第366話 パワーと力


 彼が新たな従魔と一つになり属性不利を覆してからの戦いは一言で言うなればただただ異常だった。


 両者共に圧倒的な強さにスピードで、目まぐるしい展開が続いた。一手一手が致命傷になりうる攻撃で、お互いにかなり緊迫した戦いを送っていたのだが、流石に攻撃を受けても死なない彼の方に分があったようだ。まあ、心の余裕からして違うのだろうな。


 次第に追い込まれていった獄界のモンスターであるヴァールは奥の手を使う他なかった。


「これが奥の手ですか。獄獣化、裏式開放。カッコいい名前ですね」


 そう人型のモンスターであったヴァールの奥の手は地獄の獣へと成ることだった。その姿はまさしく獄獣で見るもの全てを恐怖させるようなそんな姿だ。この変身によってヴァールは更に圧倒的なまでの火力を手に入れることとなった。


 人型から四足歩行へと変わり、猪のようなでいてそれとは比較にならないほど悍ましい姿のヴァールに彼は一体どうするのか、戦い方が変わるこのタイミングで負けてしまうのか、そう思った私の予想は案の定と言うべきか、外れてしまった。


「あれ? なんかさっきよりも弱くなってません、このヴァールさん?」


 そう、何故かは分からないのだが、彼がヴァールを圧倒し始めたのだった。


 ヴァールは裏式まで開放して獄獣化したのにも関わらず、彼はその影響を感じさせない所か、人型の時よりも着実にダメージを与えているのだ。


 何故、そんなことが起きうるんだ? 獄獣化は間違いなく強化の筈だ。それなのに、何故?


「あ、もしかして先輩。これはヴァールさんがやらかしてるのかもしれませんよ?」


「ん、どういうことだ?」


 ヴァールがやらかしてる? どこで? 私も見ていたのだがそんな瞬間は無かったように思えるぞ?


「恐らくヴァールさんは獄獣化することによって超常的な火力を得ると同時に知能が……INTが低下したのではないでしょうか?」


「なっ?」


 なるほど確かに火力は上昇したが、その代償により知能を失ったと言うわけか。


 今まではフェイントや読みなど、対人戦をしているが故に上手く詰められないという展開が発生していた。


 しかし、相手が文字通りモンスター、獣になったことで対人戦から対モンスターへと変わり、対応がしやすくなったというわけか。


 これは皮肉な話だな。更に強くなるために知能を投げ出してまで力を得たのに、その結果、更に敗北へと近づいてしまったと言うわけか。


「あ! か、彼がヴァールさんを勧誘しましたよ!?」


「何!?」


 彼がヴァールを勧誘しただと? ダメなことではないのだろうが、そんなのアリか? と言いたくなることだぞ、それは。


 なんせ、ヴァールは獄界でプレイヤー達を待ち受ける存在だろう? それなのにそんなNPCが一個人の力へとなってしまっては戦力差が今以上に広がるのではないか?


 ただでさえ、ヴァールは彼の従魔の中でも余裕で一番を取れそうな程強いと言うのに……


「あ、断りましたね」


「断った!?」


「はい、まだ閻魔と魔王、どっちが本当に強いのか分からないから、という理由らしいです。強い方につく、潔くて分かりやすくて良いですね! 忠義もクソもありませんよ!」


 おいおい、女の子がクソとか言うなよー。


 それに、ってことは彼が閻魔を倒した時にヴァールが仲間になるってことか?


 じゃあどの道仲間になるってことだな。だって、彼はどうせ閻魔に勝つのだろうから。








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よしっ!今日も投稿完了!

この調子で三日坊主を克服するんだ!


というわけで皆様の三日坊主エピソードを教えてください!

私の場合は……あえて取り上げる必要もないくらいご存じかと、、、


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