第54話 余裕をもって空港に到着した。

 保安検査を通過するのは、あと一時間後くらいでいいだろう。


 俺は遅刻癖があって、過去の聖地巡礼において飛行機に乗り遅れた経験が3度もある。せっかく楽しいはずの聖地巡礼が、初っ端から絶望に変わる最悪の失敗である。それを避けるべく、今回は余裕をもって到着したのだ。


「ふぅ」


 小さな店がいくつか並ぶ空港。土産物のためのずんだもちが売られている。


(買うかな。朝何も食ってないし)


 なるほど、分かった。


 百合香ちゃんがホットパンツでコンビニに行っていたのは、朝だったからだ。着替えるのが面倒だったのか、あるいは寝ぼけていたのか、そのまま出かけてしまったのだろう。

 覗き見られた時、目やにとかよだれは付いてなかった。口が臭いなんてことも全くなかった。これらの事実を踏まえれば、着替えるのが面倒だったのだろう。


 4個入りのずんだもちを買う俺。


「ありがとうございました~」


 気前よい店員のお姉さんが、笑顔の接客をしてくれる。


 なんとなく、嫌な予感がする。


 笑顔。今日の朝も、百合香ちゃんはやたらと笑顔だった。


 何か企んでいるんじゃ…………



 俺は別の店に入り、コーヒーを注文。ずんだもちと一緒に飲む。

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