魔獣店の主、学院学士に責められること

 往診途中の金角羊横町、マギ魔獣店に人だかりあり。私も野次馬に加わる。


 小柄な少年が店主に苦情を訴えていると思いきや、どうもれっきとした学院の学士が魔獣取り扱い許可証の確認に来たものらしい。

 聞けば、タロスの甲羅に金属を人為的に多量装飾する手法の残虐性や、幼虫時代に肉食である万華蝶の軽率な扱いが、環境へ及ぼす悪影響などを語って店主を責めている。


 そこで私が仲裁し、弱り顔の主人が証書の保管場所を忘れたというのを保証した。店主とは付き合いが長いので、そんなことだろうとは思った。

 自己紹介すれば、どうやら相手は私を知っていたようす。三日以内に学院へ証書を持参し確認することで同意。騒ぎは解散となる。


 少年ではなく少女だったかもしれない。十代前半らしいのに、書士ではなく学士の襟ピンだったのには驚いた。

 魔獣環境学の発展で商売が狭くなる、とは店主のぼやき。私としては、人と魔獣の共生のため、ああした優秀な学徒に出世してほしい。すると店主は恨めしげに睨んできたが、結局二人して吹き出した。


 まだ子供の学士先生の、舌鋒鋭かったこと!


 実際、将来楽しみだ。国の未来が明るく思えた一日だった。

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