158. 異世界803日目 もらった爵位は・・・

 二日後に約束したとおりラウソンさんが迎えにやってきた。宿の前に王宮からの迎えの車が着いたんだが、やはりわかる人にはわかるみたいでかなり目立っていた。さすがにこんなに注目されるのはつらいので裏口に回ってもらったよ。自分たちも正装をしているので余計に目立つしね。

 今回は指示されたとおりハクセンでもらった緑玉章も胸につけていくことにした。正式な場では持っている玉章などはつけていくものらしい。


 この玉章なんだけど、形は長方形の下に丸がついているようなもので、丸い部分は50ヤルド(5cm)くらいでガラスのような半球がはまっている。自分が持っているのは緑色だが、褒賞の種類によって色が異なるみたい。

 上の長方形の部分は銀色で複雑な文様が施されており、国名が刻まれている。ここのデザインは国によって異なるみたい。



 王宮の途中のゲートは確認もなく入ることができた。王宮の車に乗っているからね。そうは言ってもおそらく探索系の魔法は使われているだろう。


 王宮に入ってから待合室のようなところに通されるが、さすがに豪華で緊張してしまう。部屋にいるメイドさんがお茶菓子を用意してくれるが緊張して飲む気持ちにはなれない。横でお菓子を美味しそうに食べているジェンがうらやましいよ。


 時間になったところでラウソンさんに先導されて褒章が行われる部屋に移動する。廊下を歩いて行き、豪華な扉の前に連れてこられた。扉の両側には兵士が控えており、扉の上には”授与の間”と書かれていた。ここからは自分たちだけで入らないといけないみたい。



 ドアを抜けて入った部屋は、大広間ではないんだが、やはりそれなりに広かった。中央に青い絨毯が通路のように敷かれている。その奥の中央の高い位置にある玉座には国王陛下が座っており、その左右に大臣と思われる人が3人ずつ立っている。二人ほどは前に見たことのある顔だ。もちろん話したことはないんだけどね。

 段の下の左右には兵士が2人立っているが、それ以外にも扉の横と壁の付近にも兵士が立っている。まあ何かあった時にすぐ対応するためだろう。他に何やら大事そうなものを持った人がいるのでおそらくあれが褒章されるものだと思う。



 二人で青い絨毯を並んで進み、先に言われていた印があるところで立ち止まり、そこで片膝をついて頭を下げる。右手は胸の前に当てて、左手は地面につけて言葉を待つ。これはハクセンで習ったものだ。



 しばらくして、今回の受賞になった経緯の説明が始まった。予想通り以前話をした教育、指導方法の効率化についてだった。採用してしばらくは少し混乱があったようだが、かなり効率が上がったらしく、王宮内のみではなく、国の行政機関すべてに広がっているらしい。

 さらに詳細については伏せられたが、王家に関わる重要事項を解き明かしたと言うことで追加で褒賞が与えられることになったようだ。これは古代遺跡のことだろう。


「我が国のために貢献した褒章として緑玉章を授けることとする。」


 そう言って国王陛下より言葉をもらい、係の人から褒賞を受け取る。

 緑とは驚いたな。これってここでも下位爵になるってこと?



 国王陛下が退出した後で、横にいた一人から別室へ案内された。案内をしてくれたのは財務大臣の秘書のマカトシンという人で、今回の褒章の経緯について詳細に説明される。


 1年ほど前にまずは事務部と環境部の部署からマニュアルによる新人教育が開始されたらしい。最初のマニュアルを作るのに時間はかかったが、それを使って教育することにより、教育期間の大幅な時間短縮、作業内容の統一、文字が読めない人への絵による説明などでかなり効率化されたようだ。

 特に提出書類についてはミスや修正の大幅な減少によってかなりの効率化が図れたらしく、また長年取り組んでいた報告書類の統一も進めることができたようだ。

 もちろん国王陛下からの肝いりの命令であったことも一気に改善が進んだ要因の一つではあるが、その命令の根幹となったのがこのシステム化だったと言うことは間違いないと判断されたらしい。

 もちろんこの改革により、不遇を受けた人間もいたようだが、国王の命令だったこともあり、表だって批判する人間はいないようだ。効果も目に見える形で出ているので最初に批判的だった人たちも今では大人しいようだ。

 ただあまり表だってこのアイデアの提案者のことを言ってしまうと、二人に迷惑がかかるかもしれないと言うことで大々的な発表とはならなかったらしい。


 今回の褒章は実際に恩恵にあずかった人達からも声が上がっていたことから一番下の赤玉章ではなく紫玉章が授与されることとなったみたいだ。

 その内容で受章を進めていたところで、今回のクリストフ王爵の事件があり、詳細は公開されていないが、王家にまつわる懸案事項の解明に貢献したという業績が出たため、一つ上の緑玉章の受賞となったらしい。


「すでにハクセンでも同等の褒賞をもらっていると聞いているのでわかっていると思うが、ヤーマン国でも下位爵に相当する身分となる。2つの国で爵位を持っているものはゼロではないが、かなり珍しい事例となる。国によっては一つ上の爵位と見なすところもあるくらいだ。

 ただ、その分、あまり変な行動をしないように心がけてもらわねばならないので、そこは理解してほしい。」


「わ、わかりました。」


「あと、報奨金として一人100万ドールが授与されるので身分証明証の書き換えとあわせて窓口で申請してくれ。」


 ハクセンは口止めもあったのであの金額だったと思うが、こっちでは少ないとはいえ一人100万ドールは大きいな。


 部屋を出てから窓口で身分証明証の更新をしてもらい、お金についても振り込んでもらうことにした。身分証明証はこんな感じになった。


名前:ジュンイチ

生年月日:998年10月30日

年齢:19歳

国籍:ヤーマン国

職業:冒険者(上階位・アース) ハクセン下位爵、ヤーマン下位爵

賞罰:ハクセン緑玉章、ヤーマン緑玉章


名前:ジェニファー

生年月日:998年12月15日

年齢:19歳

国籍:ヤーマン国

職業:冒険者(上階位・アース) ハクセン下位爵、ヤーマン下位爵

賞罰:ハクセン緑玉章、ヤーマン緑玉章


 なかなかすごいね。貴族の特権が強い国に行くときには役に立つかもしれないね。

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