第53話招聘
俺はしばらく呆けていた。あまりにもショックだった。
エリスが必死に俺に声をかけてくれる。
エリスの声は、少しづつ、俺を癒してくれる。
だけどもう少し、時間がかかりそうだった。
そんな時、国王から呼び出された。
俺とエリス、イェスタ、アルベルティーナはマリアに連れられて、王城へ向かった。
国王と謁見する。王は、以前より少し、力無く見える。
「レオンよ。すまなかった」
国王は頭を垂れた。信じられない事に奴隷の俺に頭を下げた。
「私は過ちを犯した。罪の無い者を死罪としてしまった。心からお詫びする」
王はさらに頭を垂れた。
「......国王陛下」
俺は国王に何も言えなかった。国王の謝罪、王の精一杯の謝の気持ちだろう。
だが、二人はもう、帰ってはこないのだ。
「レオン、先日、剣豪、アリスが自害した」
「剣豪が自害?」
「あの娘は子供の頃からの婚約者がおった、3ヶ月前、婚約者がアリスを、取り戻しにエリアスに迫った。そして、エリアスに決闘を申し込んだ。だが、エリアスはアリスに決闘をさせた」
「そ、それで、その幼馴染は?」
「アリスは幼馴染を殺してしまった。エリアスに笑顔で褒美をせがんだ」
「そ、そんな」
「だが、その時、たくさんの者が見た。アリスは涙を流していたと」
俺は思い出した。ベアトリスは涙を流していた。アーネを殺めた時に、
「それは、エリアスの?」
「その通りだ。エリアスの『魅了』の魔法だ。謹慎中に、『魅了』が解けたのであろう、アリスは自身が殺めた恋人に謝し、自害した」
「......エリアス」
「私はたくさんの過ちをした。エリアスの悪行を看過した事、そなたの幼馴染と妹を刑に処した事、エリアスを謹慎という甘い処置をとった事、そなたにした事を考えると心苦しい、だが、私には願いがある」
「なんでしょうか?」
「魔王を滅ぼして欲しい。御伽噺であろうと、私はそなたを信じる。勇者エリアスに魔王封印の栄誉等、授けとう無い、頼む」
王はまた、深々と頭を下げた。
「承知しました。必ず、魔王を討伐します」
「聞いてくれるか? 我、願いを?」
「その代わりに、お願いがございます」
「なんだ、かまわん言ってみよ」
「アリシアとベアトリスの名誉を回復してください」
「それだけで良いのか? 褒美でもなんでも用意するぞ」
「二人は墓も無く、両親からも疎まれているのです。二人にどうか、心の安らぎを」
「わかった。お前にとって、それが一番大事な事なのだな」
「はい。みんな、俺に力を貸してくれ!」
「主よ、我剣はあなたの物だ」
イェスタ!
「エリスはいつもレオン様と一緒です」
エリス!
「私も一緒に行くぞ。止めても無駄だからな」
アルベルティーナ!
「ありがとう、みんな」
エリスも、イェスタもアルベルティーナもみんな来てくれる
呆けていた俺は覚醒した。
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