第55話魔王?

俺達は辺境から魔王城を目指した。


途中何人もの魔族が立ちはだかったが、全て撃退した。


そして、魔王城へ辿りついた。


魔王城は人、いや、魔族はいなかった。おそらくもう俺達を阻む魔族はいないのだろう。


魔物はいたが、魔族と魔物ではでは力のレベルが違う。


今の俺達にとって、魔物は既に敵ではなくなっていた。


魔族や古龍エンシャントドラゴン、それだけが、俺達の敵となり得る。


俺は既にレベル90に達した。イェスタもだ。


エリスとアルベルティーナもレベル85になった。


そして、魔王が座すと思われる部屋の扉を開けた。


そこには、漆黒の魔族がいた。


そして、


「良く来たな、勇者よ。名を聞こう」


「俺は勇者では無い」


「お前は魔法使いだろう? 私はそこの剣士に聞いている」


「私は従者イェスタ、虚数魔法使い様の従者です」


「なんと、では、勇者は堕ちたか?」


魔王は虚数魔法使いの事を知っているのか?


「魔王よ、虚数魔法使いを知っているのか?」


「知っておる。勇者堕ちる時、虚数魔法使いが目覚める、と、魔族に語り継がれておる」


勇者が堕ちる時、虚数魔法使いが目覚める?


俺は勇者のスペアか?


「全く、お前達人間は我らにとって災厄じゃ、我らが力をつけると、勇者が現れる。我らが何をした? 我らは主らを食らったりはせぬぞ」


「あなた達は存在自体が人類の敵なのです。あなた達がこの世界で力を得ると、私達人間の世界のネイピアの均衡が崩れます。だから我らはあなたを倒さなければならない」


さすが、アルベルティーナ、俺達が何故、魔王を倒す必要があるか知っている。


さすが、正義厨。


「やはり、知っておるか。では、戦うのみだな」


「はい、女神様より託された戦いです。覚悟を」


エリスは何故そんな事を知ってるのだろうか?


「魔王よ、さっきの問いに答えてなかったな、俺の名前はレオンだ、お前のおかげで、俺の幼馴染と妹が死んだ。お前には死んでもらう、悪く思うな」


俺達は一斉に動いた。


イェスタが『エクスカリバー』を、エリスが国王より下賜された『ミュルグレス』を、アルベルティーナが国王より下賜された『アヴァロンの杖』をかざす。


俺はアリシアが使っていた『一期一振いちごひとふり』を鞘から抜いた。王はこの刀の所有を許してくれた。


戦いは5時間にも及んだ。魔王は少しづつ、力を削がれた。


そして、


「我が敵を滅ぼせ『ダムド』」


俺の無属性近距離魔法が魔王の腹の中央にある核を捉えた。


魔王の黒い核が壊れると、突然、魔王の体にヒビが入った。


そして、魔王の体は細かい粒子となり、キラキラと輝き、消えていった。


「終わったのか?」


「勝ったのね」


「レオン様勝ったんですか?」


「レオン殿、流石です」


俺達は勝利した。魔王を封印するのでは無く、滅した。


何故虚数魔法使いは魔王に勝利できるか?


俺は判った。魔王にはほとんどの属性の魔法が効かない。


アルベルティーナの攻撃魔法はほとんど効果がなかった。


魔法使いは、援護のみ、そして、エクスカリバーも、ミュルグレスも、『一期一振いちごひとふり』も、魔王の核を破壊出来なかった。


唯一、効果があったのは俺の無属性魔法だった


第5の魔法だけが、魔王の核を破壊できる手段だったのだ。


だが、アルべルティーナが唐突に言い出した。


「......これは魔王じゃないぞ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る