56. 異世界247日目 久々の狩り

 最近まともに狩りに行っていなかったので今日は狩りに行くことにした。というのも3ヶ月依頼を達成できていないと冒険者のカードが休止状態になることを思い出したからだ。もちろん特別依頼の受領中であればまだ免除されるようだが、今回の依頼がちゃんと達成できるかもわからないので討伐記録は必要だろう。

 もちろん上階位だから上階位の魔獣でないと依頼達成とはならない。一応低いレベルでも実績ポイントにはなるんだけどね。


 休止状態になっても過去の実績は消えないんだが、手続きに数日かかることと、更新費用が取られてしまうという罰則のようなものがある。更新費用は階位が上がるとその金額は大きくなり、並階位だったら1000ドールでいいんだが、上階位となるとなんと1万ドールである。

 事前に休止手続きをしていたら、更新手続きだけでいいんだけど、それでも数日はかかってしまうらしい。良階位以上だと年単位になるのでそうそう忘れることはないらしいけどね。


 一応狩りに行く場所はおおよそで見当をつけていたのでその辺りは問題ない。サクラでもほとんど狩りはしていないし、こっちにきてからすぐに図書館に詰めていたのでまともに狩りをするのはほんとに久しぶりだ。明日のこともあるので今日は少し早めに上がったほうがいいだろう。



 いつものように重量軽減魔法を使ってから移動すること30分で狩り場に到着。身体強化も付いてきたし、重量軽減魔法もかなり効率よくなってきたのでかなり早くなった。通常だったら1時間コースだもんなあ。



 やってきたのは上階位レベルの魔獣が生息する地域で、近くに水場もあるので、鰐や蛇や蛙や亀みたいな魔獣が対象だ。今まで倒したことのない魔獣なので解体には少し時間がかかりそうだ。まあ面倒なのは収納バッグに入れて後でまとめてやってもいいしね。


 大きな湿原のようなところで、ところどころ木々も茂っている。魔獣は水の中に身を潜めていることが多いので見つけるのが大変らしいが、索敵を使えばあまり気にしなくていい。とはいえ、水に引きずり込まれるとちょっと面倒なので気をつけなければならない。


 しばらく歩いていると、魔獣の気配を察知するが、水の中なのかちょっとわかりにくい。自分たちの存在に気がついているのか水辺でじっとしているようだが、近くに行かないと正確な位置が分からない。

 ゆっくりと近づいていくと、何かが伸びてきて慌てて避けるが、足を取られてしまった。ジェンがすぐに対応してくれて、足に絡まっていたものを切り落としてくれたので助かったが、危なかった。

 どうやら伸びていたのは蛙の舌だったみたいで、舌を切られた蛙が怒っているのかこっちに飛びかかってきた。狂蛙という大きさが子犬くらいある蛙のような生き物だが、目玉が飛び出していてちょっと気持ち悪い。


「ジェンありがとう。しかし、油断したらダメだね。」


「そうだよ。ゲームじゃないんだから、死んだら終わりだからね。」


 地上に出てきたら、特に問題もなく無事に討伐。皮を剥ぎ取るが、肉は食べられないらしい。


 舌が絡まれたときに手と足を少し怪我と毒を受けていたんだが、治療と回復魔法ですぐに回復。こういうときに治癒魔法を使えるというのはやはり助かるなあ。

 大きさはあまり大きくはないんだが、毒をもっていることからもわかるように、毒で獲物を倒してから少しずつ食べていくという魔獣だ。人間サイズだとそこまで強烈には効かないが、麻痺毒なのでやられて生きたまま食べられるとか考えたくない。


 気になったのでとどめを刺す前に鑑定して見たんだが、やはり隠密スキル-2を持っていた。やはり魔獣のレベルが上がってくるとこういうスキルもレベルの高いものを持ってくるので気をつけないといけない。



 このあとは初階位の大蛙、並階位の大蛇、牙亀、狂蛙、上階位の大鰐、巨蛇を倒していくが、手強いというより、足場があまり良くないので戦いにくいという感じだ。さすがにあちこち怪我をしたり、毒や麻痺を受けたりするので治療しながら退治していく。


 巨蛇を相手したときに足を滑らせて体に巻き付かれたときは危なかった。完全に巻き付かれる前になんとか逃げられたから良かったけど、巻き付かれたら攻撃もできなくなるので危ないんだよなあ。巻き付かれる前に転がってなんとかなったけど、泥だらけになってしまったよ。これって浄化魔法がなかったらしゃれにならないところだった。


 大鰐はどう考えても形がおかしかった。鰐の頭だけの生物みたいだったんだもんなあ。一応体もあるんだが、口の中でかなりの部分を消化しなければならないらしい。思ったより顎の力も強いみたいで怖かったけど、動きが遅いのが救いだった。



 今回の討伐であらためて治癒や回復魔法が使えて良かったと思う。もしなかったら薬代が半端ないからね。まあそうだったらそもそも来てないか。毒や麻痺を使ってくる魔獣は治癒士がいないパーティーにはかなり不人気なので自分たちにはいい狩り場となる。今回は他のパーティーを見かけないからね。

 あまりに魔獣が増えてくると討伐依頼も出るようなんだが、それでも受ける人は少ないようだ。ここも結構魔獣が増えてきているので討伐依頼が出るかもしれないね。



 3時間ほど狩りをしての成果は大蛙15、狂蛙5、大鰐2、大蛇15、巨蛇5、牙亀6と言う結果となった。素材になるのは大蛙の肉、巨蛙の皮、大鰐の肉、大蛇の皮と肉、巨蛇の皮と肉、牙亀の甲羅だ。単価は安いが、十分持って帰られる量なのですべて持って帰る。まあ解体スキルのレベルアップにもなるしね。



 狩りの時にはかなり泥だらけになってしまうんだが浄化魔法があるのでとてもありがたい。これがなかったら防具とかも傷みが早くなりそうだ。今回も浄化魔法をかけると、後には土の塊が残るだけなのでかなり楽だ。



 町に戻ってから素材を売り払うが、収納バッグがばれないように取り出すのは面倒だった。まあ一応その辺りは秘密にしてくれるとは思うけど、現時点ではできるだけリスクは避けたい。収入は6300ドールと結構な金額となった。

 このあと役場に行って討伐記録を確認してもらう。前の討伐が2ヶ月前だったのでとりあえずはしばらく大丈夫だな。今回の討伐記録を見て係の人は喜んでいた。やはりあのあたりに狩りに行く冒険者はほとんどいないらしいので、時間があるようだったらできるだけ行ってほしいと言われる。




 このあと屋台に出ているものを適当につまみながら町を散策。市場の方にも足を伸ばしてみると、港町だけあって多くの魚が並んでいた。カニやエビもあるんだが、ここではそんなに高くはないみたいだ。どうもゲテモノ扱いらしい。おいしいと思うのにねえ。


 ということで夕食にはカニを食べることにした。ズワイガニのような蟹だったのでとりあえずボイルしたものと焼いたものを準備してもらう。早速食べてみると特に地球で食べた蟹と違和感もなくおいしかった。たらふくカニを食べて値段はなんと二人で150ドールである。日本が高いだけだったのかな?


 今日は気分的にシャワーを浴びたくなったのでシャワーを浴びてさっぱり。浄化魔法で落ちているとはいえ、泥をかぶっているという事実があるとなかなかなあ・・・。明日の予定を確認してから眠りにつく。


~魔獣紹介~

大蛙:

初階位上位の魔獣。水場のあるエリアに生息している蛙の形をした魔物。子犬ほどの大きさで通常は水の中で獲物が通るのを待っている。

舌の長さは1キヤルドくらいで獲物を水の中に引き込もうとするが、小さな動物くらいしか引きずり込むことはできない。それでも人間も引きずり込もうとしてくるため、舌を持って引っ張り出せば簡単に退治することができる。

素材としての買い取り対象は肉のみであるが、1匹あたりから得られる肉の量が少ないため、野営の時に食べてしまうことも多く、野営の時の食料代わりに狩る冒険者も多い。

通常の蛙とは異なり、最初から蛙の姿をしており、オタマジャクシから生長するわけではない。


狂蛙:

並階位上位の魔獣。水場のあるエリアに生息している蛙の形をした魔物。子犬ほどの大きさで目玉が飛び出して水面に目だけを出して獲物を待つ。さらに隠密スキルを持っているのか索敵に引っかかりにくいため水の中から突然攻撃を受けることもあるので注意が必要。

舌は3キヤルドくらいまで届き、体は小さいが足場を固めているため思った以上の力で引きずり込まれる。また舌から麻痺毒を注入することができるため、体が若干しびれてしまう。

舌に巻き付かれたときでも油断しなければ逆に水の中から引っ張り出すことができる。舌を押さえてしまえば逃げることもできないため最初の油断さえなければ討伐は容易と考えられている。

素材としての買い取り対象は背中の皮の部分となるため、討伐の際はおなかの方を狙うとよい。肉は毒を持っているため食べることはできない。


大鰐:

上階位下位の魔物。水場に近い草原や岩場に生息する体の大半が鰐のような顔の魔獣。大きさは犬くらいであるが、口がかなり大きいため、油断すると手を食いちぎられることもある。

体の大半が口となっていることからわかるように動きが遅く、攻撃力は脅威であるが、討伐はそれほど難しくない。ただ飛びかかってきたときにかまれないように籠手やブーツなどで防御しておかないと危険。

素材としての買い取り対象は下顎の部分の肉となるが、食べるところはかなり少ない。ただし味はよいため量の割には単価が高い。


巨蛇:

上階位中位の魔獣。水場に近い草原や岩場に生息する蛇の形をした魔獣。大人の身長くらいあり、大きなものはその2倍の大きさになる。体周りも大きなものは500ヤルドに達する。

 鋭い牙を持ち、体を巻き付けて獲物を絞め殺してから丸呑みする。体も大きく目立つため、突然襲われることはないが、動きも素早く、変則的なため攻撃する際には注意が必要。完全に体に巻き付かれてしまうと、一人では抜け出せないため、巻き付かれそうになった場合は地面を転げ回り、逃げ出すようにしよう。

素材としての買い取り対象は皮と肉となるため、素材確保の場合は頭を潰すのが一番よい。ただし皮は上手に処理を行わないと買い取り対象外となるため、自信がないのであれば専門家に任せる方がいいだろう。


牙亀

並階位中位の魔獣。水場に近い草原や岩場に生息する亀の形をした魔獣。大きさは犬くらいで鋭い牙でかみつき攻撃をしてくる。弱い毒を持っているので注意が必要。動きは鈍いが首から上の動きは素早いのでできるだけ首のない方からの攻撃が有効。

反撃を受けると手足首を甲羅の中に入れることもあるが、ひっくり返すと、下の方には甲羅がないため、楽にとどめを刺すことができる。

素材としての買い取り対象は甲羅部分で、防具の素材に使われることがある。肉は毒が含まれているため食用にはできない。

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