ドクターライヤーの証言分析録

ココロ ミル

プロローグ。

(彼はぼんやりと窓の外を眺めることが多くなった)

 この一文を読んだあなたは、一体どのような状況把握を行ったでしょう。私にはこの『彼』が、悩みや迷いを抱えているように感じられました。

 なぜそう感じたのか。

 そう問われても、上手く説明が出来ません。悩みや迷いを意味する単語など一切含まれていないことはわかっています。でもなんとなく、そう感じたのです。

 私たちは無意識のうちに、この『なんとなく』に左右されています。なんとなく青色の服を着て、なんとなく街に繰り出し、なんとなくコーヒーを飲む。今日はなんとなくそんな気分だった、そう思うことは誰にでもあることです。

 ですが『なんとなく嘘をつく』人はいません。嘘には必ず『動機』が存在します。自分を良く見せるためだったり、相手を陥れるためだったり、大切な人を守るためだったり。その『嘘に至る背景』をプログラム化し、嘘発見器の製作に生かそうと試みている研究者がいます。

 その名は『調子有吾チョウシ アルゴ』。心理学を用いて得た「嘘をつく仕組み」をアルゴリズムに置き換えて分析していく博士は、警視庁と神奈川県警がそれぞれ異なる人物を容疑者とした殺人事件の犯人を突き止めます。

そして知らぬ間に、私の本音さえ分析していました。すべては嘘を見抜くことで。

 博士は偏見も先入観もない無垢な『天使の瞳』を持っているのかもしれません。自分勝手で口が悪く、捻くれ者で嫌みなB型男……なのに、その瞳は本当の私を捉えている。一体どれほどの人間が、同じ瞳を持っているのでしょうか。


 あなたは嘘を見抜けますか? もしかしたら、あなた自身がついている嘘でさえ、見抜いていないかもしれません。

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