第415話 策士魔王
「あ、彼がまた選定で入手した新しいスキルを使っていますよ! 今度はなんですかね、えーっと我……ガカコガ??」
後輩が何やら呪文めいた言葉を発していた。なんだそのスキルは、まるでスキルとは思えないのだが。
「なんだそのスキルは一体どんな効果なんだ?」
「はい、我に霞に故に我って書いてガカコガと読むのだそうですが、これも非常に変で厄介なスキルですね。シンプルに説明するならば、使用者が霞になって姿を消すことができる、と言うスキルです」
「は? 霞になって姿を消す?」
霞というのは確か、空気中に浮かぶ水滴であったり、ゴミとか諸々で遠くがハッキリ見えない現象のことを言うんじゃないのか? 現象になって姿を消すって意味が分からないんだが。
「そうなんですよ、これが意味わからないところでもあるのですが、恐らく自分に焦点を当てない、ピントをずらす、的な感じじゃないでしょうか? それか、単純に自分の姿を霞ませるのか……」
なるほど、いやなるほどじゃないが、なんとなく意味は分かった。
「まあとにかく霧だったり靄だったりになるってことなんだろ? それは非常に強いスキルだな」
「えぇ、とっても強いですよ? だって霞は空気中で発生するものですから、言い換えれば空気中であったらどこにでも逃げられるってことなんです。つまり、姿を消して次の瞬間別の位置から現れる、みたいな芸当が容易にできるようになるんです!」
「ほ、ほう……」
まるで瞬間移動のようなことが平然と行われると言うことだな。神出鬼没の魔王なんて考えたくもない。
「あ、そういえば彼には級水支配があるのだろう? それとコンボしたらえげつないことになるんじゃないか? どこにでも水分を持って来られる訳だし」
「え、何その悪魔的発想! そんなの私思いつきませんでしたよ! あー、確かにそんなことも可能なんですね! もしかして、彼はここまで計算して……?」
「可能性としては十分にあるだろう。なんせ彼なのだから」
「そ、そうですよね。それにしても恐ろしい限りですね。彼にあまり水、のイメージはなかったのですが、ここまで完璧に整えられると……属性として彼が持っているのは爆弾による火くらいのイメージでしたので、そこに水が加わったことでさらに安定性が増しますね!」
「確かにそうだな。もしかしたら、火属性を持っているからこそその弱点である水に対抗できるようにしたのかもしれないな」
「あーそれもあり得ますね。でもそれなら何故木属性とかにしなかったのでしょう? 水に弱点取れる方がいいんじゃないですか?」
「それもそうだが、恐らくより確実な方を選んだんじゃないか?」
「確実な方?」
「そうだ。仮に木属性を選んだとしたら確かに弱点は取れるかもしれないが、どうしても対症療法的にならないか? それに相手に火を用意されてしまったら三竦みでジャンケンになってしまう。それよりかは、大元の弱点である水を完全に克服した方が良いと言う判断なのだろう」
「なるほど、根本的治療ということですね。奥が深い……ただ、彼の場合は属性どうのこうの以前に普通に誰にも負けなくないですか?」
、、、それを言ったらお終いだろう。
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※注意
彼は何にも考えておりません(ここまでがテンプレ
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