第15話 Epilogue



 この事件から10年の後、ミケーレの姿は見かけられなくなった。

 最初の2、3年はそうでもなかったが、8年が経った頃には、教会にもほとんど姿を見せなくなった。年に1度か2度、依頼を受ける程度になったのである。

 さらに2年が経つと、教会でミケーレを見た者は誰もいなくなった。



 マリアはミケーレが姿を消した3年後、教会を辞めた。

 最後にマリアを見送った者は、あれほど嬉しそうな彼女を、これまで見たことがない――と後に語っている。

 事実、その時にマリアが浮かべた微笑を、その人物は生涯、忘れることはなかった。



 マリアが職を辞した半年後、教会である事件が発覚した。

 ミケーレとマリア、2人の写真・画像・映像といった物がすべて消去されていたのだ。復元やデータのサルベージが出来ないほど、完膚なきまでに消されていた。

 一部では、マリアが犯人ではないかと目されたが、断言出来るほどの証拠もなく、すでにマリアとは連絡が取れなくなっていたので、事の真相は闇の中であった。


 管轄部署の担当者たちは、その失態を上には報告せず、揉み消した。彼らの当時の上司は戒律や規則に厳格な堅物として知られた人物で、その上司が転属するまで、失態をひた隠しにしようと決めた。彼らは自分たちへの懲罰を恐れたのだった。

 その内に彼ら自身が、秘匿したこと自体を忘れた。



 55年後、マリアと面識のあった最後の修道士が老衰で亡くなった。

 結果、教会において、マリアの顔を知る者は誰もいなくなった。

 マリアが教会を去って以降、これまで、2人を目撃したという報告は挙がっていない。


 ただ――時折り、人々の噂に上ることがあった。

 1組の男女の噂である。

 奇怪な事件が起こると、稀にかかわってくることがあるらしい。その2人が出張ってくると、事件はあっさり片が付くというのだ。

 その噂を聞く度に、マリアと仲が良かった前述の修道士は、身内を褒められた好々爺のように嬉しそうに微笑んでいたそうである。



 伝えられる女性の容姿は、眩いばかりの金色の髪をした、とても美しい女性だったという。


                                  完



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il vampire illimitato ―原初の吸血鬼― 赤伊 正広 @ditd

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