9. 異世界5日目 剣と魔法で狩りへ
目覚ましをセットしていたんだが、予定の時間には起きられなくて寝過ごしてしまった。やっぱり昨日は精神的に結構疲れていたんだろうか?まあ寝たのも遅かったからかもしれない。
今日の朝食は魚とご飯も選ぶことができた。この間のカレーのときのご飯とは違って日本のお米に近い感じである。まあそれほどお米が恋しいわけではないんだけど、やっぱりたまには食べたいよね。醤油も出ていたんだが、ちょっと味が薄い気がするのは地域性かな?
今日も町の周辺の狩りに行くことにした。魔法を使うのであれば杖を持ったら効果が上がるようなんだが、杖や魔法補助の効果のある装備はとにかく高い。対費用効果はあるのかもしれないが、そこまではさすがにかけられないのであきらめる。
この間と同じような林の中を探索しながらスライムを狩っていく。だいぶ剣の扱いにも慣れてきたので特に油断しなければ問題はない。
途中で見かけた角兎には遠くから魔法を使って攻撃を試みるがそんな簡単には当たってくれない。まあそう簡単にはいかないよね。ちなみに角兎は角と肉が買い取り対象らしい。
何度も試しているうちに魔法の精度も上がってきたのか大分当たるようになってきた。とはいえ、威力も無いので当たるだけで倒すことなどはとてもできない。夕方近くになってなんとか角兎の足にうまく当たり、動きを止めることができたので一気に近づいて仕留めることができた。よしよし。
スライムに比べるとさすがに殺したことに少し抵抗があったが、まあいつも食べている肉とかも同じように殺されたものだからと割り切っている。ゴブリンとか人型だとやはり躊躇してしまうのかねえ?
魔獣のリストを見る限りは動物のようなものしか載っていないので人間のように生活基盤やちゃんとした道具を使ったりする知性のあるものはいないように思われる。付近にいない魔獣についても簡単な案内は載っていたんだが、それにも知性を持った魔獣は載っていなかったからね。ファンタジーの定番である竜はいるようだけど、知性はあるのかな?
個人的にはゴブリンやオークもちゃんとした生活基盤や文化を持っていれば人間と同じだから、よくある狩りと言うよりは種族間戦争という方が合っているように思うのは自分だけだろうか?女性をさらってというけど、過去の人類の歴史を見ても同じようなことは行われていたよね。
ゴブリンだから、オークだから、人間じゃないから殺しても問題ないというのはかなり危ないことのような気がする。まあそういう風に設定されたゲームとか小説が基になっているのでその設定を使う話が多いんだろうけどね。
まあ知性を持った魔獣がいないのであればそれはそれでいいんだけどね。とりあえずオークに襲われる女騎士とかそんな展開はないと言うことだね。
ほんとは血抜きなどしなければ肉に匂いがついて臭くなるようだが、さすがに解体できる自信がない。すぐに持って行けばなんとかなるかな?ゲームとかだとボタン一つで解体してくれるんだけどねえ。
冒険者のほとんどは解体スキルやある程度自動で解体をすることのできる魔法解体スキルを持っているらしいけど、10日間での取得はさすがに無理すぎる。小さい頃に父の実家の田舎で鶏とか裁いていたのを見ていたから抵抗は少ないんだけど、実際にやるのは別問題だ。
とりあえず首に切り込みを入れてある程度血抜きだけをしてから持って行くことにした。あまり長い時間やって血のにおいで魔獣が寄ってこられても困るしね。
角兎は役場の買い取り対象ではないので解体店で解体してもらうしかない。解体店はチェックしておいた公認の解体店に持って行く。角兎は人気食材みたいなのでどこでも解体は行ってくれるようだ。
やはりきちんと血抜きなどをしていなかったせいで買い取り金額は低くなるようだがそれはしょうがないか。それでも角と肉の買い取りで50ドールをもらうことができた。
ちゃんと解体までして渡すと1匹あたり最高80ドールになるらしい。それでもスライムと併せて今日の収入は80ドールくらいだ。まあ普通に働いた方が収入は多いだろうね。これだと宿代も出ないよ。
本気で狩りで収入を得ようと思ったら角兎だったら10匹くらいは狩らないといけないし、解体しなければならないからかなり時間的にも厳しそうだ。それ以前に10匹もうまく見つけられるかが問題だ。まあそのせいであの辺りは狩りをする人を見かけないんだろうけどね。あまりにも単価が低すぎだ。
まあ初階位の冒険者は冒険者業だけで食べていけるというのがそもそも間違いだからね。もともと冒険者になる人は成人する前から剣や魔法を使えるように訓練をやっているもんだし。
なにかいい情報でもないかと役場に行ってみると、この間会った冒険者のクーラストさんとアマニエルさんがいて、二人もこちらに気がついて声をかけてきた。
「おう、ジュンイチだったかな?冒険者登録をしたのか?」
「ええ、あの翌日に冒険者登録をして今日も狩りに行ってきましたよ。」
「そうか、頑張っているみたいだな。夕食は宿でとるんだろ?飲み物くらいおごってやるぞ。」
そういって宿に戻ってからそのまま夕食となる。今日の夕食は牛肉のようなステーキとサラダとパンだった。ジュースをおごってもらい、食事をとりながら二人から色々と教えてもらう。
話してくれる内容は町にあるお店や付近の狩り場の情報などいろいろと為になることが多い。狩り場については他の初心者にも教えているんだがと前置きしつつも、付近で狩りに向くエリアや過去に手に入れた薬草の場所なども教えてくれた。
最初に適当に声をかけた人達だったんだが、かなり面倒見のいい冒険者だったみたいである。ユータ達も二人のことは知っていたからね。冒険者としては上階位だが、冒険者になりたてのころにはお世話になった人も多く、高レベルのパーティーでもいまだに慕っている人が結構いるらしい。まあ階位が上がって見下している人もいるらしいけどね。
シャワーを浴びた後、部屋に戻って今後のことを考える。残りは最終日を入れて5日間。とりあえずやってみたかった狩りや魔法を使うことは体験できた。あとは回復関係のスキルを手に入れて目の治療を少しでもできればいいかな?
~クラーエルSide~
おれはクラーエルというパーティーを組んでいるクーラストだ。冒険者になって15年近くなるが、上階位から上がれない程度のしがない冒険者だ。相棒のアマニエルとは冒険者になってからずっと一緒に行動している。
残念ながら自分たちの実力はこのくらいだと諦めてしまえば気分は楽になった。定期的に遠征をして魔獣を狩ったり、近くの町への護衛を受けたりしているので、それなりに貯蓄もしてきている。
それぞれ彼女もいるんだが、不安定な仕事と言うこともあってなかなか結婚まで決心できない。冒険者としてもう少し頑張ってみたいといってずるずると引き延ばしてもう5年以上付き合っているあいつには悪いとは思っている。
冒険者になってすぐに無茶をして命を落とす若い奴らが気になって、ウザいと思われるかもしれないが、いろいろと助言をしてやっている。場合によっては一緒に狩りに行ったりもしているが、そういう奴らが俺たちよりも上の階位になっても悔しいと言うよりはうれしいと思うようになってきた。
階位が上がって見下してくる奴らもいるが、良階位とかになってもいまだに俺たちを慕ってくれている奴らも多い。俺たちがやっていたことが認められたんだとちょっとうれしくなってくる。
最近、宿の食堂で声をかけてきた若いやつがいたんだが、次に会ったときには冒険者になっていた。まだソロでやっているようだが、話を聞くと、スライムや角兎など無茶をせずに狩りをしているらしい。
泊まっている宿といい、装備といい、初階位にしてはえらく羽振りがいいのはどっかの坊ちゃんなんだろうか?冒険者の過去は詮索しないのがルールなので聞きはしないが、礼儀も正しいし、なかなか見所がありそうだ。最初に声をかけてきたときもビールをおごって情報を得るあたり、商家の息子とかだろうか?
今後冒険者として活動して行くにはソロではきついのでパーティーメンバーを見つけるように助言はしておいた。いいメンバーが見つかるといいんだがな。
~魔獣紹介~
角兎:
初階位下位の魔獣。森や草原に穴を掘って生活しており、スライムや蜘蛛などを主食としているが、草も食べる雑食の魔獣。耳が大きく、音に敏感なため、警戒心が非常に強い。魔獣ではあるが、好戦的ではなく、大型の魔獣や人間を見るとすぐに逃げる。見た目と違って体毛は堅い。
額に角があるが、攻撃用の武器としても使うことができるが、穴掘りの時に使うのが主目的とされている。
近づく前に逃げられてしまうため、弓や魔法による遠距離からの攻撃が有効。穴に逃げ込まれてしまうと捕らえるのは不可能。穴に煙を吹き込んで捕まえる方法もあるが、穴の出入り口も多く、かなりの労力が必要となる。
素材としての買い取り対象は角と肉となる。角は薬の材料や工芸品に使用される。肉は値段が安いが、味もいいため人気が高い。
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