★★★ Excellent!!!
救われるとは何ですか? 柊圭介
「救われました」
得てして簡単に使われがちなこの言葉はいったいどんな心境にこそ本当に当てはまるのでしょう。
自殺を阻止した四葉と、自殺を止められたれんげ。二人の関係性が運命の蔓のようにきつく絡み合い、他の登場人物も含めて人の心のぬかるみを描き出します。
自己完結と厭世に満ちたセリフ。心の裏側のさらに奥深くをえぐり出す言葉は、容赦のない本音に満ちています。それは主観的な苦しみの吐露と同時に、客観的な視点から見た事実でもあり、更地から投げかけられる口当たりの良いきれいな言葉が泥沼の中にいる人間にどう映るかを浮き彫りにする真摯な言葉でもあります。
希少な四つ葉のクローバーを果たして自分の価値として守り抜けるか。それとも多数に迎合するために葉をちぎってしまうか。生まれた環境や条件ですでに人生は決まっているのか。泥の中にも人は咲くことができるのか。
この作品の登場人物は決して特別ではなく、もしかしたら誰の心にも巣食う可能性のある闇、あるいはひた隠しにした闇を究極なかたちで示してくれているのではないかと思います。
泥のついた足で歩き続ける彼らの人生に明確な答えはありません。それでも本当の意味で「救われた」と思える日はきっと訪れるはず。
泥跳ねとともに一生を歩くのであれば、それを美しいと感じられるところまで歩き続けてほしいと、読み手としてそう感じました。