第41話 フライアウェイ!
『××さん。昨日の楽土町動物園で起こった騒動について、どうお考えですか?』
『そうだね。どうも檻の鍵が開いてたのが原因ってことでしょ? 管理はどうなってたんだ! って指摘したくなるよね』
『それが檻の鍵を開けたのはどうも部外者の方のようなんです。しかも、ライオン小屋の飼育員をはじめとして、飼育員を数名殺害してから犯行に及んだと』
『えっ!』
『動物園のスタッフ、水族館のスタッフ、合わせて計五名が被害にあったそうなんです。そしてその事件を起こした部外者の方々は、とある団体に所属しており……』
テレビから昨日の騒動についてのニュースが流れてきた。
あの騒動から一夜明けた今日。僕は総合病院の待合室ソファーに座り、雫ちゃんの検査が終わるのを待っていた。
タイミングよく彼女が戻ってくる。隣の席に座った彼女に、僕は身を乗り出して尋ねた。
「どうだった?」
「うん……色覚異常の一種じゃないかって」
「色覚異常」
「もしくは、カラーコンタクトの使い過ぎで色素付着したのかもって」
「髪の毛は?」
「赤外線や美容院で染めたときのダメージと、元々の遺伝子が重なって、とかなんとか……詳しくは他の病院で調べてもらった方がよさそうだって」
雫ちゃんは渡されたという専門病院の紹介状を取り出した。けれど僕が見る前に千紗ちゃんがそれを奪い、あっという間に破いて丸めて近くのゴミ箱にストンと放り投げた。
ナイッシュー、と笑う千紗ちゃんに雫ちゃんは肩を竦める。怒ることはなかった。
どんなに設備が整った病院で検査をされようが意味はないと、彼女も薄々気が付いているのだろう。
僕達が集まっているのは北高校の近くにある総合病院だった。
昨日の怪我を治療してもらうため。それと、千紗ちゃんと雫ちゃんの体の変化を見てもらうためにやってきたのだ。
待合室には老若男女多くの人が集まっている。黒や茶色や白の髪色を見てから、横に座る雫ちゃんに視線を戻した。
彼女の髪は深みがかって分かりにくいものの、やはり青い色をしていた。眼鏡越しの目も同じ青色。この間まで彼女が持っていた黒色は気が付けばどこにもなかった。
カラコンの使い過ぎも、美容院で染めたせいも、ありえない。
生真面目すぎる彼女はコンタクトさえしたことがないのだ。色素が付着するはずがない。
「千紗ちゃんはもう検査受けたの? 随分早かったんだね」
「簡単なやつだけな。長引くと採血とかされるかもしんねえだろ。反応出てバレちまう」
「あ。あー…………」
千紗ちゃんの妙な答えに、僕と雫ちゃんは納得して頷いた。意味を分かりたくなくても分かってしまう。
「黄色と青色、イエローとブルーか。変身したときのあたし達とお揃いだな」
千紗ちゃんはくすくすとわざとらしく笑って、それから、で? とゾッとするくらい強烈な怒りをあらわにした顔を上げた。眉間に血管が青く浮き出ている。
「何も関係ないとは言わせねえぞ。説明しろよ妖精ども」
前の席に座っていた
マスターはマスクの下でケンと一つ高い咳をする。チョコは苺ミルクのパックをジュッと啜り、分厚い唇をぷるぷる震わせた。
こうして見ると風邪で診察に来たご老人と、糖尿病で入院中のおじさんにしか見えない、というのは言わないでおこうと思う。
「代償も払わず変身できると思ってたの?」
「は?」
いかにも驚愕と言いたげに眼をぱちくりさせたチョコは、肩を竦めてストローを齧った。
「何の苦労もなく利益を得ようだなんてできるわけないじゃないか。君達は魔法少女というとんでもないパワーを手に入れた。その代償は払ってもらわなくちゃ」
「この副作用が魔法少女になるための代償だってのか? なんだよそれ。説明されてないぞ」
「当たり前のことだから理解しているとばかり」
「ふざけんなっ。クーリングオフだクーリングオフ!」
「覚えたての言葉を使いたがる子供みたいだなぁ。どっちにしろもう遅いさ。魔法少女のクーリングオフ期間は三日以内。君は最初に変身してから二、三か月はたってるだろ?」
千紗ちゃんがソファーを乗り越えてチョコに掴みかかろうとする。僕と雫ちゃんは慌てて彼女を止めた。グルル、と喉から獣のような唸り声が聞こえてくる。
「ふ、副作用って言ったって……髪と目の色が変わる副作用なんて、聞いたことないよ」
「そもそもその力は『魔法少女になるための力』だからね」
チョコの額の脂がてらてらと光っている。肉に埋まるつぶらな瞳が怯える雫ちゃんを捉え、説明を続けた。
「『魔法少女になるために作られた力』なんだ。普通の女の子が可愛くて素敵な魔法少女になるためにはどうすればいいか、と考えて作ったものだ。変身したときに髪や目が綺麗な色に変わるように配合されているんだよ」
「じゃあなんでその影響が、変身していない今現れる?」
「まだ未完成だから。調整が上手くいっていないんだ」
「そうかい。未完成の力であたし達は変身してるってわけか。それってあれだよな。実験動物みたいだよな」
「そうだね」
チョコが丸い腹を抱えて笑った。千紗ちゃんが振り上げた拳を止めようとしたけれど、間に合わなかった。
しかし振り下ろされた拳はチョコに届かない。横から突き出されたステッキに弾かれて、千紗ちゃんの拳は空を切った。ステッキを振ったマスターはそのままくるりと回転させ、ついでとばかりに先端でチョコの眉間を叩いた。
「更に言えば。君達に現れている副作用はそれだけじゃない」
「はっ?」
「思い当たることはないかね? 近頃自分の体に起きているおかしな変化を」
マスターの言葉に反応したのは雫ちゃんだった。彼女は何かを思い出したように顔に影を落とし、自分のお腹をそっと擦る。
「気のせいだと思ってたんだけど……。わたし、最近凄くお腹が減るの」
「デブ」
「違うよっ! そういうのじゃなくて、ちゃんとご飯三食食べてるのに、すぐにお腹減っちゃって。夜中に空腹で起きて、こっそりお米炊いて食べちゃったり……」
「ブタ」
「だからっ!」
「夜飯少ないんじゃねえの? 夜中に米炊いて食うってやべえな。何杯食べてんだよ」
雫ちゃんは言いづらそうに唇を食んで指を三本立てた。三杯もかよ、と千紗ちゃんが肩を揺らして笑う。
「…………三合」
「三合!?」
僕達の声が待合室に響く。いくつかの咳払いが返ってきて、慌てて口を押さえた。
三合といったら茶碗に六杯以上は盛る計算になる。それだけの量をまさか一度で食べきるなんて。しかも、ちゃんと三食を食べた後に。
予想以上の量に僕は目を丸くして彼女の体を眺めてしまう。彼女の体はいたって標準体型だ。痩せすぎでも太りすぎでもない。胸、は……結構大きい方だけれど……それだけの栄養が全ていっているようには……いや…………。
「み、湊くん…………」
「うっわキッショ」
ハッと我に返った僕は、こちらをじっと見つめている女子二人を見てぶわっと大量の汗を浮かべた。顔を真っ赤にしてふるふると震えている雫ちゃんから慌てて視線を反らせば、今度はその隣に座る千紗ちゃんを直視してしまう。
雫ちゃんとまた違って彼女は大分細身である。筋張った骨が突き出した肘や膝に肉感はほとんどなく、どちらかというと筋肉質に見えた。雫ちゃんのように大食いになったとは考えられない。
「おいセクハラ野郎。見物料五百円な」
「ばっ!なっ!ちがっ、そういう意味じゃ…………すみません!」
千紗ちゃんはニヤニヤ笑いながら肩を竦め、あたしは別に腹空かせてねえよ、と答えた。
「普段と食事量が変わった気もしない。飯は飲むゼリーがあれば十分だ」
「それもそれでどうかと思うけれど」
「あたしは特に体の変化はないみたいだな」
彼女はそう言った。けれどマスターは首を横に振った。
「いいや。君にも変化はあるはずだ。よく思い返してみるといい」
「うるせえな。だからねえっつってんだろ。殺すぞ」
「それさ」
「は?」
「君は以前と比べて、自分が暴力的になったとは思わんかね」
苛立ちを押さえようとソファーを引っ掻いていた千紗ちゃんは、はたとその動きを止めた。ソファーの皮は彼女の鋭い爪で小さく抉れていた。
僕と雫ちゃんは思わず顔を見合わせる。言われればなんとなく心当たりはあった。
以前彼女達が三人でお出かけしたとき、面倒な人達に絡まれて大暴れをした千紗ちゃん。その後僕が千紗ちゃんの家に行ったときに見たボロボロの部屋……。
「魔法少女ブルーの症状は暴食、魔法少女イエローの症状は憤怒、といったところか」
「七つの大罪みたいだね」
「五人死んでね?」
マスターの言葉に僕達は適当なことを言ってあははと笑った。現実逃避だった。
ふん、と千紗ちゃんが鼻を鳴らし、ソファーを引っ掻く代わりに床を踵でトントンと叩く。
それからぐっと仰け反ってソファーの後ろを覗き込み、そこでうずくまって泣いているありすちゃんに笑った。
「じゃ、お前はどうなんだよ。ありす」
ありすちゃんは両手で隠していた顔をパッとあげた。
病院に来てからずっとソファーの後ろに隠れて泣き続けていたありすちゃんの顔は、涙と鼻水でそりゃあもう酷いことになっていた。
「いや゛! 注射なんか絶対に打たない!」
「だ、大丈夫だよ。お注射はしないよ。ちょっとお医者さんにお話聞いてもらうだけだから。ねっ?」
「やあぁだあぁーっ!」
「うるせえなぶん殴るぞ」
「コラ千紗ちゃん身を乗り出さないの。ああもう、こんなに顔汚して……。ほらありすちゃんこっち向いて」
「んぶーっ。ズッ!」
ありすちゃんの顔をティッシュで綺麗に拭う。過保護、と千紗ちゃんが呆れたように言うけれど、こんなべしょべしょの顔で泣かれちゃあどうにも放っておけないのだ。
彼女のことを病院に呼び出したときは「皆でお出かけするのね!」なんてニコニコしていたけれど。それが皆で検査を受けるためなのだと知らされた途端、顔を真っ青にしてソファーの後ろに隠れ、ちっとも出てこなくなってしまったのだ。
騙したわね、と恨みがましい顔で彼女は僕達を睨む。涙でちょっと赤くなった目は、それを差し置いてもやはりピンク色に変色しているように見えた。春に咲く桜のようなほんろりとしたピンク色から、大粒の雫が丸い頬を伝っていく。
「なによなによ。昨日三人だけでお出かけしたって聞いて、置いていかれてとても寂しかったのに。今日は誘われてとても嬉しかったのに。病院で検査を受ける? 騙したわねっ」
「ごめんって。別に騙したつもりじゃないんだよ。昨日だって三人会ったのは偶然だったし」
「そんがいばいしょー? を要求するわ」
「覚えたての言葉を使いたがる子供がここにも!」
「損害賠償くらいもう少し早い年齢で覚えとけや」
これで許してよ、と僕はご機嫌取り用にさっき買った苺キャンディーを取り出す。ぱくりと口に入れた途端彼女は途端に頬を緩ませて「もっとちょうだい」と笑うのだ。ちょろすぎて、少し心配になる。
「あたしと雫の二人だけ副作用が現れて、お前だけ何もないってのはおかしいだろ。何かないのかよ?」
「なんにも」
「暴れるのが楽しくなったりは?」
「痛いのは嫌いよ」
「じゃあ食欲はどう?」
「昨日の晩御飯は生姜焼きだったの。ママの作る生姜焼きは味が濃くてご飯が進むのよ。でも、お茶碗一杯以上は食べられなかったわ」
お腹いっぱい食べた、と胸を張るありすちゃんの顔を僕はじっと見つめた。
彼女の髪と目の色も例外じゃなかった。髪は根元までしっかりピンク色だし、目も同じ。ただ彼女だけが他の副作用を自覚していない、ということに不安を抱く。
気が付かぬうちに症状が悪化することが一番恐ろしい。必ずどこかに症状があらわれているはずなのだ。
「でも色が変わるなんてラッキーね! 美容院に行かなくても済むもの」
「二人は元々その色に染めてたからいいかもしれないけど、わたしはやだよ……。先生に怒られちゃう」
「馬鹿かお前ら。そんな単純な話じゃねえだろ。副作用があるって最初に説明されてたら、魔法少女になんかならなかったよ、あたしは」
ありすちゃんがショックを受けた顔で千紗ちゃんを見た。けれど僕と雫ちゃんも同意見だった。
「これからわたし達どうなるの? 副作用って、これから変身するたびにどんどん悪くなっていくの?」
「今でこれだろ? 将来的にはどれくらいまで悪化するんだよ。雫は授業中でもラーメン啜るような女になって、あたしは目が合った人間全てに殴りかかるようにでもなるのか? モンスターだよそんなん」
「私はっ? 私は?」
「ありすは黙ってろ」
仲間外れね、とありすちゃんは不満げに膨らませた頬を僕の肩に乗せた。両手でその頬を摘まみぽひゅぽひゅ空気を抜いて構ってやりながら、僕は真剣に二人の会話を聞いていた。
二人の不安が会話の端に滲んでいる。余計な口出しはできなかった。あくまで僕は変身ができるわけでもない、ただの関係者でしかないのだから。
「どうにせよ悠長に魔法少女をやってるわけにはいかねえな」
「そうだね……」
「早いとこトップの聖母様をぶっ殺して、黎明の乙女を瓦解させてやらなきゃな」
「昨日の事件も黎明の乙女の人達のしわざなんでしょ? のんびりしてたら、またあんな酷い事件が起こっちゃう。それに副作用が悪化しちゃったら、わたし達見た目だけじゃなくて中身まで怪物になっちゃう」
「諤ェ迚ゥ?」
雫ちゃんがハッと青い顔をしてありすちゃんを見た。彼女はもにょもにょと口を動かして、不明瞭な声で彼女の言葉を反芻する。
「今なんて言ったの?」
「いや、違うの。わたしが言いたかったのは、えと、あのね」
「黎明の乙女。そうだよ。僕達、あいつらのことについてもっと調べないと」
僕は横から会話に割り込んだ。助け船を出された雫ちゃんはこくこくと頷き、そうだよ調べないと、とありすちゃんの疑問を絶つ。
「昨日の事件で黎明の乙女の存在は、世間により強く広められることになるだろう。根拠のない噂話が広まったりする前に正確な情報を手に入れて……」
「……………………」
「……千紗ちゃん?」
千紗ちゃんはいつになくぼんやりとした目で雫ちゃんの顔を見つめていた。声をかけるとハッと我に返り、焦った様子で苦笑した。
「あっ。ああ……そうだな。黎明の」
「黎明の乙女については君の情報が頼りになるところもあるだろうし」
「そうだな。あたしも昨日帰った後、ぼちぼち調べてみたけども」
「あいつらがどういう集団なのか改めて聞いておきたいんだ。君のお母さんはメンバーだし、内部の事情とかもあれば」
「あっ! 馬鹿っ、お前」
僕はパチリと瞬いて千紗ちゃんの顔を見た。あーあ、と肩を落とす彼女を見てからふと周りを見れば、他の皆はキョトンとした顔で僕達を見つめていた。
しまった。そうだ。彼女の家が黎明の乙女に関係していることを知っているのは、僕だけだった。
千紗ちゃんの振り上げた爪先が僕の脛を蹴る。ぐっ、と喉を詰まらせて痛みに悶えた。彼女は大きく溜息を吐き、観念したような顔で前髪をかきあげた。
「あたしの母親は黎明の乙女の信者なんだ」
「え!」
「あたしも小さい頃は、知らずに加入させられてたよ」
「え!」
「今はとっくに抜けてるけどさ」
皆が驚愕の声をあげた。千紗ちゃんはそれ以上何も言わせないとばかりに彼らを睨み、それ以上の説明はしなかった。
「だから黎明の乙女についてはお前らより多少詳しい。説明してやる」
彼女は煙草を取り出そうとして、病院であることを思い出して舌打ちをした。ありすちゃんが代わりとばかりにキャンディーを差し出すと、彼女はそれを口に放り、ガリボリと二口で噛んで飲み込む。
「黎明の乙女はな『全ての夢を叶えてくれる』集団なんだ」
僕達は揃って首を傾げた。その光景に千紗ちゃんが少し笑った。
全ての願いを叶えてくれる。その言葉の意味が、ちっとも理解できなかった。
「どんな宗教だって、信者がいる以上、教祖には何らかのカリスマ性があるってことになる。知恵があったり力があったり洗脳が上手かったりな。黎明の乙女の教祖は一番最後。と言っても拷問したり家族を人質に取ったりなんて悪質なことはしない。あいつは『どんな夢でも肯定してくれる』んだ」
「夢を馬鹿にしないってこと……? ミュージシャンになりたいって言っても現実を見ろとか言わなかったり、勉強が苦手だけど政治家になりたいって言っても応援してくれるとか」
「金銭面的な援助のことじゃないか? 留学費用や学費を援助する代わりに信者になってくれるよう頼むとか」
「大体合ってる」
千紗ちゃんは僕達の意見に頷き、補足する。
「『どんな夢でも』って言ったろ? なんでもいいんだ。ケーキを腹いっぱい食べるのが夢、一回でいいから万引きをしてみたい、超高級マンションにいつか住みたい、なんてのでも」
「それは……夢って言えるのか?」
「叶えてみたいと願ってるならなんだって夢なんだよ」
いいか、と千紗ちゃんは改まった顔で僕達を見つめた。黄色い瞳がつやりと光り、怪しい視線を滑らせる。
「夢ってのは平和なものばかりじゃない。世の中には『叶えてはいけない夢』ってのが存在する。さっきの万引きしかり、家に火を付けてみたいだとか、人を殺してみたいだとか。そういう夢を持つ人間は案外少なくない。そういう夢を持っている奴らがそれを叶えないのはどうしてだと思う?
規制されてるからだ。殺人は駄目、放火は駄目、っていう風に国で決められてるからだよ。だからそいつらは自分の夢を叶えてはいけないものだと諦める。今この世の中がパニックになっていないのは、そいつらが必死に自分を押し殺して我慢しているからだ。
だけど、黎明の乙女でならどんな夢だって叶えることができる」
「放火も殺人も? そんなのできっこないだろ」
「できるんだよ。昨日の惨事を忘れたか? あの信者達の夢は『捕らえられている動物達を解放してあげる』ことだった。ほら、どうだ。叶ってるだろ」
「夢が叶うというか、あれは自分達で夢を叶えたんだろ?」
「人は肯定に弱い。今まで周囲から否定されてきた夢に賛同してもらうだけで、自分の中にあったリミッターなんて簡単に緩むんだ。ずっと欲望を押さえつけていた人間なんか特にな。
だから思考がおかしくなっていく。夢は叶えるものなんだ!という大義名分を抱えて彼らは
待ってくれよ、と僕は首を振った。頭の奥が鈍い痛みにズキズキと震える。
「要するに洗脳されてるってことでしょ? だけど全員がそうってわけじゃない。理性的な人間だって何人かはいるはずだろ」
いくら耳障りのいい言葉を並べたって、要するに彼らがやっているのは洗脳だ。
一度かかった洗脳から逃れることは難しい。だからって、ただ夢を応援されただけでそんな簡単に犯罪を起こしてしまうことがありえるのだろうか。
「洗脳以外にもう一つ、理性のリミッターを外すものをあいつらは持ってるんだよ」
「何だいそれ?」
「薬物だ」
ぎゅっと喉の奥が閉じた。千紗ちゃんの言葉が、冷めたコーヒーのように苦く空気に絡む。
「聖母様は黎明の乙女の内部で薬物を配っている。依存性が高い強烈なものを、タダ同然の値段で! 一発で頭がぶっ壊れるくらい強烈なやつだよ。馬鹿みたいに判断力が下がった脳味噌に甘言を流し込まれれば人間はひとたまりもない。抗えた奴なんて……少なくともあたしは一人も見たことがないな」
千紗ちゃんがソファーから身を乗り出し僕の顔を覗き込んだ。今自分がどんな顔をしているのか分からない。
「本当は誰だって夢を叶えたいのさ」
「……………………」
「お前の夢は叶えることができるものか?」
僕の夢は、一度でいいから怪物の写真を撮ることだった。
どんな夢も叶えることができるというのなら。聖母様は、こんなにおかしな僕の夢さえ聞き届けてくれるのだろうか。
幸い僕は夢を叶えることができた。けれどそれまでは、ずっとこの夢に恋焦がれ、諦めようとしても諦めきれないでいた。
もしもタイミングさえ違っていたら。ありすちゃん達と合う前に、黎明の乙女に誘われていたとしたら。僕ははたしてその誘いを突っぱねることができただろうか……。
「わたし、喉乾いちゃった。飲み物買ってくる」
不意に雫ちゃんが立ち上がって待合室を出て行った。僕はその背中を目で追ってから、僕も行ってくると言って立ち上がる。
彼女は廊下に設置された自動販売機の前にぼんやりと立っていた。隣に立てばふっと顔を上げた雫ちゃんが、僕を見て微笑む。
「気分でも悪くなっちゃった?」
「ううん、違うよ。大丈夫」
彼女は何度か首を振った。待合室にも自動販売機はあったのに、彼女はそれをスルーして出て行ったのだ。
自分の分のコーラを買って、ついでに彼女の分のジュースも買う。ありがとう、と受け取った彼女はジュースを一口飲んで甘くなった溜息を零した。
「……夢を叶える集団、ってだけ聞いたら素敵な人達だと思うのにね」
「本当に」
さっきの話の続きだ。僕は薄く笑み、彼女の話に耳を傾ける。
「わたしも夢ならたくさんあるよ。絵本作家さんになりたいとか、もっと強気でかっこいい人になりたいとか。魔法少女になりたいっていうのもそのうちの一つだった」
「うん」
「…………黎明の乙女に入っていれば、ちゃんとした魔法少女になれたのかな」
僕はパッと彼女に目をやった。その視線は床に落ち、ここからじゃ髪に隠れてよく顔が見えない。
青い髪が白い病院の床に冷たく反射する。
「昨日晴が言ってたの」
彼女の声も冷え切っていた。
「『タコみたいな怪物に殺されそうになった。マジで無理、気持ち悪い!』って。昨日のことはぼんやりとしか覚えてないみたいだったけど、魔法少女の姿は、ちょうど見られちゃったみたい」
「で……でも雫ちゃんは、晴ちゃんを助けようとしたんだろ?」
「だけどわたしの気持ちなんかちっとも通じなかったよ。どんなに助けたいって思いがあっても、あの見た目じゃ誤解されて当然だよね。この上中身まで怪物になっちゃったら嫌だなぁ」
「でも…………っ」
「わたし魔法少女に憧れてた。世界を守るヒーローになりたかった」
でもね、と雫ちゃんはジュース缶を握る。強い力を込められた缶からペキッと音がして水滴が飛んだ。
「これから先何年もあの姿に変身しなきゃ駄目だって言われたら……辛いの」
聖母様を倒すところまでは頑張るよ、と付け加えて彼女はジュースを飲んだ。無理矢理作ったと分かる笑顔は痛々しかった。
握ったコーラの缶がぬるくなっていく。浮かんだ水滴が手の甲を滑って流れていった。
何も言えないまま僕達は廊下に立っていた。自動販売機を使おうとしている人がやってきて、雫ちゃんが端に寄った。そろそろ戻らなきゃと言う雫ちゃんに、不甲斐なさを感じたまま頷く。
「あれ」
そしてふと顔を上げた僕は、自動販売機の前に立つ男性を見て目を瞬かせた。雫ちゃんもつられてその人を見つめ、驚いた様子で声を名を呼ぶ。
「校長先生っ?」
ピタリと動きを止めたその人が、緩慢にこちらへと振り向いた。
少し乱れた髪にやつれた顔。ラフな白いシャツ。くたびれた印象を抱くけれど、その人は僕達北高校の校長先生だった。
校長先生は目を丸くして僕達をまじまじと見つめる。
「君達は…………」
「二年一組の伊瀬湊です」
「わたしは二年二組の雨海雫、です」
「そうか。北高校の、生徒…………」
校長先生は戸惑いを浮かべ、ぼんやりとした声で言った。僕達二年生にとって校長先生は檀上で溌剌と喋っているときの印象が強い。こうしてぼーっとしている彼を見るのは初めてで、なんだか戸惑ってしまった。
彼は困ったように首を擦る。その指が触れる首筋に、大きな目立つ傷痕ができていた。
「すまないね」
「え?」
「終業式の日は君達に大変なものを見せてしまった」
「あっ……いえ! そんな。お元気そうで何よりです」
僕と雫ちゃんは首を振った。確かにとんでもないものを見せられました、と笑い飛ばすような場面でないことは分かっている。
脳裏に浮かんだ血まみれの檀上の記憶を、慌てて振り払う。
「今日は怪我の具合を見に病院に?」
「実は今日が退院の日なんだ」
「じゃあ傷が塞がったんですねっ」
「……傷は早めに塞がったんだけれど、その後、短期間だけここの精神病棟に入院をしていてね。それの退院だよ」
空気が一気に重くなる。すみません、と僕と雫ちゃんは固い声で言って頭を下げた。校長先生は慌てて首を振り、僕達の肩を叩いた。
頭を下げながらふと動物園で鷹さんから聞いた言葉を思い出していた。
校長先生が薬物をやっているという噂。
短期間ではあったものの、頻繁に摂取していたせいで、重度の中毒になっているという噂……。
「どこにもいないと思ったら。二人ともここにいたのっ」
ぴょんと横から何かが跳ねてきて、雫ちゃんの体に抱き着いた。ありすちゃんだ。
彼女は寂しかったんだからと頬を膨らませて雫ちゃんの肩を食んでいたが、校長先生の姿に気が付き「だぁれ?」と首を傾げる。
「おい、どこまで買いに行ったんだよ。…………!」
後からふらりとついてきた千紗ちゃんが校長先生を見つけて足を止める。千紗ちゃんは目を丸く見開いて、不自然な動きで踵を返そうとした。けれどそれより先に校長先生が彼女を見つけ、あっと声をあげる。
二人は視線をかち合わせると、同時にサッと顔を反らす。それは随分と不自然な動きだった。
「ね。このおじさんだぁれ?」
「おじさんって……。校長先生だよありすちゃん。僕達の学校の校長先生。顔見たことないの?」
「校長先生!」上擦った声で笑ったありすちゃんは、ぎこちない千紗ちゃんと校長先生を交互に見つめ「お知り合い?」と首を傾げた。
二人の反応を見ているうちにとある考えが僕の頭によぎった。いやいくら何でも……とその考えを否定したくなったが、念のためにと二人の耳元に近寄って小さな声で話しかける。
「商売相手とかじゃあないよね?」
二人は答えなかった。けれどその肩がピクリと跳ねたのを僕は見逃さなかった。うっそだろ、と突き付けられる現実に頭を抱えて項垂れる。
「ち、千紗ちゃんっ。君、まさか学校で薬物を売ってた相手ってのは、校長せんせ……」
「声が大きいっ!」
勢いよく口を塞がれ、僕はジトリと千紗ちゃんを睨んだ。彼女は僕から思いっきり顔を反らし視線を合わせようともしない。
我が校の映画研究部で千紗ちゃんは薬物を撒いている。けれど今のところ、それが教師に発覚し退学になったことはない。彼女は上手く立ち回っているおかげだと言っていたのだが……校長先生に薬物を売って懐柔していたのだとすれば、多少の疑問も解決されてしまう。
「せ、生徒から薬を買うとか……何考えてるんですか…………」
「しかっ、仕方なかったんだ! 最初はただ生徒指導の一環として話を聞こうと部室に行っただけで。まさか出されたコーヒーに薬が入っているなんて……」
「千紗ちゃん!」
「うるせえな。お前らには関係ねえだろ。仕事のストレスが溜まってるみたいだったから、ちょっとリラックスできる成分足してやっただけじゃねえか。退院するなら記念に一つプレゼントしてやろうか?」
千紗ちゃんはまるで反省していない顔で校長先生の肩に手を置いた。けれど校長先生は首を横に振り、厳格な顔にしわを寄せる。
「いいや。せっかく死にそうな思いをしてまで薬を絶ったんだ。もうきっぱりと手を引こうと思うよ。薬からも、聖母様からも…………」
「聖母様?」
雫ちゃんが固い声をあげた。突然出てきた不穏な言葉にスッと空気が冷える。
僕と雫ちゃんの顔を見た校長先生は、「黎明の乙女を知っているのかい?」とやけに嬉しそうに声を弾ませた。
「君達も何か叶えたい夢があるのかい? 素晴らしい。あそこはいい場所だ。君達のような多感な時期の子供には、特にね」
校長先生はうっとりと目を細め、遠くを見るような声で語りだした。
自分がストレスに倒れそうだったときに手を差し伸べてくれた信者がいたこと。その人に誘われ、黎明の乙女のメンバーになったこと。非難ばかりされていた自分を温かく受け入れてくれた人達のこと。彼らに応援され、夢を追い求めようとしたこと。けれどそれに失敗し、今はとにかく苦しくてたまらない日々を過ごしていること。
「私は失敗してしまった。仲間にあれだけ応援されたのに、夢を叶えることができなかった」
恥ずかしい、と校長先生は重い溜息を吐いた。シワの寄った目が潤み、涙を隠すように彼は瞼を閉じる。
「もう二度と夢を追わないと決めたのだ。黎明の乙女とも縁を切る。こんな恥を抱えてすごすごと戻れるわけがないのだから」
「……退院したらどうするんですか?」
「また非難される日々が続くだろう。まあ、仕方ないさ。高校に恐ろしい怪物が現れたことも、死者が出てしまったことも、損壊した校舎の管理不足も、全て校長である私の責任だと言うのだから」
校長先生は諦めたように笑った。その笑顔があんまりにも痛々しくて、胸がズキリと軋む。
きっと校長先生はもう学校に戻っては来ない。元々対面で話す機会なんてなかったけれど、いざ話してみればただの優しい先生にしか思えない。そんな人がこれから味わうであろう苦労を思うと、このまま別れるなんて嫌だった。
それは、僕以外も同じ気持ちであったらしい。
「長々話して悪かったね。君達がどうか、穏やかな生活を送れるように祈っているよ」
校長先生は僕達に背を向けて立ち去ろうとする。出口に車を待たせているらしい。
その背に声をかけようとして、けれど何と声をかけたらいいのか分からなくて、僕は口ごもって立ち尽くす。
そんな僕の横を通り過ぎて、校長先生の腕を掴んだのはありすちゃんだった。
「待って!」
校長先生が振り向いた。ふわふわ揺れるピンク色の髪の毛を、ぼんやりと虚ろな目で見下ろした。
ありすちゃんはそんな校長先生の顔を下からまっすぐ覗き込む。彼女の目はきっと絶望なんて一度も映したことがないのだろう。美しい宝石のような光が瞬いていた。
「夢はね、諦めなくてもいいのよ」
校長先生がひくりと唇を引くつかせた。何を言っているのか、とその目が雄弁に語る。
「校長先生の夢ってなぁに?」
「それは…………」
「子供のときはどんな夢を持っていたの? どんな人になりたいと思っていたの?」
「子供の頃? ……そうだな。私は、教師になりたかった」
「先生?」
「君達のような若者を優しく厳しく指導し、未来へと導いていく。そんな大人になりたかった」
「素敵!」
ありすちゃんはパチンと手を打った。頬を薔薇色に染め、夢のように美しく微笑む。
「あなたの夢はとっくに叶っているのね」
「えっ?」
「だって校長先生はとても立派な先生よ。私達生徒のことをちゃんと見てくれる、かっこいい先生だわ」
「そんなことない……。私は、君達を危険に晒して……」
「私は校長先生が頑張っていたことを知っているわ。あなたはとても素敵な人よ。でも今の校長先生はとっても悲しそうな顔をしていた。そんな顔のままお別れしたくはないの」
ありすちゃんは息を吸う。柔らかな声が甘く校長先生の心を打つ。
「そんなに悲しい顔をするくらいなら、無理に夢を諦めようとしなくたっていいの! 何度だって夢にチャレンジしていいの! 諦めないで最後まで追いかけていいのよ! だから…………校長先生?」
校長先生は項垂れてぶるぶる肩を震わせた。うーっ、と低い唸り声のような声に混じって時折鼻を啜る音が聞こえる。僕達が心配に見つめる中で、何度か深呼吸をした校長先生はゆっくりと顔を上げた。
「君の言う通りだ」
校長先生はまた鼻を啜る。目元を擦る。拭いきれなかった涙がぼろっと一粒零れたけれど、僕達は誰もそれを指摘しなかった。
「指導する者が若者の前で諦めを口にしてはいけないな。君に教えられたよ。ありがとう」
「うんっ」
「君達はまだ若い。今後苦労することも多くなっていくだろう。けれど君達は……君達も、決して夢を諦めてはいけない。自分の夢を追って、どこまでも突き進んでいきなさい」
「ありがとう。校長先生も、夢が叶ったら教えてね」
「勿論。……君達に出会えて、よかった」
校長先生は深々と僕達に礼をした。僕と雫ちゃんも深く頭を下げる。千紗ちゃんとありすちゃんはそれぞれそっぽを向くか、思いっきり手を振るかのどちらかだったけれど。
部屋に忘れ物を思い出した、と校長先生は照れくさそうに笑って廊下を小走りに戻っていった。その背中をそよ風が爽やかに揺らす。
話は終わったかね、と廊下の角からひょっこり顔を覗かせたチョコとマスターを見て、僕達は小さく笑った。
病院を出れば外の蒸し暑さが僕達に襲いかかった。一気に体中に汗をかく。けれど不思議と胸の内はすがすがしく、心地よさに息を吸い込んだ。
「よかったね校長先生。元気になって……」
「逆に刺激したらどうしようかと思ったけど。ありすちゃん、案外カウンセラーとかに向いているのかもしれないな」
雫ちゃんと話しながら、前をスキップして歩くありすちゃんの背を見つめ笑った。
僕達が校長先生と会うことはもう二度とないだろう。だけど最後に見たあの笑顔を思えば、もうあの人は大丈夫。そんな風に思うのだ。
「私も負けてられないわ! 世界を守るっていう夢のために、黎明の乙女を早く倒さなくっちゃ」
「そうだねぇ」
意気込むありすちゃんを微笑ましく見守りながら歩いていた僕は、ふと千紗ちゃんの姿が見えないことに気が付いて振り返る。
数歩後ろで千紗ちゃんは立ち止まっていた。地面をじっと見つめたまま彼女は動かない。
どうしたの、と近付いて彼女の顔を覗き込んだ僕はギョッとする。その顔はすっかり青ざめ、大量の汗の粒が浮かんでいたのだから。
「校長」
「え?」
「夢をもう一度叶えるって言ってたじゃんか」
「う、うん」
「あいつの夢ってなんだ?」
千紗ちゃんは青ざめた顔を僕に向け尋ねた。不思議なことを聞く、と思いながらも僕は校長先生の夢を思い返す。雫ちゃんも怪訝な顔をしてやってきて、同じく彼の夢について考え始めた。僕達の姿をチョコとマスターが不思議そうに眺める。
僕達はゆっくりと頭の中に浮かぶ言葉を呟いていく。
「黎明の乙女」
「校長先生の夢」
「どんな夢でも肯定される」
「叶えちゃいけない夢」
「一度失敗した夢」
「…………失敗?」
そこまで言って。ふと、僕は顔を上げた。
千紗ちゃんと雫ちゃんも同じタイミングで顔を上げていた。
三人の目が合う。
「自殺?」
足音が聞こえて僕達は振り向いた。僕達が付いてこないことに気が付いたありすちゃんが、笑顔でこちらに駆けてくる。
「どうしたの? 早く早くっ。今日はこんなに暑いんだから、のんびりしてたら熱中症になっ」
グシャ。
僕とありすちゃんの間に何かが降ってきた。真っ赤な水が大量に弾けて、僕の頭からつま先にまで降りかかる。
驚いて地面に落ちたそれを見た。落下の衝撃で潰れたまん丸のそれから、大量の水分が飛び出ている。
スイカだと思った。
視界ではそれが何かをハッキリ捕らえているのに、脳味噌がそれを理解することを拒否していた。
「せんせ?」
さっき別れ際に見た笑顔が散らばっている。
赤い海の向こうにありすちゃんが倒れていた。
無意識に唾を飲みこんだ。すると、口の中に飛び込んでいた小さな肉片が、喉をするりと滑って胃に落ちていくのを感じた。
「おっ」
僕は吐いた。
千紗ちゃんと雫ちゃんの絶叫が、キィンと耳をつんざいた。
校長先生はようやく夢を叶えることができたのだ。
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