50. 異世界225日目 ヤーマン建国祭

 今日は建国祭で祝日となっており、基本的にお店は休みなんだが、客相手の商売をしているところはやはり開けているらしい。

 建国祭と言うことで王宮の一部が開放されて国王からのお言葉があるようだ。せっかくなので行ってみようと思っていたんだが、半端ない人の数でちょっと後悔してしまう。


 まあせっかくだからと人の流れに任せて開放されている王宮の中央広場へと入っていく。中に入ってからしばらくすると正面の建物に国王以下、王族の人たちが姿を現した。なんか日本の正月にもあるようなイベントだな。遠くてよく見えないんだが、魔道具らしきもので、空に映像が出ているので助かる。



 現在の国王はクマライアス・ヤーマンという名前で40歳らしい。国王には第一王妃、第二王妃、第三王妃までおり、子供のうち、長女はすでに嫁いだみたいなので今並んでいるのは5人だ。長男、二男、三男と次女、三女だろう。その中で長男が皇太子となっており、すでに妻が2人もいて、子供も男の子がいるようだ。おそらく長男の横に並んでいるのがその妻達だろう。


 ちなみに王妃はすべて貴族出身というわけではなく、最近は平民から選ばれた人の方が多いらしい。たしか第二王妃はもと冒険者だったはずだ。まあ貴族という身分もほとんど形骸化しているみたいだからそんなものなのかな。

 他に一緒にいるのは4つの州の領主の4人のようだ。オーマト、アーマト、ターマト、ラーマトの州都の名前ががそれぞれの家の名前らしいが、詳しい名前までは知らない。年齢は30~50歳くらいか?


 「小説ならきっと次女か三女と関係ができるところだな。」とか考えていると、ジェンにいきなりつねられた。


「王女を見ながらにやにやして何を考えているのよ。」


「いやいや、別に変なことじゃなくて、よくある異世界小説だったら次女か三女が襲われているのを自分が助けて王族と関係ができるなあ・・・と思ったんだよ」


「たしかに、ありがちね。」


 同意してくれたところを見ると異世界ものの小説は結構読んでいたんだろうな。



 魔法で声を大きくしているのか、広場全体に響く声で国王から言葉が発せられる。この国がどのようにして興り、どのようにして維持してきたのかの説明の後、今後の国の方針に関する演説だ。歴史については少し誇張されている感じもするが、まあしょうがないだろう。30分ほどの演説の後、大きな拍手の中を王族の人たちは退場していった。




 町中に戻ると、あちこちに屋台が出ていたので、いろいろと食べながら町をうろつく。この間ののみの市よりも屋台の数は多く、舞台が作られて演劇なども行われていた。


 広場では音楽が演奏されており、ダンスエリアみたいになっていた。それを見たジェンは早々にその中に飛び込んでいった。音楽に合わせて好きに踊っているんだが、さすがに踊りの素養があるせいかかなりレベルが高い。

 ジュースを飲みながら眺めていると、興奮したジェンに引っ張りこまれるが、あまりにもレベル差がありすぎてちょっと恥ずかしいよ。

 しばらく踊った後、「久しぶりに踊った~~~!!」とかなり楽しそうにしていたので文句も言えなかったけどね。



 そのあと別の場所で楽器の演奏をしているところがあったので聴いていく。さすがに聴いたことのないメロディーばかりだ。しばらく演奏を聞いてから、少しお金を入れて行く。


 使っていない楽器が置いているなあと思っていたら、「演奏に自信がある方はやってみませんか?」と声がかかる。そんな人はそうそういないだろうと思っていると、ジェンが出て行った。久しぶりに弾いてみたくなったらしい。


 バイオリンのようなものを手に取ってから、音を聞いたり調整したりしてから弾き始めた。自分は知っている曲だったんだが、こっちでは聞いたことがない音楽だったらしく、演奏をしていた人たちも驚いた表情でジェンの演奏を聴いていた。

 5分くらいの演奏を終えると、周りから割れんばかりの拍手があった。演奏していた人たちもジェンの弾いた音楽がかなり気になったらしい。アンコールがかかったため、もう一度ジェンが演奏をしていた。

 演奏の後でいろいろな人から「あなたが曲を作ったのか?」とか「どこで習ったのか?」と聞かれていたが、適当にごまかしたようだ。


 ちなみにバイオリンよりもピアノの方が得意らしいが、こっちにあるピアノのようなものはちょっと鍵盤が違っていて弾くのは厳しいらしい。もし本当にやるのなら特注で作るしかなさそうだね。

 バイオリンも調整がきちんとできなかったからおかしなところが結構あったらしいが、それほど耳が肥えていない自分にとっては十分なレベルだったと思う。



 このあとも屋台のゲームや食べ物を楽しみながら練り歩き、宿に戻る。建物の中ではコンサートや演劇とかも行われていたらしいが、外で行われているものを見るだけでも十分な内容だった。

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