Track.3-17「抵抗するなら無慈悲に死ね」
んあー。……ふゎ、――ぁう。
あー、……あれ、また寝てた?最近疲れ気味なのかなー、気が付いたら眠っちゃう。
阿座月くーん。
阿座月くんやーい。
……あ、そっか。今絶賛仕事中だった。
えーっと……ああ、ちょうど今
あれ?
でもこれ、なーんか
何で王様が
「あはっ!わっけわかんないなぁ。やっぱ他人任せにしちゃダメだってことだよね」
わたしは眠りこけていたソファから立ち上がり、伸びをする。ああ、身体がばっきばきのぱっきぱきだ。一体今回はどれくらい眠っていたんだろう。
取り合えず
ぷぷっ。えもいえぬえもい、だって。笑っちゃうなー。
あ、ちなみに
魔杖は――ま、いっか。別にバトりに行くわけじゃないんだし。この章の最終調整だけだから。
だから、逢いたいけど、顔を見たらそれで終わりにしよう。うん、それがいい。
「はぁ――でもやっぱり、逢いたいなぁ」
そうしてわたしは自分の座標を、遥か遠く彼方の異界へと書き換えた。
◆
「航、久しぶりだの」
「龍月叔父さん……そうですね、久しぶりです」
そそり立つ絶壁の手前に造られた荒野の街並みを見下ろす高台で合流した調査団。その中で、腰に刀を差す壮年の剣士・
航は少し戸惑いを見せたものの、またすぐに臨戦の顔つきを取り戻す。龍月の後ろに控えていた袴姿の若い女剣士は、龍月の背の影から顔を出すとはにかんで航に小さく手を振る。
「
その言葉に照れた
航の周囲にだけ、張り詰めていた緊張が弛緩した空気が流れた。
「ヨモさん、知り合いっす?」
3チームが合流したクローマーク社、チーム"FOWL"の
「ああ――紹介するよ。四方月龍月、俺の父親の兄で俺にとっては叔父にあたる。宗家の先代当主だ」
「えっ、宗家の先代当主って言ったら!?」
「あの"
続けざまに驚声を上げたのはチーム"FOWL"の
「叔父さん、こいつらは俺の前のチームメイトで、弦術士の糸迫と、流術士の海崎兄妹、そして鉱術士の錫方だ」
「おお、これはこれは。航が世話になってます」
丁寧に頭を下げるその姿に正しく"武人"の面影を抱いた四人は、ついぞ顔を見合わせ、しかし慌ててそれぞれが頭を龍月よりも深く下げた。
「で、こっちが、うちのもう一つのチーム"WOLF"だ」
FOWLの後ろに控えていた四人が前に進み、
「のう、航よ。お前の"今の"チームメイトは何処だ?」
「いや、それが……」
しかし説明をしようとした航の頭上で、黒々と勢力を拡げていた積乱雲から大粒の雨が降り出した。
無論、雨天での戦闘などもう何度も経験を重ねる調査団の面々はそれに驚き騒ぐことは無かったが、しかし雲の表面に大量の
「航、説明を聞いている暇は無さそうだの」
「ああ――」
そんな中、民間企業の魔術士の一人が街並みを指差し叫んだ。【
そして――
「――っ!!」
盛大な轟音とともに、進軍する巨人の集団と迎撃陣形に散開しようとする調査団のちょうど真ん中に巨大な雷の柱が落ちた。
編まれた極太の
『あー、あー。侵略者に告ぐ、侵略者に告ぐ』
魔術で拡声された声が、土砂降りの雨音を割いて響き渡る。
『我々"
「愚問だの――我々が行うのは侵略ではない。悪しき異端者を罰する聖戦よ!」
龍月が吼える。僅かに
(ほう、言術も使うか、あの剣士――)
詠唱のため後方で待機していた言術士アンリ・クリストフ・ヴンサンは、その痩せた相貌を破顔させた。
『仔細、了解した。――ならば戦争だ』
そして相次ぐ雷光と雷鳴。迫り来る"単眼の大巨人"の手前の中空に雷とともに現れた、六人の"隻眼"たち。
流術を用いて空を浮遊しているのか、それとも方術などで足場を作っているのかは定かではない。しかしその六人ともが、強大な霊脈を体内に秘めている。特に、露出した"眼"に。
「航、"
チームWOLF
「ああ――漸く出番だな。"
取り出したのは、その全長が航の身長よりも長い斬馬刀型甲種兵装"
「龍月さん、あの
太雅の申し出に、いつの間にやら現場管理を押し付けられたような龍月は鼻で笑い、眼光の鋭さを増して答えた。
「ほう、あの六人を相手に我ら後発組二十人で立ち向かえと?
「ふン、全くつまらないネ。戦争ヲ楽しミにして来タと言うニ」
四獣會チーム四名を束ねる
「こちらとしては渡りに船ですよ、ミスター・ヨモツキ。我々の神言術は範囲が広いですからね。しかし、詠唱に時間がかかりますが、“盾”はいますかな?」
「アンリさん、盾なら我々が引き受けましょう」
アンリ率いる
「
「ああ、任せろ」
進撃する巨人の軍勢に、先発調査団と四獣會の四十名が陣形を展開させながら対向する。
2チーム分、八名の暦衆は龍月を先頭に二列の横隊を作った。その後ろにロリカ社の四名が、早くも術式の詠唱に入った
そして中空を駆け抜ける、六人の“隻眼”の幹部たち。彼らが龍月たちが待ち受ける高台に着地したのと、先陣を切ったクローマーク社“FOWL”の海崎冴玖が巨人の軍勢に向けて局地的な大津波を発生させたのはほぼ同時だった。
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