190. 異世界1214日目 未発見の遺跡の調査

 0時に起きるが、さすがに眠い。鎧は着たままだったので速攻で眠っていたけど眠りは浅かったみたいだ。そうはいっても鎧を脱ぐわけにもいかないからなあ。


「おはよう。」


「おはよう。ちゃんと眠れた?朝食の準備はできているわよ。」


 拠点から出てジェンに挨拶をすると、ジェンは元気に返事を返してきた。夕べは良階位の魔獣が一回襲ってきたので退治したらしい。良階位と言っても蹴兎が一匹だけだったのですぐに対処できたようだ。


「ありがとう。いただくよ。」


 サンドイッチと温かいコーヒーで簡単に朝食を済ませてから拠点を収納し、すぐに出発する。ここからさらに2時間ほど歩いて目的の場所近くにやってきたんだが、そこは大きな湖になっていた。


「ここ・・・だよね?」


 ジェンが湖を見ながら声を上げる。


「場所的にはこの湖の真ん中付近みたいだけど、標高はもう少し上の位置だね。」


 対岸は見えるが向こうまでは数メヤルドはありそうな感じでかなり大きな湖という感じ。カルデラ湖のように湖の周りが盛り上がっていて丸い感じになっている。


「これって町が吹っ飛んでクレーターになってしまったという感じかな?形も丸いし、爆弾でも落とされたのかなあ?」


 町の大きさがどのくらいだったかわからないけど、今まで見た遺跡の大きさを考えると町すべてが吹っ飛んでしまったと考えてもおかしくないレベルだ。まいったね。


「そんな感じかもしれないわね。これはさすがに遺跡や遺物は残っていないと考えた方がいいわね。もし残骸があったとしても湖の底だわ。」


「まあそうかもしれないけど、一応湖の周りを調査してみようか。1周するのに1日くらいあればなんとかなると思うし。」



 湖の外周に沿ってある程度地中も探索しながら回ってみたんだが、特に手がかりになるようなものは見つからなかった。残念ながら新たな発見はなかったが、古代兵器で町を一つ滅ぼす兵器があったことは間違いないだろう。

 調査しながらだったので思ったよりも時間がかかってしまい、結局この湖の周りを回るだけで3泊することとなってしまった。

 もしかしたら町から離れたところにも何かあるかもしれないけど、さすがにこの森の中を調査するのは危なすぎるし、どれだけ期間がかかるかもわからないのでこれは諦めるしかないだろう。

 魔獣は良階位だけでなく、かなり遠かったが優階位らしき気配も感じていたのであまり長い時間このあたりに滞在するのも怖い。さすがに優階位の魔獣を相手にすることは難しいからね。まあ逃げることに重点を置いたらなんとか逃げることはできると思っているけど。



 来た道を引き返すが、やはり時間がかかってしまうのはしょうが無いところだ。ただ荷物はないし、重量軽減魔法で移動も楽なのでまだいい方なのだろう。普通の冒険者だったらもっと大変だったんだろうなあ。

 ただ今回の簡易拠点も結構使えたのは良かった。もう少し床材を改良する余地はあるけど、十分拠点として使えるな。ジェンにも聞いたけど、特に不満は無かったらしい。「一緒に寝られないのが寂しいけどね。」とかちょっと可愛いことを言っていたけど、不意打ちでそんなことを言うのは勘弁してくれ。


 来たと時同じく4日かけてタラトクの町に戻る。ほんとに収納魔法があって良かったと思う。他にも戻ってきている冒険者の車がいたんだが、車の上まで魔獣の素材を乗せていたからね。収納バッグを持っていたとしてもそこまで大きなものを持っている人は少ないだろうからね。



 今回狩った魔獣のいらない素材で買取対象となっているものは役場で引き取ってもらう。価格は安いが実績にはなるからね。素材の買取をしていると、ジェンが近くにいた冒険者と話をしていた。どうやら女性3人のパーティーみたいだ。


「ジェン、買取は終わったけど・・・。」


 えらく会話が盛り上がっているので遠慮がちに声をかける。


「あっ、ありがとう。えっと、こちらはハルマというパーティーの人達でヤーマンとかのホクサイ大陸の国に興味があるみたいで色々と話をしていたのよ。」


「えっと、初めまして、ジェンとパーティーを組んでいるジュンイチと言います。」


 ちょっと警戒するような目で見られたが、なんかスレインさんたちに最初会ったときのことを思い出すなあ。男性に少し不信感を持っているような感じだ。


「もしホクサイ大陸の話を聞きたいのであればこのあと一緒に食事をしながら話しませんか?自分たちもこの国のことなどを色々と聞きたいので情報交換できればありがたいのですが・・・。」


 彼女たちはどうするか悩んでいたが、事前にジェンと話して興味が湧いていたのか、一緒に食事をすることとなった。お店は彼女たちのおすすめするところに行くことにしたが、いきなりよくわからないお店に行くのはやはり怖いのだろう。


 彼女たちはハルマという女性3人の良階位の冒険者で、ここモクニクの地方の平民で生活がかなり厳しかったこともあり、冒険者となったみたいだ。リーダーのハスルさんは剣士、ルイトリアさんは魔法使い、マルミアさんが剣士兼治癒士のようだ。

 もともとは別々のパーティーだったが、男性と一緒だといろいろと大変だったことから女性のみでパーティーを組んで活動をするようになったらしい。

 やはりこの国では女性軽視の風潮があるみたいで女性と言うだけで下に見られる傾向があるようだ。特に貴族になるとその傾向が強いみたいで、貴族の男性冒険者とは一緒に行動したくないと言っていた。

 お金が貯まったらホクサイ大陸に移住したいと考えているみたいで、頑張ってお金を貯めているようだ。ヤーマンのことなどいろいろと聞いてきたので答えられる範囲で教えてあげると、こっちの国のことなど色々と話してくれた。



 翌日は加工した素材などを購入して防具の整備もやっておくことにした。ある程度の整備は自分たちでできるんだが、一応おすすめという鍛冶屋に持っていって点検してもらう。一応合格点は出してもらえたんだが、少しお金を払って最後の仕上げをしてもらうことにする。やはりミスリルの武器の手入れはまだまだということか。

 さすがに疲れもたまってきていたので二日ほどは町でゆっくりする。このあとサビオニアに行くので国境の町タラクに行く予定なんだが、ここから直接行く街道はないのでいったんカルニクの町に戻ることになった。



~ハルマのハスルSide~

 遠出をしての狩りからタラクトの町に戻って素材の買取をしてもらっていると、横にいた女性が声をかけてきた。女性だけのパーティーが珍しかったのだろうかと適当に話をしていたんだが、ヤーマンから来た冒険者だったみたいで興味を引かれた。

 彼女は今素材の買取をしている男性と夫婦でパーティーを組んでいるらしく、見聞を広げることを目的にいろいろなところを回っているらしい。

 せっかくならいろいろと情報交換をしたいのでこのあと一緒に食事に行かないかと言われ、悩んだ末一緒に行くことにした。同じパーティーの男性も一緒だと言うことがちょっと引っかかったがその心配は杞憂だった。女性と言って下に見るようなことはなかったのである。

 パーティーの話を聞くと、いろいろな雑用も二人で分担してしていると聞いてちょっと驚いた。こっちの国では女性が雑用をするのが当たり前だからだ。とくに料理はジュンイチの方が得意という話を聞いてちょっと驚いたくらいである。


 ホクサイ大陸に行きたいという話をすると、いろいろと話を聞かせてもらうことができた。すでにホクサイ大陸の4つの国には行ったことがあるらしく、国の特徴を色々と教えてもらえた。やっぱり行くならヤーマンが一番いいかな?

 他にもいろいろと情報を教えてくれたので私たちも知っていることを色々と話をした。このあとサビオニアにいくと言うことだったのでちょっと注意はしておいたけど大丈夫かな?特にジェニファーさんは認識阻害をかけていたみたいだけど、かなり可愛いので変な貴族に目をつけられないかが心配だわ。そのあたりがわかっているのでフードを被って認識されにくくしているのだろうけどね。

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