第48話 美少女による翻弄
自宅の玄関ドアを開けた瞬間、信じられない音が耳に侵入した。
「やばっ、
風呂場から、女の子の声が聞こえる。
一旦家から出て、表札を確認する。
「107号室、確かに107号室だ」
つまり、俺の家の部屋番号だ。
もう一度、恐る恐る玄関ドアを開ける。
「きゃっ、また入ってきた! 着替え取りに行けなくなっちゃったよぉ……」「だから勝手に使っちゃダメって言ったじゃないですか! 絶対怒られますよ。ううう……」
やっぱいる。俺の風呂を、百合香ちゃんと
「もも、もしかしたら
大嫌いではない。その逆だから困っているんだ。
「てか聞けばいいだけじゃん、ドア越しでも声は聞こえてるわけだし」「怒られにいくつもりですかっ。殺されますよっ」
殺さない。けど、不健全を律するために、怒るかもしれない。
「んじゃどうすればいい? なんか案出して」「お兄さんに目を閉じててくださいって言ってください。きっと聞いてくれます。だってお兄さん、女の裸を絶対に見たくない人種ですから」
自信満々に、元気よく答えた百合香ちゃん。見たくない人種ではなく、見てはいけないと思っている人種である。
「じゃ、言ってみるね!」「頑張ってください!」
音がやむ。と同時に、にわかに上昇する心拍数。
「峡介さん! 目、閉じて! わたし着替え取りに行くから!」
何て答えればいいんだ。分かったと答えるのか? その前に怒るべきか?
「お兄さんお願いです、あとでお説教は聞きますから今は目を閉じてください。私を拾ってくれた優しいお兄さんなら、ちゃんと目を閉じますよね?」
俺を優しい人間だと思い込ませて目を閉じさせようと企んでいる
いい加減、何か言わねばならない。
「お、俺は外で待ってる。十分くらいで着替えられるか?」
よし、なんとか返答できた。
「行かないで。見捨てないでお兄さんっ」
まさかの要求。目を閉じるよりも確実だと思ったんだが……。
「百合香どんだけ峡介さん好きなの。そんなに好きアピールしなくたって、取らないって」「違いますっ。お兄さんがどこかへ行っちゃうのがすごく寂しいんです。私がお兄さんの一部である限り」
百合香ちゃんがまた変なことを言い始めた。ここは、目を閉じると言っといたほうがいいかもしれない。
「分かった、目を閉じる。よし閉じたぞ。完璧に閉じた。さっさと着替えを取りに行け」
「ありがと、峡介さん大好き」
ガチャ、と、風呂場のドアが開く音が。
むわーん、と匂ってくる、女の子の香り。シャンプーの匂いがオレンジの香りで、俺の使っている安物とは比べものにならない甘い匂いが立ち込める。
「きゃっ」
「へっ⁉」
体に衝突してきたもの。それは……
「ご、ごごごごめんなさいっ。足が! 足が滑っちゃって…………」
全裸の沙夜。
たくさんの雫が肌を流れ伝い、俺の服がみるみるうちに濡れていく。悩ましい膨らみが俺の胸に密着している。今離れてしまうと、先端の突起が見えてしまって逆に危険だ。
よし、ここは。
「沙夜。俺と抱き合ったまま着替え取りに行こう。なるだけ密着してくれ。そうしないとお前の乳首が見える恐れがある」
「ちち、ちくびとか言わないでよ、めっちゃハズいんだけど……」
沙夜の体から蒸気がほかほかと立ち上り、あったかい。思わず、全裸の美少女が俺の胸に収まったまま移動する様子を想像してしまった。見たこともない映像が脳内で再生され、新鮮な興奮が湧き起こる。
「と、とにかく。着替えを……」
刹那!
「お兄さんと抜け駆けするなんて最低!」
百合香ちゃんが全裸で風呂から飛び出てきた!
「うわっ」「きゃっ」
そこそこ膨らんでいるけど、沙夜の半分くらいしかない。絶対に見てはいけないと思っていた百合香ちゃんの先端の突起物。ピンク色だった。
「離れて! 私だけがお兄さんと抱きつく権利を持ってるんですっ」
即座に目を閉じた俺。だが、時すでに遅し。絶対に見てはいけないと思っていたお腹の下の部分の残像が、なおも脳内で増幅されてゆく。
「離れたら見えちゃうでしょ、明らかにヤバいでしょ」
「それなら背中側に回ってください! 私が正面から抱きつくべきなの、沙夜さんも理解できますよね!」
「まあカノジョだし……」
「将来のお嫁さんです! さっきそう説明したでしょ!」
二人の美少女が、全裸で、俺の体にへばりついている。
沙夜はむにむにと胸を押し付けながら背中に回る。濡れた髪の毛からしたたる雫がぽたぽたと俺の顔を濡らし、いい匂いの帯が俺の鼻をくすぐりながら、背後に回る。
「じゃ、じゃあお兄さん、抱きつきますね? ……全裸なんて、すごく緊張します」
許可した覚えなどないが、時すでに遅し。百合香ちゃんが抱きついた感触が胸に伝導する。
ふにん、と、柔らかいのが押し付けられ、セミロングの濡れた髪が俺の顔をべしゃべしゃに濡らす。
「ちょっと沙夜さん、顔どけてください! 沙夜さんの顔なんか見たくないです!」
「し、辛辣だね……」
背後で、顔の位置を左から右に移す美少女。俺の左耳は濡れる。
「ふー」
「ひっ」
左耳に、吐息が。思わず情けない声が漏れ、全身がビクンと反応した。
「何してるんですか!」
「へへへ、わたしも峡介さんを翻弄したいんだよーっ」
「ゆ、許しません! 私だって!」
「ふー。ふー。ふぅー」
「……はわっ…………」
右耳に、吐息三連発。気持ちよすぎて、体がびくびく跳ねた。
「きょ、峡介さんがビクビクしてる! ……百合香やばいね」
「もっと攻めなきゃ、沙夜さんに取られちゃいますっ」
ぺろ! ぺろ‼ れろっ‼
右耳が舐められる。直接舐められることで、やたら大きく聞こえる音。ぐちゃぐちゃになっていた脳が、さらに溶け散っている。舐める音が、理性の崩壊してゆく音と共鳴している。
「百合香、わたしも、なんか舐めたくなっちゃった……ダメ?」
「ダメに決まってます! 私が劣勢になるでしょ!」
「マジかぁ。でも吐息はかけるから。ふー」
情けない声が漏れてしまう俺。もはや制御できない次元だ。
俺は今、二人の全裸美少女にいじめられ、翻弄され、情けない姿を晒し、二人に悦ばせられている。
そして、二人とも確実に悦んでいるに違いない。
温かい湯が全身を濡らす。特に顔は、二人の髪の毛からしたたる雫のせいで酷い状態だ。温かい中でいい匂いが包み込み、俺の思考は美少女のサンドイッチに耐えられずに、びゅるっ! と潰れた。
「お兄さん、私と沙夜さん、どっちがいいですか?」
ぺろ! れろ‼
「わたしは二番でもいいんだけどね」
ふーっ
興奮しきった二人の美少女は俺が潰れたことに気づくこともなく、二度目の潰しにかかり始めた。
神様、潰れたものがバレませんように……
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