94. 異世界422日目 北の魔獣達

 朝食はついていないので、収納バッグに入れていたサンドイッチと飲み物で済ませる。最近いろいろと買っているせいでちょっと食べていかないと収拾がつかなくなっているのである。食事だけでも100食以上あるんだよなあ。つい珍しい食べ物とか見ると買ってしまうのが悪いところだ。


 特に宿に荷物を置いて行く必要はないのでチェックアウトしてから町の外へ。車に乗って1時間ほど走ったところにある森へとやってきた。途中拠点を立てるのに良さそうな場所も確認済みだ。さっそく索敵をしてから狩りを開始する。



 やはり他の冒険者も多いのでなかなか狩りをする場所がすぐに見つからない。まあ高階位の人たちになってくると索敵しても場所はわからなくなりそうだけどね。

 あまりに近いと魔獣の取り合いになるので、変にもめ事は起こしたくない。もっと奥に入ればいいのかもしれないが、どんな魔獣がいるかもしれないのにいきなり奥に入るのも怖すぎる。


 重量軽減魔法と広範囲の索敵があるので、かなりの速度で移動して冒険者のいないエリアを見つけ出す。とりあえずこのくらい離れれば大丈夫だろう。隠密の高いパーティーがいたらそのときは諦めよう。




 今までも狩ったことのある牙猪や巨蛇などに加え、こちらでしか見ない白兎や氷狼も倒していく。解体は後回しにして倒した魔獣は収納バッグに入れておけるので効率よく狩りができる。


 牙猪や巨蛇はさすがに手強いが、単体なのではめ殺しができるので大丈夫だ。油断しなければ無傷で倒すことができる。まだこのあたりは知能が低いので基本的にまっすぐ突っ込んでくるので攻撃が読みやすい。良階位の魔獣との差は攻撃力と言うよりは知能の差が大きい。さらに全部がそうではないが、魔法耐性が高いことと魔法を使ってくるのが怖いところだ。


 氷狼は集団生活しているので注意が必要だ。大体10匹くらいの群れを作っているので遠方からの攻撃を中心にやらないと危ない。

 先制攻撃されるとまずいので索敵で見つけた後は魔力を貯めながら近づいてジェンとの二人で範囲攻撃を仕掛ける。これである程度のダメージを与えられるため、残った個体も機動力が落ちるので順番に倒していける。土魔法で分断もできるしね。


 白兎や白蛇も今まで倒したことのある魔獣とあまり差がなかったので特に問題なし。毒はそれほど強くもないしね。


 ある程度素材のことを考えながらなので戦闘に時間がかかるのはしょうがないところかな。毛皮など素材として使われるものは体にできるだけ傷つけないように頭を中心に狙わないといけないので面倒なのである。まあそれをできるくらいなのでまだ余裕はあるんだけどね。


 4時半まで狩りをしてから拠点を出す場所に戻る。このあたりはまだ日没も早いので気をつけなければならない。




 拠点を取り出してからまずは魔獣の解体に取りかかる。今回は白兎3、氷狼9、牙猪1、巨蛇2、白蛇1という感じだ。巨猪を倒せたのはかなり大きいな。

 新しい魔獣は解体魔法が使えないので解体は自分でしなければならないが、白兎と氷狼は3匹目から魔法でできるようになった。系統が近いものは結構すぐにできるようになるからな。

 きちんと解体できるようになっていたら、すぐに解体魔法でも解体ができるようになるはずなんだが、自分たちは安全をみて2回はきちんとできることを確認してから使っている。ちゃんとできていない状態で魔法を使うと、解体結果が怪しいものになるからね。


 出てきたゴミは火魔法でまとめて灰にして、残った骨などは土に埋めている。森の中に投げておけば魔獣が処理してくれたりもするんだが、余裕があればできるだけ土に埋めるなどの対応をするようにいわれている。



 解体をしてから夕食にとりかかるが、今回は蛇肉の唐揚げだ。蛇肉の唐揚げはなかなか美味しくて気に入っているものだ。今回の白蛇の肉はいつものよりも脂が多くて美味しかった。寒いので脂肪を貯めているのかな?



 こっちの世界ではあまり鳥肉を見ることがない。そもそも簡単に狩ることのできる鳥の魔獣が少ないのがその理由である。

 飛行する魔獣は基本的に良階位以上の強さで地上にいる限り見かけるのはかなり珍しい。魔獣側の食糧として襲われることもあるが、人間よりはもっと効率の良い魔獣が対象となるので襲われるのはよっぽど運が悪いということになる。ただしこちらが飛行している場合は遭遇率も高く、攻撃されやすいようだ。


 飛べない鳥もいるが、これらは南の方の大陸にしかいないため、このあたりでは見かけない。魔獣ではない普通の鳥はいるが、食べる肉部分が少ないため需要に供給が追いついていない状態だ。

 このため出回るのは鴨のような鳥肉となる。ただ鴨は飼育されて卵の方が優先されるので、この辺りでは鳥肉はどちらかと言うと貴重な部類に入るし、卵は鶏みたいに毎日産むわけではないようなので飼育はしているが卵もまだ高い部類に入ることからこちらも値段が高くなっている。



 食事の後はハーブティーを飲みながらしばらく寛ぐ。最近は魔道具で音楽をかけたりもしているので、どう考えても野営ではないな。防音についても魔道具で音が漏れないようにしているしね。




 このあと2日ほど狩りをしてからいったん町に戻ることにする。大物は初日しか倒せなかったが、白兎、氷狼、白蛇の他に白大蛇を倒すことができたのでまずまずの成果だろう。

 白大蛇は巨蛇くらいの大きさなんだが、すばしっこくて狙いが定まらなくてなかなか当たらなかった。しかも毒を吐きだしてくるので結構危なかった。事前に情報があったので水の盾で防御したからよかったけどね。下手に盾で受けると盾の方がやられてしまう。



 夕方に町に戻ってからまずは役場に行って買い取り対象の牙猪と白大蛇だけを買い取ってもらう。他のものはお店で買い取ってもらったが、3日間の収入は2万5千ドールとなかなかの稼ぎだった。良階位の魔獣を狩っていたときよりは収入は下がるが、あれは今の階位だと特殊な結果だ。


 前も宿泊した北の大地という宿に行ってお風呂に入ってさっぱりしてから今日は部屋でくつろぐ。なんだかんだ行っても連日の狩りだと疲れがたまってくるなあ。


~魔獣紹介~

白兎:

上階位中位の魔獣。寒い地域の森に穴を掘って生活しており、雪の中も歩きやすいように足が大きくなっている。耳が大きく、音に敏感なため、先に見つけるのは難しい。牙兎とよりも一回り大きく、真っ白な体をしている。

獲物を見つけると一気に突進してくるが、その突進力のまま鋭い牙でかみついてくるため、最初の突進を止めることが重要。ただし雪が積もっているところでもかなり俊敏に動くことができるため、積雪している状態では危険度が高くなる。

素材としての買い取り対象は肉となるが、残念ながら肉の価値はかなり低い。その代わり毛皮の需要は高いため、できれば傷をつけずに手に入れたい。


氷狼:

上階位中位魔獣。寒い地域の草原や森に多く生息する狼系の魔獣。集団行動をすることが多く、多いときは10匹を超える群れになることがある。群れの数に比例して脅威度は変わり、10匹以上だと上階位上位~良階位下位と脅威度が一気に高くなる。

牙や爪が鋭いため攻撃には注意が必要。集団で襲ってくる場合は連携してくるため、リーダーと思われる個体を優先して倒した方がよい。遠距離攻撃の手段があれば遠くから攻撃して群れを分散させることが有効となる。個体により水魔法を使うものがいると報告が上がっている。

素材としての買い取り対象は上顎の牙と毛皮となる。肉は固く、臭いもきついため食用にはされていないが、食べることは可能。


白蛇:

上階位下位の魔獣。寒い地域の草原や森に生息している蛇の形をした魔獣。大きなものは大人の身長くらいになる。通常の蛇と異なり、冬でも冬眠をすることはない。

毒はもっていないが、鋭い牙を持っているので気をつけなければならない。腕や足などに巻き付かれるとなかなか剥がせないが、そのときは落ち着いて頭を攻撃しよう。隠密のスキルを持っているのか索敵に引っかかりにくく、雪が多い地域では雪に同化して見えにくくなるため発見が遅れることがある。

素材としての買い取り対象は皮と肉となるため、素材確保の場合は頭を潰すのが一番よい。ただし皮は上手に処理を行わないと買い取り対象外となるため、自信がないのであれば専門家に任せる方がいいだろう。肉は脂分が多く、他の蛇よりも高級とされる。


白大蛇:

上階位上位の魔獣。寒い地域の草原や森に生息している蛇の形をした魔獣。大人の身長くらいあり、大きなものはその2倍の大きさになる。体周りも大きなものは500ヤルドに達する。

 鋭い牙を持ち、体を巻き付けて獲物を絞め殺してから丸呑みする。体も大きく目立つため、突然襲われることは少ないが、動きも素早く、変則的なため攻撃する際には注意が必要。完全に体に巻き付かれてしまうと、一人では抜け出せないため、巻き付かれそうになった場合は地面を転げ回り、逃げ出すようにしよう。雪が多い地域では雪に同化して見えにくくなるため発見が遅れることがある。

また毒を吐き出してくるので、正面には立たないようにした方がよい。かなり強力な毒で、目に入ると失明する可能性もある。また金属系の装備は腐食されることがある。

素材としての買い取り対象は皮と肉となるため、素材確保の場合は頭を潰すのが一番よい。ただし皮は上手に処理を行わないと買い取り対象外となるため、自信がないのであれば専門家に任せる方がいいだろう。肉は脂分が多く、他の蛇よりも高級とされる。

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