124. 異世界577日目 貴族の生活

 夕方にお風呂の準備ができたというので入らせてもらうと、やはりかなり大きなところだった。お風呂にも世話係がいたんだが、さすがに遠慮させてもらったよ。お風呂で他の人に世話してもらうなんてどう考えても無理だ。



 夕食はなんとラクマニア様の家族と一緒に食べることとなったので、さすがに緊張してしまう。最低限のマナーはあると思うんだけど、こんな世界は知らないからなあ。ジェンはまだなれている風でうらやましい。


 今この家に住んでいるのはラクマニア様と奥さんのスレンダさん、次男のルイアニアさんとその奥さんのタスマールさん、その息子のソラニアくんと娘のクリスティファちゃんだ。長男一家は領地の管理をしているらしくそちらに行っており、長女と次女はすでに他家に嫁いだらしい。

 ラクマニア様とルイアニアさんはお城に勤めており、結構な要職についているみたいだ。ルイアニアさんもすでに独立して爵位と領地を持っているんだが、王都にいるときはこの屋敷に滞在しているようだ。

 王都での土地事情でなかなか屋敷が持てないらしく、親や兄弟の館で過ごすのは一般的なようだ。館に泊まれない場合は貴族エリアにある宿に泊まるようだ。さすがに平民街のエリアを潰して貴族街にするわけにもいかないよね。昔だったらやっていそうだけど・・・。



 簡単に自己紹介をしたところで食事に入るが、まあ普通の美味しい料理という感じでまだよかった。フルコースのようなものとか出てきたら困ってしまうところだったからね。


「すまないな。お客用の料理を頼んでもよかったんだが、昼のことを考えると普段の食事の方が気を遣わないかと思ってな。」


「お気遣いありがとうございます。これだけでも十分な料理です。今回のこの魚料理が特に美味しかったです。最近なかなか魚料理を食べる機会もなかったので、久しぶりに楽しめました。」


 収納バッグに魚は入っているけど、刺身として食べるくらいだったからなあ。


「口に合って何よりだ。話しぶりだと色々料理にも詳しそうだな。」


 他の家族の人たちも親しみやすい人たちでとても助かった。

 今までの冒険の話をしていると、孫の二人がかなり興味を持ったみたいでいろいろと聞いてきた。結局食事の後も寝る時間になるまで相手をすることになってしまったよ。



 子供達が眠りについたところで自分たちが泊まる部屋に案内してくれたんだけど、まあよく物語に出てくるような豪華な部屋だった。広さは広すぎてどのくらいなのかわからない。ソファーにテーブル、ベッドなどが置いてあるんだが、寝るだけなのにこんな広い部屋はいらないから・・・。


 天蓋付きのベッドというのはこんな部屋だからいいんだけど、ベッドが一つというのはどういうことなの?いや、確かに二人でも十分寝られる大きさだよ。キングベッドよりも大きいんだから。でもね、自分たちはただのパーティーメンバーなんですよ。夫婦でもカップルでもないんですよ。



 ベッドの追加とかをお願いしても、「遠慮はいらないですから。」と言って聞いてくれない。「防音の魔道具もついていますので気にしないで下さい。」って何をさせようとしているんだよ。しかもジェンが早々に話を切り上げてしまったのでベッドを運ぶという話は終わってしまった。


 いつものベッドを出そうかとも思ったが、「これだけ大きいから同じベッドと言ってもいつもと変わらないでしょ。」と言うので諦めて一緒に寝ることにした。もちろん離れてだけどね。


 いつものベッドも結構いいものを買っていたんだけど、さすがにレベルが違ってかなりの寝心地だった。こんな天蓋ベッドで寝るなんて地球では考えられないなあ。

 もちろんジェンとは何もなかったよ。時々寝ぼけて抱きついていたことがあるくらいはあったけどそのくらいは許して。あとで大変だったんだから。




 このあと結局1週間もお世話になってしまうことになった。


 ラクマニア様は午前中に1、2時間しか時間がとれない上、思った以上にいろいろと聞いてくるので時間がかかったのである。

 食事は屋敷にいる人たちと一緒に取り、午後からは庭やホールを借りて剣術や魔法の訓練をさせてもらった。護衛の人も相手してくれたのでかなり有意義だった。魔法は耐魔装置があるので使える場所は限られているので魔力循環がメインだったけどね。


 あとは二人の子供達に話を聞かせたり、一緒に遊んだりしていたせいで子供達にはかなりなつかれてしまった。

 地球にあったおもちゃとかを作ってあげるとかなり喜んでいたからね。あまり高くはないけど、飛翔魔法で一緒に浮かんであげるとかなり感激していた。どうやら乗り物では飛んだことはあるが、そのまま飛ぶことは初めてだったみたいだ。

 おかげで講義が終わって屋敷を後にするときにはかなり泣かれてしまってなだめるのが大変だったよ。また遊びに来ると言って納得させたんだけどね。



 貴族の話を聞いたところ、やはりこの国も他の国からの影響が出てきているらしい。特権階級をなくそうという動きである。

 過激派のようなグループもいるが、ラクマニア様はどちらかというと差別をなくしていこうとする派閥らしい。ただもちろん今の体制を維持しようとする派閥もあり、混沌としているようだが、いずれはアルモニアのようになっていくだろうと思っているようだ。



~ラクマニアside~

 先日親友であり、学友仲間でもあるファンから連絡があった。どうやら色々と魔法について新しい発見があったらしい。内容がかなり膨大になるので通信では厳しいから書類で送ると言ってきたんだが、説明ができる人を派遣してくれるようだ。

 ただ驚いたのはその使いが冒険者だと言うことだ。説明を聞くと、若い冒険者だが、今までに無い考え方をしており、彼らのおかげで新たな理論ができたと言っていた。ファンにそこまで言わせるというのはかなり驚きだ。

 人柄についてはファンが保証すると言っていたが、貴族に対する対応はできないのでそこは勘弁してやってくれと言っていた。ファンに対しても物怖じしないくらいだったらしいのである意味楽しみだった。


 他の用事もあるのでおそらく2ヶ月後くらいにはそっちに行くことになるのではないかと聞いていた。このため検問に依頼して動向を探らせていると、ファンの予想通りに入国してきた。


 途中の移動は車のようだったんだが、町ではほとんど泊まっていないみたいなので移動用の家を持っているのかもしれないなと判断した。

 かなり大きめの収納バッグを持っており、収納魔法も使えるようになっているみたいだったからな。まだ20歳前というのに収納魔法まで使えるようになっている時点でその知識力と能力は評価に値する。


 王都にやってきたとの連絡を受けた後、夕方には手紙を持ってきていた。翌日に本人の確認してもらい、屋敷に来てもらったが、ほんとに若くて驚いた。


 このあと資料の説明をしてもらったんだが、たしかに知識量がすごかった。ファンの書かれている内容をちゃんと理解していなければ答えられないようなことまで説明してきたのには驚くばかりだ。ファンが数日相手をしたというのもうなずける。時間を十分にとれたファンの立場がうらやましい。

 できるだけ仕事を片付けておいたが、やはり午後からは執務をしなければまずいため、午前中に講義を行ってもらうことにした。食事の時にも話を聞きたいため屋敷に泊まってもらったんだが、孫達がなつきすぎて食事中に話があまりできなかったのは残念だった。


 二人の関係はファンにも聞いていたので強引に一緒の部屋に押し込めた。二人とも好き合っているのに先に進めないと言っていたからな。多少強引だが、少しは前に進んでくれるといいと思ったが、残念ながらたいした進展はなかったみたいだ。まあ、まだ若いからこれ以上ちょっかいを出すのはやめておいたがな。


 結局1週間ほど滞在してもらったが、かなり有意義な時間を過ごすことができて満足できた。孫達がかなり寂しそうにしていたのがちょっと困ったが、正直あそこまでなつくとは思わなかった。見たこともないおもちゃをもらって喜んでいたしな。

 ただ浮遊の魔法はやめてほしかった。お付きのメイドが驚いていたからな。古代の魔道具でもかなり貴重なものまで持っているとは思わなかったぞ。息子達もねだられてかなり困っていたからな。

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