103. 異世界464日目 盗賊たちの後始末

 洞窟の中なんだが、結構ちゃんとした住処という形になっている。壁も造られており、かなり長い間活動していたのだろうか?まあ車とかまで持っていたくらいだからね。

 部屋の広さや置いているベッドなどの数を考えると盗賊の人数は15人前後と思われるので13人を倒したことを考えたらほぼ討伐は完了したと思っていいのではないだろうか?他に外出している仲間もいるかもしれないけれど、主要メンバーは討ち取ったとみていいだろう。

 リーダーも強さや装備を見る限りでは襲われたところで最初に倒した人と思う。スキルを結構もっていたからね。まあリーダーだけ別行動だったということはあまりないだろう。


「もし仲間がいて戻ってきたら面倒なので必要なものだけ回収したら場所を移そう。」


「その方がいいわね。」


 魔道具をセットして盗賊の生き残りを警戒しながら洞窟内を捜索して行く。まずは浄化魔法をかけてから遺体を回収し、使えそうなものを収納バッグに入れていくが、装備関係はほとんど低~並レベルなので今の自分たちには使えるものはなさそうだ。

 食材や魔道具などの他、少し貯め込んでいたお金や宝飾品なども回収していく。今回は触らなくても鑑定できるので選別はかなり楽だった。


 一通り荷物を確認して回収したあと、捕まっていた二人にも洞窟の外に出てもらい、車に乗ってもらったところで拠点に火魔法を打ち込んで焼却しておく。

 さすがに何かされることはないと思うんだが、何かあってからでは遅いので、ジェンには後ろの席に乗って見張ってもらうことにした。こればかりは彼女たちも仕方がないと割り切ってくれたので助かる。




 車で1時間ほど走ってある程度離れたところでいったん休憩を取って遅めの昼食をとる。この間に遺体を取り出して装備を剥がし、遺体は焼却処分をしておいた。移動の途中で彼女たちのことを色々と聞いてとりあえず彼女たちの住んでいた町に向かうことになっている。



 彼女たちの名前はミルファーとスイートというらしく、ここから少し離れたサクランという町に住んでいたようだ。二人は幼なじみの25歳で、ミルファーさんはすでに結婚していた。

 1週間ほど前に友人の結婚式に参加するため、ミルファーさんの夫のカルサイオさんと3人で移動することとなったんだが、資金節約のために乗り合いの車を使うことにしたらしい。知り合いの紹介だったんだが、それが盗賊の車だったようだ。おそらくその知り合いが盗賊の仲間だったんだろう。

 1日目は問題なく過ごしたんだが、二日目にこっちのルートに入って休憩中に襲われてしまったようだ。夫のカルサイオは殺されてしまったが、二人は閉じ込められて毎晩のように慰み者にされていたようだ。


 ただ盗賊達も無茶をするつもりはなかったらしく、睡眠や食事、シャワーなどはちゃんとさせてもらえたことでなんとか精神は保っていたようだ。また避妊用の薬は服用していたので子供の心配は無いようだ。

 この後どうなるかわからないが、とりあえずはいったんサクランの町に戻りたいと言っているので連れて行ってあげることにした。




 さらにそこから2時間ほど走ってなんとか日暮れ前にトレアルマという小さな町に到着した。まずはツインの部屋を二つ取って彼女たちには部屋で休んでもらうことにした。ジェンには宿に残ってもらい、自分は役場に行って盗賊退治のことを話す。



 受付に行き、盗賊の身分証明証を提出すると数名は指名手配されていた人たちだったみたい。今回の経緯も説明し、町に協力者がいた可能性が高いことも説明しておいた。役場と盗賊がつながっていなければ協力者も捕まるだろう。

 あとはカードから被害のあった人たちが判明し、各所に連絡が行くようだ。自分たちの殺人履歴についても証明してもらっておく。


 懸賞金は全部で13万ドールとそれほど高くなかった。実際の被害があまり判明していないせいかもしれないが、それでも十分な額と言っていいだろう。すでにお店は閉まっていたので、装備関係などの売却はまた後日にまとめてするしかないだろう。車とかは大きな町じゃないと無理だしね。



 宿に戻ってジェンと話をする。


「ジェン、二人はどんな感じ?」


「だいぶん落ち着いてきているわ。夕食は部屋で食べてもらうことにしたので宿に言って差し入れしてもらっといたわよ。」


「ありがとう。役場で聞いてきたんだけど、盗賊にさらわれた女性は精神的にやられてしまっている事も多くてその場合はサポートする施設があるみたい。ただ、今日話した限り大丈夫そうなので彼女達の意思に任せればいいみたいだけど、どうするかねえ。一応役場でも相談に乗ってくれるみたいだけどね。」


「夕食の後で聞いてみましょう。」


「あと、盗賊のところで手に入れたお金は渡そうかと思っているんだ。遠慮するかもしれないけど今後のことを考えても資金はあった方がいいと思うしね。」


「まあ、状況を見てから提案しましょ。余計なお世話と思われるかもしれないしね。」


「日本だと、こんな状況になってしまうと周りから白い目で見られてしまって同じところには住めないと言うことが多いんだけどそのあたりは大丈夫なのかな?彼女たちの精神的なことも気になるし。」


「やっぱりそのあたりは問題があるみたいだわ。夫が亡くなっているわけだし、盗賊に襲われたと言うことを隠すわけにもいかないと思うの。」


「やっぱりそうだよなあ・・・。」


「本人達は陵辱されたことについてはまだ割り切っているみたいだからなんとかなりそうだけど、そのことで周りから変な目で見られることがつらいみたい。スイートさんは結婚を前提とした彼氏もいたみたいだけど・・・。」


「そこは自分たちにはどうしようもないからねえ。」


「どっちにしろ家に戻ってから考えないといけないようなので、町に戻るしかないわね。」


「ああ、場所は確認したんだけど、多分明日の昼過ぎにはサクランの町に到着できると思うよ。」



 宿で夕食をとり、シャワーを浴びてから彼女たちのところに顔を出す。


「少しは落ち着いたでしょうか?」


「ええ、ありがとうございます。おかげでゆっくりできました。」


 どうやらスイートさんが対応するようだ。スイートさんは先ほどよりは落ち着いた感じなんだが、ミルファーさんは先ほどよりちょっと顔色が悪いような気がする。やはり夫が殺されたことが響いているんだろう。


「ジェンに少し話を聞きましたが、サクランの町に戻ると言うことでよいですか?」


「はい、もし手間でなければお願いしたいと思います。かかった経費はあとでお支払いしますのでよろしくお願いします。」


「お金のことは気にしなくていいですよ。どうせ通り道なので。お金を払われると逆にこっちが気を遣ってしまいます。」


 しばらく押し問答が続いたが、納得してくれたようだ。


「明日の朝食の後で出発するつもりです。おそらく昼過ぎには到着できると思いますよ。」


「わざわざすみません。ほんとうにお礼も何もできなくて申し訳ありません。」


「それじゃ今日はゆっくり休んでください。」



 部屋に戻ってからジェンと話をする。


「大丈夫なのかな?」


「今はまだ気が張ってるけどしばらくしたら悪化するかもしれないわね。特にミルファーさんはちょっと危なそうね。あとは戻ったあと、周りの人たちにどこまで話をするかね。」


「自分たちは何も言わない方がいいよね。」


「そうね。でも遺跡の調査が終わったら帰りにも寄ってみたらいいかもね。」


「それはまたあとで考えよう。」


 とりあえず今の自分たちには送ってあげることくらいしかできない。よく知らない自分たちよりは知り合いにケアを頼んだ方がよいと思う。ただよく話しに聞いたのは閉鎖的な社会ほどこういうことには厳しいみたいだからなあ。他の町に移住とかした方がいいのかもしれないね。このあたりも一応提案しておこう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る