第54話征途

俺達は旅の支度を行い、王都を出征した。


旅立ちにあたり、国王は出征パレードを行った。


飢饉のおり、如何なものかと思われたが、実施された。


それは国民に希望を......


国民は勇者が堕ちてしまった事を既に知っている。


エリアスは何度も出征したが、すぐに帰って来てしまっていた。


彼は魔王討伐の旅より、都での豪奢な生活を好んだ。


時間はあまりない。魔王は力をつけている。


宮廷魔術士マリアの見解では、この飢饉も魔王の力が増大した為という、早急に魔王を倒す必要がある。


☆☆☆


馬車が出発した。そして、王城の門が開く、俺達は民の前に姿を現した。


勇者に代わる新しい英雄。それが俺達だ。


馬車は屋根が無い、国民に俺達の姿を見せる為だ。


エリスとアルベルティーナは絵になる。


俺は厨二感満載で、おそらく賢者的な何かと思われているだろう。


その代わりにイェスタが先頭に立ち、エクスカリバーを鞘から抜き、天に剣をかざす。白銀に輝く剣、イェスタを纏う金色のベール、イェスタの容貌もあり、多くの国民が期待しただろう、新しい英雄に。


歓声が挙がった。


☆☆☆


俺はイェスタに象徴としての英雄を丸投げすると、エリスに話しかけた。


一つ確認したい事があった。


「エリス、一つ聞きたい事があるんだ」


「なんですか? レオン様?」


「エリスはエリアスの事を前から知っていたんじゃ無いか? 勇者パーティに入る前から」


「はい」


エリスは下を向いた。


「私を嫌いにならないでください。エリスはエリアスと幼馴染でした。14才まで平民として王都に住んでました。その頃、一緒によく、遊びました。エリアスとマリアと3人で......」


「エリス、エリアスは君の事に気がついていたのか?」


「いえ、おそらく気がついていません。エリアスは私を人として、扱ってはくれませんでした。よく、見る事もしてくれなかった。いつか気がついてくれたらと思いましたが、奴隷の私から話すのも気が引けて、話しませんでした」


「あの、馬小屋で俺を癒してくれたのはエリアスのした事の贖罪だったのか?」


「はい、エリアスがした事は察しがついてました。レオン様には申し訳なくて......でも、エリスはあの頃からレオン様が好きだったんですよ。だって、エリアスはマリアの事が好きで、エリスの事は見てくれなくて、それに、レオン様はあの頃のエリアスにそっくりだったんですもの」


「......エリアスと」


「......ごめんなさい」


「いや、それより、あの時、突然唇を奪って悪かった」


「好きな人としかしませんよ」


「ありがとう。エリス」


俺はエリスの手を握った。


そして、俺は黙り込んだ。


エリアス、お前がエリスに気がついていたら、エリスはお前を癒したかもしれない。


俺は運命の歯車に気が遠くなった。女神様あなたはどうしてこんなに糸を絡めるのですか?


エリスは俺を癒してくれた。エリアスがエリスに癒されていれば......


そんな事を思ってしまった。


いや、止めておこう、それは俺とエリスが結ばれない物語だ。


☆☆☆


「厨二、その、妹さんの事ごめんな」


「何を謝ってるんだ?」


「私はベアトリスさんの最後の2時間を彼女と話した。私は最初、アーネの仇を笑ってやろうと思った。だけど、あの子、とても人を殺める様な子に見えなかった。あなたの事、すごく聞かれた。あなたの活躍、とても聞きいってたわ。あの子が『魅了』の魔法の犠牲者だと知って、納得がいった」


「だけど、君が謝る事ではないよ」


「私、あなたを傷つけたと思う。あの子が立ち塞がったら、って、私、言った」


「気にしてないよ。今は、魔王を倒して二人の名誉を回復したい、それに協力してくれるんだ。こちらの方こそ感謝するよ」


「それこそ気にしないで、正義の味方は趣味だから」


「はは」


アルベルティーナらしい発言に思わず、笑ってしまった。


「また、レオン様はアルベルティーナ様にちょっかい出してる」


「いや、エリス、だから違うって」


俺は、弁解するのに大変だった。エリスは結構、嫉妬深いのだ。


「レオン殿、いい加減、代わってもらえぬか?」


イェスタが苦言を言い出した。


「真の英雄はレオン殿だ、私はあなたの従者だ。これではまるで、私が英雄の様に見える」


「別にいいんじゃ無いか?」


「そうですよ。イェスタさん似合いますよ」


エリスがしれーと言う。それ、俺があんまりかっこ良く無いって意味?


「レオンだと絵面が悪いだろ」


アルベルティーナは直球で喧嘩売って来た。


腹がたったので、俺も先頭に立って見たが、どうも観客受けが悪かった。


エリスとアルベルティーナは凄い人気だった。


二人が先頭に立ったら、かなりの歓声が挙がった。


二人とも綺麗だからな。ファンクラブとか出来るかもしれないな。


と言うか、俺、人気無い。一応、英雄なんだけど、多分、誰も俺の事覚えていないと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る