第300話 暑さと眠気


「あ! 先輩、とうとうイベントが始まりましたよ! 遂に、遂にこの日がやってきましたね!」


 彼女のテンションがいつになく最高潮に達している。ま、それも仕方ない今日はイベント開始の日なのだからな。それも、ただのイベントではなく彼の存在をこのゲームの世界に知らしめる大きな日だ。


「いやーずっと考えていたことではありますが、まさか彼が私たちの仲間になる日が来るとは……! 人生何があるかは分からないものですね!」


 いや、仲間ではないと思うのだが? まあこちらの陣営に来てくれたのは確かなのだからあながち間違いでもないのか? それにしても一方的過ぎる気がするのだが。


 まあ細かいことは抜きにしても、今日は我々にとって初挑戦の記念すべき日であることは間違いない。この一手がどうなるのか、正解か不正解なのか今の時点では分からないが、その行く末を見守っていきたい所存だな。


「にしても、国別対抗戦に第三勢力として乱入させる、かー」


 随分と乱暴な手を思い付いたものだよな。普通なら思いついても決して実行には移さないタイプの案だ。まあ、国別対抗をして完全な順位がついてしまうとなんとなく気まずい雰囲気が流れそうだな、とは思っていたのだが、別にそれはイベントを止める理由にはならなかったようだ。


 だが、結果として新たな勢力が現れたことで、敵の敵は味方理論が発動し全プレイヤーが協力してくれればいいんだが。


「乱暴、ですか? 私はこれ以上にないマッチングと思いますけどね! だって、一位の国はともかく、一度でも負けた国は、その敗国としてのレッテルが嫌でもついちゃいますからね。もしそうなれば萎える人も出てくると思いますよ? つまりは巡り巡って私たちのためでもあるという訳です!」


 彼女はそうやって饒舌に私に説明してくれた。彼女も今までずっと見守ってきた彼がデビューするということで相当嬉しい、いや喜ばしいのだろう。テンションが過去一だ。


「まずは中国対イギリスのようですね。さて、彼は一体どんな手を使ってくれるのでしょうか!」


 もはやどこか恍惚とした表情にすら見えるのは恐らく気のせいだろう、気のせいだと信じたい。


 それにしてもどのようにして敵を攻略するのか、については私も気になる所ではある。さて、対多数ではどのような行動を取る?


「お、どうやら草原地帯で、彼は遠く離れた洞窟に転移していますね。うん、バッチリです。そして、、、あ! とうとうきましたね、というか早速ですか。どうやら以前、魔錬成していた龍、九重魔龍を使うようです。私としてもどんなスペックなの気になりますから嫌ではないですが……」


 彼女はなおも渋い顔をしてモニターを見つめている。うん、言わんとしていることはなんとなく分かる。それは初戦から飛ばしすぎではないか、という疑念だろう。


 だが、恐らくそれは心配するに足らないことだ。


「恐らく、彼の中では従魔として一番新米の龍に先鋒を任せたのではなかろうか。つまり、様子見も様子見ということだ。龍が先鋒である、これの意味はもう言われなくても分かるだろう?」


 そう、これで彼の従魔の厚みが分かるというものだ。


「はぁ、全く恐ろしいですね」


 いや、一応システム的にはソロなんだがな。という言葉はグッと堪える。それは彼女も知っていることだろうからな。


 それに、彼女の言わんとすることも理解できるからだ。彼の戦力はパーティ、いやクラン、レイドに全然匹敵する力を持っているのだ。さあ、プレイヤー諸君君たちはどう動くかな?


「「あ」」


 今、目の前で九重魔龍がブレスを放って敵陣営をほぼ壊滅状態にさせた。こりゃ、プレイヤー側からしたら気の遠くなるような戦いかもしれないな。







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眠い!今から寝ます!お休みなさい!!!


もうすぐ彼のデビューですね!お楽しみに!ではまた!!

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