状況について連絡したので、細かいところは三国の担当者で話を進めてくれるだろう。




さすがに強行軍でやって来たのと、すでに日も暮れかけていたのでこの日は用意してくれた宿に泊まることになった。デリアンさんはすぐにも出発したいようなことを言っていたけどね。

翌朝朝食を取ってからそうそうに二人を連れて通路の入口へと向かう。


「え、こんなところにあったんですか?」


やはり町からかなり近かったことに驚いているようだ。


「ええ、完全に土に埋まっていたのでわからなかったのだと思いますよ。もしもの事を考えて入口は土砂でふさいでいます。

とりあえずタイカンの担当者にも案内してきますが、タイカン側は町から距離があるうえ、優階位の魔獣も出てくるので戻ってくるには時間がかかると思います。」


「分かりました。私達もいろいろとやらなければならないことも多いので戻ってくるまではこの付近に滞在していると思いますよ。その際はまた声をかけてください。」



二人に別れを告げてから連絡通路を引き返し、タイカンへと戻る。ルートが分かっているので行きよりはスムーズだったがそれでも森を抜けるまでに4日もかかってしまった。


ここから近くにある小さな村のトルクというところに顔を出す。まだかなり小さな村なんだが、連絡通路が本格始動したら中継の町として発展するかもしれないな。それとももっと近くに町を作るのかなあ?まあ魔獣の討伐次第だろうな。

タイカンの担当者がここに来ているはずだなので、入口の門番に紹介状を出すとすぐに担当者がやって来た。


「イチ様とジェン様ですね。すでに話は聞いております。担当のトニアと言います。

遺跡へ案内をしていただけると言うことですが、本日は予約している宿でゆっくり休んでいただいて、出発の日程についてはまた明日に打ち合わせると言うことでよろしいでしょうか?」


「いえ、早く取りかかりたいと思いますので、明日の朝に出発と言うことで良いですよ。ただ優階位の魔獣が出てきますので、その辺りの護衛は問題ないでしょうか?」


「はい。事前に連絡は受けていますので、兵士の中から実力を持つもの達を集めています。野営にも慣れているもの達なので問題ないはずです。」


「分かりました。それでは明日よろしくお願いします。」



一晩休んだ後、朝食を取ってからトニアさんと合流してすぐに出発する。今回同行するのは調査員が4名と護衛の兵士が10名だ。車4台で移動するみたい。


ある程度街道を北上してから森の中へと入っていく。車は収納バッグに入れていくようだ。思ったよりも大きな収納バッグを準備しているみたい。

途中で魔獣を発見するが、さすがに戦い慣れた兵士だけあって、良階位の魔獣だけでなく、優階位の魔獣が出ても余裕で倒していた。

途中の野営の時には夜の見張りを交代でやってくれたのでゆっくり休むことが出来て助かった。


さすがに二人で行ったときよりも移動時間がかかり、6日後に連絡通路の入口に到着する。彼らはここに拠点を造り、しばらく調査を行ってから大々的に開発を進めていくようだ。その間、兵士達は近くの魔獣の退治をすすめるみたい。

ここの場所は途中で目印を付けながらやって来たのであとから大規模な討伐隊と調査隊がやって来るらしい。ただ周りの状況を考えると、安全になるのはまだ大分かかるんだろうな。それまでは定期的な魔獣の討伐や護衛などが必要になりそうだ。



ここから調査員2人と護衛3人と一緒に連絡通路を進む。途中の状況を確認しながらだったので思ったよりも時間がかかってしまうのはしょうが無いだろう。

ランタク側にでると、すでに拠点が築かれていた。内部の調査は自分たちの到着を待っていたのでまだ行っていないようだ。ここでお互いの担当者に引き合わせて依頼は完了した。



デリアンさん達もいたので挨拶をしていく。


「お二人ともお世話になりました。あと、これ良かったら古代文明の研究に使ってください。自分たちがまとめた古代遺跡の資料です。

残念ながらここ最近見つかった遺跡については分かっていないのでもしかしたらすでに調査の終わったことが書かれているかもしれませんが、なにかの参考にしていただけでがと思います。

お二人が担当で本当に良かったです。」


ニルクの町に戻ってから役場に顔を出して依頼の完了させると思ったより多くの報奨金のもらうことが出来た。ありがたいものだ。折角なのでロンさんとハクさんにもお礼のメッセージを送っておいた。



~ハクSide~

サビオニアの改革が成功してからもう20年以上経つのか・・・。革命は大変だったが、長年の夢が叶って良かった。

革命が成功して国の運営も軌道に乗った。革命の同志も半分はすでに亡くなってしまったが、その意志を継ぐもの達も育ってきているのできっと大丈夫だろう。私もそろそろ引退を考える歳だからな。


ヤーマンに外交に行っていたロンが戻ってくることになったのだが、えらく慌てて戻ってきているようだ。いつもなら交渉が終わった後も、「現地調査だ」と言って帰りはもっと遅くなっているんだが、何か急ぎの用事でもあったのだろうか?

まあ古代遺跡の調査が出来る人物が見つかったと言っていたからそのせいか?もし本当に見つけることが出来たら助かるのだがな。


ジュンイチさんとジェニファーさんの二人の能力までとは言わないが、今回の候補のものがそれに近い能力を持ってくれているとありがたいんだがな。



ロンが戻ってきたというのですぐに会うことにした。例の調査の二人も紹介してくれるようだ。一通りの説明を聞いた後、遺跡調査の話になったが、あの二人を超える能力を持っていると豪語している。あの二人を超えるだと?ロンも言うようになったものだな。


入ってきた二人を見て驚いた。俺の記憶にあるあの二人の姿だった。ロンにそっくりだから同じ能力というのはおかしいだろうと言うと、あの二人で間違いないと言ってきた。


クリストフ王爵が言うのなら本当なのだろうが・・・それならなぜ先にそう報告しない!!怒鳴ったら驚かせるためだったといけしゃあしゃあといいやがった。くそっ!!


そのあと二人と話をして驚いた。まさか時間を超えてこの時代にやって来たという事だったからだ。しかし本人というのは確かに間違いないだろう。本人でなければ当時の話をここまで明確に説明できるわけがない。二人の話はいろいろと書かれているが、かなり創作されたものが多いし、公開できない話も結構あるからな。


折角なのでカルバトスも呼んで一緒に食事をとることにした。いろいろと予定は入っていたが最重要事項だと言って強引に予定を空けさせた。あの二人と話すのが最優先に決まっている。



古代連絡通路の詳細はロンに任せたが、あの二人ならきっと見つけてくれるだろう。遺跡の状態にもよるが発見してもらえるだけで十分だ。修理できるレベルならその価値は半端ないからな。

しかし相変わらず欲のない二人だ。最近は裏のある人間ばかりに会っていたのでつい疑ってしまったが、あの二人のことだ。きっとそのようなことは考えていないんだろうな。



しばらくした後、無事に発見したと言う連絡が入ったようだ。タイカン、ランタクの担当者とも無事に連絡を付けてくれたらしく、調査がすでに始まっているようだ。うちの国からも調査員が行っているのでしばらくすれば報告があるだろう。


二人からメッセージが届いていたんだが、報酬についてお礼を言われてしまった。確かにかなりの額ではあるのは間違いないが、連絡通路の発見によって得られるものと比べたら、微々たるものだ。連絡通路の利益は分かっているはずだからもっと求めてもおかしくないんだがな。


まああの二人のことだ、またふらっとやってくるかもしれないな。しかし発見した二人のためにも何か残してあげたいものだ。



~デリアンSide~

古代調査に人生をかけて研究を続けてきた。若い頃はかなり大変だったが、アムダの英雄と呼ばれる二人に会ってから人生が好転した。

地道に研究を続け、アムダ討伐の時に国の代表にも選ばれた。無事に討伐が出来たこともあり、国から褒賞をもらい、貴族に準ずる扱いとなった。おかげで遺跡の調査はさらに進むことになった。


モクニク国の内乱の時には私達はランタク側に移ることにした。多くの人間も逃げ出したが、逃げることが出来なかった人たちも多い。早めに情報をつかんでいたのが幸いした。


内乱の間はさすがに遺跡の調査は出来なかったが、さすがに他の国に出るのもためらわれたので、それまでの蓄えと、日雇いの仕事で食いつないだ。

内乱が終わり、新たな国が誕生すると、国も大分落ち着いていった。もともと戦闘も大規模になったわけではなく、局地的な戦闘だけだったのがよかったのだろう。


古代遺跡の調査である程度名が売れていたこともあり、ランタク国でも無事に職に就くことが出来た。今では古代遺跡調査員として国に雇われて好きなように研究できる身分となった。昔からは考えられない待遇だ。



最近は新たな遺跡の発見がなく、心躍ることが少なくなってきたんだが、新しい古代の連絡通路調査の話を聞いた。過去に何度も調査が行われ、発見されていない事案だ。私達も調査を行ったことがあるのだが、手がかりすら見つけることが出来なかった。

今回は遺跡調査でかなりの実績がある人間が行うと言うことだったのだが、私の知らない人間なのだろうか?そんな人間がまだ埋もれているとは驚きだ。今回はサビオニアのロン氏が主導しているらしい。

調査はタイカン側から行われるようだが、今回はかなり可能性が高いということで、調査メンバーに立候補した。



調査結果が待ちきれずに予定よりも早くニルクの町について待っていると紹介状を持った人物が来たと連絡が入った。こっちの町にやって来たと言うことは通路を発見したと言うことなのだろうか?


二人に会いに行くと、いたのは若い冒険者二人だった。なぜかアムダの英雄の二人を彷彿させる姿をしていた。いや、二人そのものといった感じだった。名前もイチとジェンと二人の愛称を使っている。まあ英雄にあこがれて付ける人たちも多いからな。



タイカンの遺跡の調査員と面談をして、例の二人の仕事は終了となった。別れの際に古代遺跡の調査結果という資料を渡された。彼らが行った調査結果をまとめたものらしい。


家に帰ってデルと二人でよんでみたが、あまりの内容に驚きを禁じ得なかった。たしかにここ20年ほどの間に見つかった遺跡についての調査は行われていないが、それでもかなり十分な内容だ。そしてまだ見つかっていないナンホウ大陸の遺跡調査結果についても書かれていた。


そして資料の最後に一枚の紙が挟まっていた。


「デリアンさん、カルアさん、お二人が幸せそうで良かったです。」


それを見たとき、やはりあの二人だったのではないかと思った。名乗らなかったのはおそらく何か事情があるのだろう。まああの二人が生きていると分かったら大騒ぎになってしまうしな。



~あとがき~

アップが遅くなり申し訳ありません。忙しかったこともありますが、内容が定まらずなかなか決定稿にならなかったことが原因です。

実は今回の内容は二転三転しました。最初が過去に会った人は出てこない感じの今回のような話だったのですが、何を思ったのか悪者が出てくる話になってそのままいったん書き上げました。しかしどうも話に無理があり、いろいろ修正を試みましたがやはり納得できるものが出来ず、最終的に今回の話に変えたという経緯です。今回の話は思いついてから一気に書き上げることが出来ました。

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