第25話 日本で


「母さん!父さん!」

ガバッと僕はいきなり母さんに抱きついた。

「ど、どうしたんだい?いきなり。」

「ううん、こうしたかっただけだから。ごめんね。」

「そ、そうか。

お前も高校生なんだからあんまり甘えるのはよしなさい。」

もう一度2人に会えた。一緒にいたい。もう死にたくない。

だけど…………僕は帰らなきゃ。マリアとラーの所へ。





一通り朝の支度を終え、学校へ行く前に洗面所へ


「懐かしいな。この顔も。」

顔を洗った際に見た自分の顔。うーん、向こうのがイケメンだなぁ。

「じゃあ、母さん父さん行ってくるよ。」

『いってらっしゃい。』


しかし、どういうことだ?ガブリエルに飛ばされたのか?

いや、今日は僕が死ぬ3日前。つまり、2人に裏切られる前日だ。

ここで大事件が、

「ま、まさか、使えるのか?太陽や魔法が!?」

魔力が空気中に目に見えるほど大量にある。

これならば、体内からでなく空気中から魔力を持ってくる事が可能だ。

異世界では自分の持つ魔力頼りだったのがこの世界では必要ない。

「これなら……<纏い・天照>」

今回は魔力はもらわずにその分太陽の力を得られる。

はは、車より速いぞ。

「懐かしいな。この学校も。」

「陸ー、おはよ。」

<纏い・天照>スッと僕は全速で教室の窓まで跳ぶ。

彼らからしたら消えたとしか思えないだろう。

この速度に彼らの目がついていくはずがない。銃弾よりも速いのだ。

「あ、あれ?消えちゃった?嘘!?幽霊?」

「馬鹿なこと言ってんな。寝ぼけてんだろ。」

「あははーそうかも。」


無理だ。あいつらの顔を見るだけで僕には耐えられない。

しかし、耐えねばならない。もしかしたら奴らがこの世界から出る

鍵の可能性もある。ここで下手に動くのは賢明ではない。

「おい!陸?どうした?元気ねぇーぞ?」

「ゆ、雄也!」

「お、おう。雄也だけどどうしたんだ?」

「い、いやなんでもないです。」

「今日の体育大丈夫か?サッカーだぞ?

また恵に恥ずかしい所見られちまうな。」

「え、ええ。」

「おい!お前本当にだいじょぶか?いつもは『そんなことありません、僕に運動なんて必要ない!』。

とか言ってるだろ!」

「大丈夫ですよ。」

「ならいいけど。」


「陸!おはよう!」

「恵さんですか?」

「そうだよー愛しの恵さんだよー。」

というと僕の首元に腕を回し抱きついてくる。


「あれ?陸なんか筋肉ついた?」

「確かにそうかもしれませんね。」


ああ、話したくない。触られたくもない。

人間はこんなにも好きだった人を嫌いになれるのか。

「僕はトイレに行くので離してもらえますか?」

「ええーまだー。」と僕の肩をつかもうとする。

しかし、その手は風を切る。当然だろう。

彼女の手で捕まえられるほど遅くはない。

「お、陸!おはよう、トイレ行くのか?一緒に行こうぜ。」

「いいですよ。」

「なんかそっけなくね?」

「気のせいですよ。」

気のせいではない、お前のせいだ。


トイレから帰るとそこには懐かしい授業直前の風景。

「はい、早く席につけ2人とも。」

「おいーす。」「はい。」

数学か確かこの先生には僕はよく思われていない。

全ての問題に答えられる僕の何が気に入らないんだろう?

「はい!

今日は帝国大学の先生が研究しているこの数式を完成させてみろ。」

「は?そんなの無理だろ。」「俺らじゃ無理だよ。帝国大学なんか

うちの学校で10年に1人いけるか行けないかの大学だろ。」

ぼそぼそ文句を言う生徒たち。

え?あんなもの魔法に比べたら簡単じゃないか。

「よーしじゃあ今日もいつもどおり結城に解いてもらおう。」

ニヤニヤと僕を名指しする教師

僕は黒板の前まで歩き

「こうです。恐らくあなたでは理解できないでしょうから

僕がこれを帝国大学に送っておきますよ。」

さっ!と黒板消しで文字を消しさらに追撃しよう

「この数式を編み出したのは自分だと言い張り受賞されたりしては困りますからね。」

「グッ。」

本当に愚かな教師だな


そして授業は終わり昼休み

「おい陸!一緒に食おうぜ。」と雄也

「ごめんなさい、少し外で食べてきます。」

「おう、わかったよ。」


はあ、確かに楽しい。ここは良いところだ平和で、その気になれば

何でも出来るだろう。しかし、僕が求めているのはそんなことではない。


スー、と空が暗くなり3人羽を生やした女性が空からくる


「見つけた!僕は四大天使長ウリエルだよ!」

「同じく四大天使が一人ミカエル。」

「同じく四大天使が一人ラファエルでーす!」

まともなのミカエルだけじゃね?確かに美しい。

ウリエルは豊満と優雅が合致したまるでミロのヴィーナス、いや

それに比べるのもおこがましいほどの美女。

金の透き通るような長髪に眼。そして顔立ちは誰が見ても惚れ惚れするだろう。

ミカエルは淡い赤色の髪に眼、

少し若いがそれでもとてつもなく美しい美少女だ。

ラファエルはぶっ飛んでる。服はあの3人とは違うゴスロリ。

そして体は確かに美しいが胸がかなり大きくてしかし顔は幼い。

しかし僕はこの3人に見惚れている場合ではない。

「どうやってここにきたんですか?」

「私達は皆んな出入り出来るのだよ、えっへん!

これが四大天使長の力!」

「私たちもできる。別に長の力ではない。」

「ミカエルさんは黙ってて!私の見せ場なんだから。」

軽い咳払いをしてウリエルは続ける

「これより『私たち3人と戦ってもらいます!それに勝てたら帰っていいですよ!』ちょ!私の決め台詞〜〜。」

「早いもの勝ちなのだよ、はっはっは。」


「やるしかないのか。」



















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